(吉永)おっ菜摘シェフ!今夜のメニューは何かな?
(菜摘)パパ当ててみて。
おっ!パパの大好きな蓮根使ってるな?ってことはわかったぞ。
この間ママから教わった蓮根のきんぴら。
ブッブー!えっ違うの?ウソ〜。
今までパパが一度も食べたことのないお料理です。
え〜一度も食べたことがないの?一度も?わかんないよ。
何なに?
(照子)パパ〜!ん?ちょっと助けて!デコ何やってんだ。
パパ〜。
よしよし。
あっこれ菜摘の服じゃない。
懐かしい。
いらない服整理しようと思って。
パパ受け取って。
(藤井)どんなことにお使いですか?
(由紀)鯛をおろすのに…。
(藤井)女性の方でしたらどうぞこちらへ。
鯛でしたらこの五寸が扱いやすいですよ。
これください。
はい。
鱗落としもあると便利ですけど一緒にいかがですか?じゃあそれも。
はいありがとうございます。
うわちっちゃ!こんなちっちゃいの着てたんだな菜摘。
ねぇねぇねぇこんなのも着てたのよ。
これな。
着てた着てた。
これいちばん着たんじゃない?ねぇ〜。
こんなの着てた菜摘がさあんなふうに料理してるなんてなんか感動しちゃうな。
ねぇ。
ねぇ。
ん?やっぱりこの服出すのやめない?どうして?菜摘の服が燃やされちゃうとさ思い出まで燃えちゃうような気がしちゃってさ。
燃えるゴミなんかに出さないわよ。
え?資源回収に出すの。
資源回収に出せるの?洋服。
もちろん。
菜摘のこの洋服も生まれ変わるのよ。
そっか生まれ変わるのか。
じゃあいいかこれこっち。
(悲鳴)〜どうしたんですか?ケガしたんですか?人を…殺しました。
え?
(菜摘)は〜い。
イェーイ!うわおいしそう!名づけて蓮根カレー菜摘スペシャル!どうぞ召し上がれ!
(2人)は〜い。
菜摘スペシャルか。
よしじゃあせ〜の。
(一同)いただきます。
うわ〜おいしそう。
おいしい!うん!ジャガイモの代わりに蓮根ね。
蓮根の歯応えすごくいい。
たまんないたまんない。
菜摘これ自分で考えたの?うんパパが蓮根好きだからカレーに入れたらどうかなって。
幸せ者。
なんかさ嬉しすぎちゃってなんて言っていいかわかんないな。
こんなときにもうほら。
やっぱり小沢だよ。
お前見てたろ?
(小沢)何をですか?今な映画に例えればちょうどクライマックスだったんだよ。
今映画館なんすか?バカかお前は。
映画館でケータイとれるわけないだろう。
事件です。
何?うん。
で場所は?わかったすぐ行く。
事件?菜摘ごめん!せっかくこんなおいしいカレー作ってくれたのにさ。
また作ってあげる。
菜摘。
気をつけていってらっしゃい。
うんそれじゃあ行ってくるね。
いってらっしゃい。
現場は?あちらです。
ご苦労さん。
すみません遅くなりました。
(牧村)ご苦労さん。
伝説健在ですね。
え?吉永の非番の日には必ず事件が起こる。
神奈川県警の新七不思議に数えられてるって知ってます?もうひとつ知ってるぞ。
なんで俺がいまだに小沢とコンビを組まされてるか。
ほんとですよ苦節8年自分を褒めてやりたいですよ。
それは俺のセリフだ!お待たせしました。
(牧村)ああはい。
この部屋の住人か?違います。
財布から免許証が見つかりました。
清川由紀…。
(木島)それとレシートも。
今日の18時3分に出刃包丁と鱗落としを買ってるのか。
鱗落としって?これです。
キッチンにあるのを発見しました。
こうやって魚の鱗を落とすんです。
出刃包丁は?それがまだ発見されてないんだ。
おそらくその包丁が凶器だろ。
この部屋の住人はどうしたんですか?19時25分に近くの交番に自首してきました。
田代恭子35歳。
自分が刺したと言っているそうです。
今警察病院に入ってるんだ。
自分が行ってきます。
小沢行くぞ。
はい。
見つかったぞ!先生県警の吉永といいます。
話聞けますか?
(津久井)今夜は無理ですね。
(津久井)左腕に3か所右の手のひらに1か所の切り傷がありました。
手のひらの傷はかなり深いですね。
全部で20針ほど縫いました。
刃物による攻撃を防ごうとして負った傷と思われます。
つまり防御創ってことですか。
こういう者です。
(田代)父親です。
先生。
何があったんだよ?恭子。
え?何があったんだよ。
由紀お嬢さんにも旦那さんにもあんなによくしてもらったじゃねえかえ?お前が由紀お嬢さん刺しちまったって本当なのか?どうなんだよおい!恭子!
(玉田)昨日出刃包丁と鱗落としを買った女性この中にいますか?
(藤井)ああこの人ですね。
今思い出せることだけでいいです。
話してもらえますか?由紀が出刃包丁を取り出していきなり切りつけてきたのは覚えています。
何も言わずに切りつけてきたんですか?何か言ったかもしれませんけど思い出せません。
それで?とっさに手でよけたんだと思います。
あとは…よく思い出せません。
今日はこれくらいに…。
最後にもうひとつだけいいですか?その出刃包丁最後にはどうしたか覚えてますか?あなたのマンションの前に生け垣がありますよね。
そこから見つかったんですよ。
ひょっとしてあなたベランダから包丁を投げ捨てたんじゃありませんか?投げたのかもしれません。
でも…思い出せません。
(小沢)ガイシャは清川由紀35歳。
横浜市金沢区金沢八景にあった醤油醸造元金路の一人娘です。
ああ金路の…。
あそこ工場潰して賃貸マンションにしたよな?そうです。
金路の元社長の下川路秀生が脳梗塞で倒れて入院中のためマンション管理は娘の由紀がしていたようです。
結婚してんのか?してます。
旦那は清川幹雄43歳。
建築家で子供はいません。
死因は?心臓まで達した刺創からの大量出血による失血死です。
凶器はマンション南側の生け垣から見つかった出刃包丁と断定されました。
包丁は被害者が買ったものに間違いないの?間違いありません。
刃物店の店主から裏は取りました。
店主が言うにはどの包丁にしようか迷ってた様子だったんで声をかけたっていうんです。
どんなことにお使いですか?あ鯛をおろすのに。
鯛でしたらこの五寸が扱いやすいですよ商売熱心な店主は鱗落としも一緒にいかがですか?と勧めたわけだ。
そう言ってました。
現場に鯛はあったの?いえありませんでした。
清川由紀は包丁を手に入れるために適当なウソをついたんでしょう。
つまり清川由紀は最初から田代恭子を殺す目的で出刃包丁を買ったってこと?明白な殺意があったかどうかはともかく出刃包丁で田代恭子を脅すか危害を加える意志はあったと思われます。
そのことについて田代恭子は何て言ってるの?それが…清川由紀が持参した出刃包丁で切りつけてきたのは間違いないらしいんですがそれ以降の記憶が一切ないって言ってるんです。
包丁による攻撃を防ごうとしてできた防御創が左腕に3か所右の手のひらに1か所ありました。
(木島)鑑識によると出刃包丁の刃と柄の部分から清川由紀田代恭子両方の指紋が複数採取されたそうです。
血液についても同様です。
2人以外の指紋も血液も出てないんだよな?はい出ませんでした。
2人が包丁を奪い合って争ったのは間違いありませんよね?その時刻が19時10分頃と思われます。
現場の下の階の住人が争っているような音を聞いていました。
やはり正当防衛でしょうか?今のところそう判断できる状況ね。
でも…正当防衛にしては傷が深すぎませんか?ひと突きで心臓にまで達するような刺創ですよ。
はずみでそうなったのかもしれないわ。
あるいはまた襲われるかもしれないという恐怖心から手加減できなかったのかもしれない。
それともうひとつ。
どうして出刃包丁を投げ捨てたんですかね?田代恭子は投げ捨てたことを覚えてませんでした。
正当防衛だったとしたら何もそんな証拠隠滅みたいなことをする必要はないんじゃないでしょうか。
証拠隠滅なんかじゃありませんよ。
恐らく田代恭子は清川由紀を刺したあと茫然と立ち尽くしていたんです。
しばらくして我に返り包丁を握っていることに気づいた。
え?あれ?イヤ〜!ほとんど無意識のうちにベランダに出てそのまま投げ捨てたんじゃないでしょうか?それだ。
田代恭子と清川由紀の関係更に2人の身辺捜査。
それを基本にして犯行に至った動機を突き止めて。
(一同)はい。
(清川)2人は幼なじみだったんです。
つきあいは30年くらいになります。
そんなにですか。
どうぞ。
すみません。
中学から大学までは学校も同じでした。
由紀は恭子ちゃんのことをいつも親友だって言ってたのに…。
学校はどちらだったんですか?尚修館女学院です。
美人が多いので有名なお嬢様学校ですよね?でもあそこものすごく寄付をとられるって聞いたんですけど。
小沢。
申し訳ありません。
昔は由紀の実家も余裕がありましたから。
ご実家は醤油の醸造元の金路だったんですよね?ええ。
当時は恭子ちゃんの学費も援助してあげていたらしいです。
学費もですか?どうしてそこまで?お嬢様のご学友っていう扱いだったんじゃないですか?恭子ちゃんのおじいさんもお父さんもずっと金路で働いていましたしね。
ああそれで…。
旦那さん。
恩を仇で返すことになっちまって本当に申し訳ありません。
旦那さん…。
奥さんが田代恭子の部屋を訪ねるのはご存じだったんですか?いえ。
奥さん彼女の部屋を訪ねる前に出刃包丁を購入してるんですよ。
由紀がですか?ええ。
申し上げにくいんですが奥さんはその出刃包丁を使って田代恭子を脅そうとかそういう目的で買った…。
どうして由紀がそんなことするんですか?それは今調べてるところです。
恭子ちゃんはその出刃包丁で由紀を刺したわけですか?状況から判断すると恐らく。
つまり奥さんに襲われた田代恭子が奥さんの包丁を取り上げ奥さんを刺した。
いわゆる正当防衛というわけですね。
正当防衛?そんな…。
由紀が全部悪いんですか?いえそうは言ってません。
だいたい由紀が包丁を買って乗り込んでいくなんてそんなこと絶対にありえませんよ。
刑事さん由紀のこと知らな…。
どうしました?2週間くらい前に由紀がひどく怒って帰ってきたことがあるんです。
「恭子に裏切られた。
あんなウソつきはいない」って。
奥さんはどうしてそんなに怒って帰ってきたんですか?聞いたんですけど話にならなくて…。
しかし清川幹雄もツイてないですよね。
親友に奥さん殺されたんだからな。
それもそうなんですけど遺産ですよ。
遺産?ええ。
奥さんのお父さんの賃貸マンションってすごい財産でしょ?奥さんが生きているうちに義理のお父さんが亡くなれば遺産はすべて奥さんのものになったわけですよ。
そうすれば夫だってガッポガッポじゃないですか。
でも奥さんが先に死んじゃったから清川幹雄に遺産相続なんて関係ありませんもんね。
お前さほんとよくそういうことだけは気がつくな。
それって大事なことでしょ?小沢。
はい?これも大事だぞ。
お前ちゃんと資源回収に協力してるか?当たり前じゃないですか。
何年一人暮らししてると思ってるんですか?自慢するとこかそこ?え?神奈川県警の玉田です。
木島です。
お仕事中すみません。
ちょっとお話いいですか?
(真奈美)あっじゃあこちらへ。
(真奈美)由紀と恭子は中学からエスカレーターでしたけど私と淳子は大学から一緒になったんです。
(玉田)左端が村尾淳子さん?そうです。
大学時代は何をするにしてもいつも4人一緒で。
なんでこんなことに…。
添田さんから見て2人はどんな関係に見えてました?由紀はちょっと子供っぽくっていわゆるお嬢様タイプです。
恭子は反対に大人で由紀のお守り役っていう感じでした。
田代恭子のほうはそれを嫌がっていたんですかね?そう思ってたとしてもそんな態度絶対に見せません。
恭子はそういう子です。
ただ…一度だけ由紀がいないときに珍しくグチったことがあるんです。
本当は音大に行きたかったんだって。
だけどお父さんから大学も由紀と一緒に行きなさいって言われて諦めたって言ってました。
へ〜大学を。
恭子のことだからお父さんの仕事のことを考えたんですよ。
金路に勤めてましたから。
恭子のお父さん。
田代恭子としては清川由紀さんにずっと頭が上がらないって感じだったわけですか?まあ…そうですね。
大学を卒業してからもずっと?ええ。
由紀は相変わらず恭子のことを都合よく使ってましたね。
由紀にとってはそれが普通だったんですよ。
子供の頃からずっと。
都合よくって…例えば?由紀…不倫してたんです。
その人と旅行したりするときよく恭子にアリバイづくりさせてました。
2週間くらい前なんですが清川由紀さんと何かケンカのようなことになりませんでしたか?なりました。
由紀とあんなふうにケンカしたの後にも先にもあのときだけです。
どうしてケンカになったんですか?あれは由紀の誤解なんです。
誤解?詳しく話してもらえますか?こちらでよろしいですか?はい。
(淳子)真奈美の言うとおりです。
恭子は由紀に対してかなり鬱屈したものを持ってました。
4人でいるときも由紀は女王様でした。
由紀から見たら私と真奈美は平民。
恭子は…奴隷でしたね。
今回の事件にもその鬱屈したものが影響していると思いますか?恭子が由紀をわざと殺したんじゃないかと思ってるんですか?それはないですよ。
だいたい最近の恭子由紀のことどころじゃありませんでしたから。
どうしてですか?ストーカーにずっと付きまとわれていたんです。
恭子その男に相当悩まされていましたから。
ストーカーって?恭子の彼氏だった人です。
牧野っていう人で恭子が入ってるコーラス・サークルで2年くらい前に知り合ったらしいんですけど。
半年くらいおつきあいをして恭子のほうから別れたんです。
添田さんストーカーのことなんて言ってませんでしたけどね。
真奈美は知りません。
真奈美は由紀と仲よしですから。
あなた方4人で仲よしグループなんですよね?そこが…女子の微妙なところなんです。
私がほんとに仲がいいのは恭子だけです。
それは由紀さんのご主人のことと関係しているわけですか?最初清川幹雄さんとおつきあいしていたのはあなただったんでしょ?15年前4人で沖縄旅行に行ったときに知り合ったって添田さんから聞きました。
それをあなたから奪うような形で由紀さんはご主人と結婚した。
もう昔のことです。
今は何とも思ってません。
清川さんもきっと後悔していたと思いますよ。
由紀なんかと結婚して。
お嬢様だし確かに外面はいいんです。
でも実際はわがままで浪費家で男にだらしがなくて。
清川さんも今までよく我慢してたなと思います。
もっとも清川さんも由紀の外面と財力に惹かれたわけだからどっちもどっちですけどね。
事件に至るまでの2人の行動がだいぶわかってきました。
まずは5月30日。
田代恭子は清川由紀に呼び出されてレストラン・リベーラで会ってます。
今度のテニススクールの合宿行くんでしょ?ええ由紀も申し込んだんでしょ?申し込んでない。
でも私も行ったことにしといて。
また島本さんと?ご主人に悪いわ。
恭子が気にすることじゃないわよ。
お願いねつまり不倫相手との旅行を隠すためのアリバイづくりを依頼したわけか。
そうです。
不倫相手は島本友哉40歳。
獣医妻子ありです。
しかし合宿当日の6月1日。
田代恭子は突然具合が悪くなってしまって自分自身も合宿に行けなくなってしまいます。
にもかかわらず夫の清川幹雄は合宿先に電話をかけてしまいました。
あ〜最悪だ。
なぜ清川幹雄は合宿先に電話をしたの?以前から妻の行動を不審に思っていて不倫を疑っていたみたいですね。
予感的中。
ついに不倫がバレたってわけだ。
そこで田代恭子は再び清川由紀に呼び出されることになります。
それが6月の5日。
恭子のせいよ。
幹雄にウソついてたことバレちゃったじゃない。
しかたないでしょ?急に具合悪くなっちゃったんだから。
それに「行けない」って朝あなたにメールだってしたわ。
島本さんと一緒のときにいちいちメールなんか見てないわよ。
そんなこと知らないわよ。
あなたのせいでしょ?謝りなさいよ。
あなたが不倫なんかしてるから悪いんでしょ?あなたみたいなだらしない女大嫌いなのよ!何すんのよ。
あなたの顔なんかもう二度と見たくない!大丈夫ですか?田代恭子が言うにはそこまでのケンカをしたのは後にも先にもこのときが初めてだったそうです。
自分でもあのときどうして由紀にあそこまで言ってしまったのか。
今考えてもよくわかりません。
自分の中の自分じゃない誰かが言ったような気もするし自分の…本心だったような気もするし。
人見知りする私にとって子供の頃から由紀はかけがえのない友達だったことは確かなんです。
だけど…。
どこかで…憎んでいたのかもしれませんこの日清川由紀がひどく怒って帰ってきたことを夫の清川幹雄が覚えてました。
しかし10日後の6月15日。
清川由紀から田代恭子に電話がかかってきます。
内容は6月5日のケンカの謝罪。
そして仲直りをしたいから明日遊びに行ってもいいかと。
殺された清川由紀から田代恭子に遊びに行きたいと言ったわけね。
そうです。
そして事件当日。
清川由紀はやってくるなり仲直りどころか再び田代恭子を責めたてたそうです。
島本さんとも別れたの。
あなたが告げ口したんでしょ?幹雄に島本さんのこと。
してない。
告げ口なんてしてないわ。
ただご主人からしつこく聞かれたからしかたなく…。
そのことは謝るわ。
やっぱり告げ口したんじゃない。
あなたって最低な女ね!私が幹雄と離婚するつもりなの知ってるでしょ?これじゃ私が慰謝料払うことになっちゃうじゃない。
あなたそれ狙ったんでしょ?そんなことない。
そんなこと狙うわけないじゃない。
学費まで払ってあげたのに。
他にもあなたにはいろいろよくしてあげたわ。
あなたにだけじゃない。
あなたのお父さんにだって家にだって。
それなのに何よ!?私に何の恨みがあるのよ!?恨みなんかないわよ。
飼い犬に手を噛まれるってこのことね!このあと2人は激しい言い争いになり興奮した清川由紀は出刃包丁を取り出した。
そのあとのこと田代恭子は思い出した?いえ。
やはり思い出せないそうです。
清川由紀は不倫が夫にバレたのも不倫相手に別れを告げられたのもすべて田代恭子のせいだと思い込んだ。
いかにもわがままなお嬢様らしいですよ。
なんか田代恭子に同情しちゃいますよね。
それでも清川由紀としたら田代恭子を殺すつもりまではなかったんじゃないのかな。
包丁で脅して懲らしめてやりたいくらいの気持ちはあったかもしれないが。
でもどうしてわざわざ包丁まで買ってったんですかね?それはパフォーマンスなんじゃないのか?私はこんなに怒ってるんだぞ!って。
鱗落としもですか?鱗落としでガリガリ引っかいてやる。
そりゃないでしょう。
他に何かある?あちょっと気になることが…。
仲よし4人組の1人村尾淳子なんですが…。
もともとはこの村尾淳子と清川幹雄がつきあってたんだそうです。
ほんとかよ。
ええ。
それを清川由紀が略奪した。
そう。
村尾淳子も清川由紀のことをよく思ってない感じでした。
ほんとに仲がよかったのは村尾淳子と田代恭子。
そして清川由紀と添田真奈美。
こんなふうに別れてたようです。
へぇ〜。
わかんないもんだな女友達ってのは。
いろいろ難しいのよ。
フレネミーって聞いたことない?フレ…フレネミー?フレンド友達。
エネミー敵。
この2つを合わせた造語なんだけどつまり友達の顔をした敵っていう意味。
友達の顔をした敵?例えば親友のフリをして徹底的に相手を利用するとか陰で悪口を言いまくるとか。
そういう女結構いるのよ。
怖っ。
どうも。
神奈川県警の吉永といいますが島本先生はいらっしゃいますでしょうか?清川由紀さんと別れ話をされたのはいつですか?6月9日の夜です。
島本さんのほうから切り出されたわけですか?そうです。
どうして別れようと思ったんですか?彼女のご主人がここに乗り込んできて別れろって。
ご主人が?お前由紀に何したんだよ?なあ?話は知ってんだよ。
何だ。
突然あんた!?慰謝料払えよ。
慰謝料!?500万払えよ!
(島本)おまけに慰謝料まで要求してきて500万とか言うんですよ。
そうかと思ったら彼女殺されちゃうしもうたまりませんよ。
彼女が殺された原因はあなたにもあるんじゃありませんか?6月5日に言い争っていたのはこの2人で間違いありませんか?ああこの2人ですよ。
お仕事中にすみません。
いえ。
島本さんってご存じですよね。
ええ。
乗り込んで行かれたそうじゃないですか。
別れろって迫って慰謝料まで要求されたそうですね。
500万。
慰謝料ははずみというかつい言ってしまっただけで別に脅したわけじゃありません。
脅したなんて言ってません。
どうしてこの前はその話してくれなかったんですか。
隠してたわけじゃないんです。
ただはずみとはいえ彼に慰謝料を要求してしまったんで後ろめたかったっていうか…。
小沢。
はい。
清川の事務所の経営状態調べておいたほうがよさそうだな。
はい。
こんちは。
いらっしゃいまいど。
吉永さん!親子丼並ね。
上天せいろで。
あいよ!な…何か?牧野さん!牧野さん!?会社に連絡してほしいって!何だ…この臭い。
うわぁ!大変だ!連絡しなくっちゃ!裏取りしたかぎりじゃ田代恭子の供述に矛盾するようなことはありませんね。
清川由紀が出刃包丁を取り出したあとのことを除いてはな。
いやそれは田代恭子が覚えてないんですからしかたないですよ。
ほんとに覚えてないのかな?あれ?ウソ言ってると思ってるんですか?そうは見えませんけどね。
心理学でいうところの健忘だと思いますよ。
いわゆる記憶喪失です。
心的外傷や極度のストレスにさらされたことで起こるんですけど。
忘れることでその人を守ってるってこともあるんですよね。
悲惨な記憶は思い出したくないもんな。
いずれにしても田代恭子の正当防衛は間違いないですよ。
記憶喪失ね…。
はい吉永です。
(桐子)殺しよ!え?どうしたんですか?殺しだ行くぞ。
はい。
小沢。
はい。
頼むな。
はい。
あちょっ…!ご苦労さまです。
県警本部の吉永です。
入れますか?ご苦労さまです。
どうぞ。
ありがとう。
うっ…。
(小沢)あっ!みんな田代恭子だ!なんだこれは。
この男じゃないですか?そうみたいだな。
どういうことだ?おそらくこの男田代恭子に付きまとってたストーカーですよ。
ストーカー?聞き込みで判明しました。
そうか。
それで班長俺たちに。
被害者は牧野春樹33歳です。
検視官によると死後3日程度だそうです。
よかったらこれ使ってください。
あっ助かります。
すみません。
ありがとう。
鑑!はい。
ちょっと…。
鑑?ガイシャは牧野春樹33歳。
横浜市中区本牧にある本牧北倉庫で派遣のシステムエンジニアとして働いていました。
死因は?あっえ〜肺に達した刺創からの多量出血による失血死と断定されてます。
凶器は鋭利な刃物と思われますが今のところ発見されていません。
死亡推定時刻は?発見が遅かったために幅があります。
6月16日の17時から21時くらいじゃないかと。
つまり清川由紀と同じ日に殺されたってことだよな。
ちょっと待ってください。
6月16日の夕方だとすると田代恭子にも牧野を殺せますね。
まぁそりゃ時間的には可能だ。
牧野のストーカー行為に悩まされてた田代恭子だったら動機的には十分です。
だとするとあの髪の毛…。
小沢髪の毛髪の毛。
あ〜はい。
これだ。
この牧野の指に絡みついてた髪の毛の鑑定結果は?まだ出てません。
田代恭子のものかもしれません。
田代恭子動機的にはちょっと疑問ですね。
はぁ?なんでだよ?いや確かに田代恭子に対する牧野のストーカー行為はエスカレートしていたようです。
だろ?実際半年前には港署に牧野を告訴してました。
告訴してたのか?恭子は牧野を。
そうです。
だったらなおさら恭子の可能性…。
先走らないでください。
あっ久しぶりに言われちゃった。
うるさいよ。
確かに告訴はしました。
ですが1週間後には取り下げてます。
1週間で?どうして?告訴されたことで牧野のほうがビビッたんじゃないですか?それできっとおとなしくなったんですよ。
示談になった可能性だってあるだろうよ。
つまりストーカー問題は解決していたんだと思います。
そうなるともはや田代恭子に牧野を殺す動機は存在しない。
納得できないって顔ね。
いやそんなことありませんけど。
吉永君たちは田代恭子と牧野の関係を洗って。
はい。
仁さん田代恭子以外の牧野の人間関係を洗ってほしいの。
手配お願い。
わかりました。
(玄関チャイム)どうも。
神奈川県警の吉永といいます。
ご主人はいらっしゃいますでしょうか?
(公江)あっはい。
あっ私です。
どうも。
あの外で話しませんか。
こちらへどうぞ。
失礼します。
さっきのは恭子の母親じゃないんでね。
恭子の母親は10年前に亡くなったんですよ。
そうでしたか。
恭子は裁判でどうなるんですか?自分たちは捜査する立場なもんで裁判のことはなんとも。
おそらく正当防衛で無罪になりますよ。
軽はずみなこと言うな!すみません。
そうなってくれたらいいって気持ちと由紀お嬢さんに申し訳ないって気持ちと。
今日は別なことを聞きにうかがいました。
牧野春樹さんのことです。
牧野のことだと?はい。
先に言っとくけどな牧野のことに関しちゃ俺は警察に遠慮しねえからな。
気分悪くするかもしれねえけど勘弁してくれよ。
どういうことですか?いいから早く聞けよ。
半年前娘さんが牧野さんを告訴したのはご存じですか?ご存じもなにも俺が恭子を連れて港署へ行ったんだ。
それは告訴しなければいけないほど娘さんが追い詰められてたってことなんですか?ああ。
このままじゃ恭子の命がないと思ったからさ。
離して離して。
一緒に死んでくれ。
嫌嫌…。
離して離して!死んでくれよ一緒に。
嫌だ!
(悲鳴)離してよ!やめてよ!それなのにどうして1週間で告訴取り下げたんですか?警察に騙されたんだよ。
騙された?担当の刑事さんがわざわざ恭子のとこまでやってきて恭子を説得したんだ。
告訴なんかすればよけいに相手を刺激することになる。
だから告訴は取り下げたほうがいいってな。
おまけに何て言ったと思う?またいつでも告訴はできますからって。
担当の刑事様はそうおっしゃったんだよ。
一度取り下げた告訴がまたできるのか?え?できません。
あの時はそんなことを知らねえもんだから俺たちは警察を信用して告訴を取り下げたんだ。
そしたらどうだ?牧野はおとなしくなるどころか…。
(田代)恐ろしくなって恭子はすぐにアパートを引っ越した。
だけど引っ越した先のマンションに3日としないうちにまた牧野の野郎が現れたんだ。
恭子!だから恭子はまたすぐに引っ越した。
それが今のマンションだ。
それがどうだ?やっと落ち着いたと思ったら今度は由紀お嬢さんだ。
なんで恭子ばっかりがこんな目にあわなきゃならねえんだ。
チクショウ!あの最後にもう1つだけいいですか?その石を投げ込んだのは牧野に間違いないんですか?警察も一応調べる格好だけはしてたよ。
けど結局うやむやさ。
だけど牧野以外に誰がやるっていうんだ?え?え?もういいだろう。
どうして港署は告訴を取り下げろなんて言ったんですかね?自分たちの仕事減らしたかったんだろう。
完全な手抜きだよ。
クソッ。
田代恭子はどうして実家に戻らなかったんですかね?もし戻っていれば…。
義理の母親に気遣ったんだろ。
ていうより父親に気遣ったんだよ。
自分が戻ったら気まずくなるって感じですか?子供の頃からさ父親に言われるままに何ひとつわがまま言わずに育ってきたんだぜ。
だから自分の命が危険にさらされてもまずは父親に気遣うんだよ。
けなげですね。
いや…異常だね。
父親のために清川由紀にも逆らわずに翻弄され続けてきたんだ。
彼女は自分らしく生きたことなんてないのかもしれない。
(木島)ありがとうございました。
あぁ。
すみません。
牧野さんのことでちょっとよろしいですか?はい。
16日のことなんですけども。
ただいま戻りました。
おぉご苦労さん。
どうだった?ちょっとおもしろいことがわかりましたよ。
何だ?牧野のマンションの住民によると牧野が殺された日の20時すぎに牧野の部屋を警察の人間が訪ねてきたらしいです。
警察の人間?「警察の者ですが」っていう男の声を聞いただけで見てはいなかったです。
港署の人間ですかね?もう一つは目撃情報です。
同じ日の22時頃牧野の部屋から出てきて慌てて走り去った男が目撃されてました。
どんな男だよ?年齢は60代。
170cmくらいでやや小太り。
しかも以前牧野と言い合いになってた男によく似てたっていうんです。
吉永さん!うん。
心当たりがあるの?田代恭子の父親かもしれません。
田代さんあなたやっぱり6月16日の夜牧野のマンションに行ってますよね?行ってねえよ。
牧野のマンションから採取された指紋のなかにあなたの指紋が複数ありました。
〜牧野春樹が殺されたことは知ってますよね?あなたのお父さんが牧野の部屋に行くようなことはありましたか?例えば話し合いに行くとか。
どうしてですか?お父さんの指紋が牧野の部屋から採取されたんです。
お父さんが部屋に行ったようなことは?父じゃありません。
父が牧野を殺すなんて絶対にありえません。
お父さんが牧野の部屋に行ったことがあるかって聞いただけです。
お父さんが牧野を殺したなんてひと言も言ってませんよ。
刑事さんが父を疑ってるみたいだったから。
あぁありがとう。
やっぱり田代恭子が牧野を殺したんじゃない?え?「父が牧野を殺すなんて絶対にありえません」なんて思わず叫んでしまったのは自分が殺したからじゃないの?ん〜。
牧野の死亡推定時刻が17時から21時。
17時に殺害したとしたら自分のマンションに戻って清川由紀を迎え入れることはできたはずよ。
田代義一が22時に目撃されたのは娘が牧野も殺したんじゃないかと思い確かめに行ったんじゃないかしら。
もし仮にそうだったとしてもさなんで田代義一は娘が牧野まで殺したと思ったのかなぁ。
それはわからない。
ただ今わかってることと矛盾はしないでしょ。
確かにしないよ。
矛盾はしないけどだよ…。
どうしたの?吉永君も田代恭子が牧野を殺したんじゃないかと思ってるんじゃないの?う〜んだけどね…。
田代恭子はさ前の日に清川由紀から電話をもらって自分の部屋で会う約束したわけだろ?そんな日に牧野を殺すかな?牧野殺しが計画的犯行だとすると清川由紀と会う約束をしてそれをアリバイにするつもりだったんじゃない?あぁなるほど。
アリバイねぇ…。
清川由紀の胸をあれほど深く刺してしまったのも牧野を殺した興奮がまだ残っていたからじゃない?うん…。
出ました!出まし…。
失礼しました。
おい小沢!何なんだよお前は。
いい雰囲気だったから復活かな…。
今度こんな真似したら殺すぞ。
で何が出たんだ?牧野の握ってた髪の毛残ってた毛根をDNA型鑑定したら田代恭子のものでした。
やっぱりそうか。
〜彼女とちょっと話がしたいんだ。
わかりました。
すみません。
お話しされたいということなんで。
いかがですか?田代さん。
実はですね殺された牧野があなたの髪の毛を握りしめてたんですよ。
どうしてあなたの髪の毛を握ってたのか説明できますか?田代さん。
私じゃない…私は殺してない!現場百遍ですか?今どき流行りませんよ。
お前みたいなやつがほんとによく刑事続けてるよな。
今度鑑識なんかなろうかななんて。
お前みたいな無神経なやつにやれるわけないだろ。
鑑識にかわいい女の子入ったの知ってます?お前何度だ?何がです?部屋の設定温度だよ。
今は26℃です。
16℃になってる。
牧野暑がりだったんですかね。
俺たちが臨場したときエアコンついてたか?いやモワッと暑くておまけに臭かったからエアコンつけたいなと思ったんですよ。
あなたは娘さんが牧野を殺したと思ってるんでしょ?だからずっと黙秘を続けてるそうですよね?これから大事なことを聞きますからきちんと答えてください。
娘さんの運命がかかってます。
6月16日の夜あなたが牧野の部屋へ行ったとき何か感じたことはありませんでしたか?いいですか?あなたが五感で感じたことよ〜く思い出してみてください。
牧野殺しに関して娘さんの潔白が証明できるかもしれないんですよ。
寒かったよ。
寒かった?ああ。
あいつの部屋に入ったときブルッと震えるほど寒かったよ。
(小沢)それは何時くらいですか?ちょうど10時頃だったよ。
部屋の鍵は?開いてたよ。
そもそもなんで牧野の部屋へ行ったんですか?病院に駆けつけたとき恭子に聞かれたんだ。
何て聞かれたんです?お父さん…牧野のこと何かニュースでやってない?そう言われてそれで何か胸騒ぎがして。
牧野の部屋のエアコンの温度は16℃に設定されてました。
普通16℃になんかしませんよ。
おそらく牧野以外の人間が16℃にセットして何時間か後に切れるようにタイマー運転させておいたんです。
普通は遺体の体温っていうのは自然放熱によって少しずつ低下していくもんなんですよ。
でももしエアコンで冷やされていたとしたら急速に下がるはずなんです。
鑑識が出した牧野の死亡推定時刻は16日の17時から21時の間ですから本当の死亡時刻はもっと遅い時間!そうなんですよ。
ということはつまり田代恭子には牧野は殺せないっていうことになります。
仁さん。
はい。
牧野が何時まで生きていたか至急情報を集めさせて。
わかりました。
「牧野のことニュースでやってないか」って聞かれたってお父さんは言ってるんですが。
覚えていません。
じゃお父さんと牧野のことを話題にしたのは覚えてますか?事件の夜のことはほんとに覚えてないんです。
清川由紀に切りつけられた後のこともまだ思い出せませんか?思い出せません。
あなた本当は思い出せないんじゃなくて思い出せないフリをしてるんじゃありませんか?そんなことありません。
だって都合よすぎるでしょ。
大事なことに限って思い出せないんですから。
思い出せないものは思い出せないんです。
じゃ思い出してください。
そんな無理言わないでくださいほんとに思い出せないんですから。
わかりましたじゃあ治療しましょう。
ここ心療内科がありますから今から行きましょう。
おい小沢車イス用意してくれ。
えっ!?さぁ行きますよ。
いやちょっと…吉永さん。
いいから用意しろ。
それはまずいですって。
失礼します。
面会の方が。
いいよ。
淳子。
ケガ大丈夫だった?うん。
大変だったね。
失礼しよう。
村尾淳子ですよね。
うん。
ただ今戻りました!あぁご苦労さん。
でどうだった?事件があった夜の記憶はまだ戻ってないみたいですね。
おぉそっちはどうだ?田代恭子には殺せませんでした。
19時56分に牧野はレンタルDVDを返却してました。
19時56分…田代恭子が自首した後です。
本当に本人が返却したか確かめた?防犯カメラの映像も確認しましたから間違いありません。
そう。
牧野殺しに関しては田代恭子はシロね。
父親の田代義一もシロなんだろ?まだ完全にシロとは言い切れないと思います。
田代親子以外で牧野を殺すような動機を持つ人間誰か挙がってる?あぁいえ牧野はもともと人づきあいの少ない男で仕事先でもほとんど人との関わりはなかったようなんです。
発想をひっくり返してみたらどうですかね?なんだ?発想をひっくり返すって。
いや動機のない人間が牧野を殺したっていうことはないんですかね?動機のない人間がどうして牧野を殺すんだよ?通り魔や愉快犯ならともかく今回の場合それはないだろ。
例えば親友のために殺してやったっていうのはどうですか?それって村尾淳子のこと言ってんのか?彼女は田代恭子が牧野のストーカー行為に悩まされていたことを知ってたわけでしょ。
見かねた彼女が田代恭子のために牧野を殺してやったってことは…。
いくら親友のためだってそれはないだろう。
村尾淳子にとって代償が大きすぎるよ。
彼をとられたのよ村尾淳子は。
動機のない者が殺した…。
ただいま。
(菜摘)パパおかえりなさ〜い。
この匂いは…。
もしかして!ほらやっぱり菜摘特製蓮根カレーだ!パパこの前食べられなかったでしょ。
うん。
もうちょっと煮込むから待っててね。
OK!やっと食べられるぜ〜!あれママは?具合悪くて寝てる。
具合悪いの?どこが?え〜。
パパおかえりなさい。
デコどうした?具合悪いんだって?風邪?ちょっといい?もう大丈夫たいしたことないの。
熱はないみたいだけど。
座って座って。
ありがとう。
よいしょよいしょ。
パパ見て。
菜摘包丁買ってもらったの。
え〜!?菜摘のマイ包丁!おぉちょっと見せて。
一丁前だな。
気をつけて使うんだぞ。
は〜い。
高そうだなあれ。
うん結構したの。
だろ。
安い包丁だとちゃんと研げないからすぐに切れなくなっちゃうんだって。
なるほどね。
あっそうだ。
ねぇもしさデコが包丁を買いに行ったとするじゃない。
うん。
でお店の人からさ「どんなことにお使いですか?」って聞かれたら何て答える?どんなことにお使いですかって聞かれたら?う〜ん…魚をおろすのに使いますとかお肉を切るのに使いますとかそんなふうに答えるんじゃないかな。
魚とか肉…だよな普通。
どうして?なんでわざわざ鯛なんて言ったんだ?パパ?〜さっ始めるわよ。
(牧村)はい。
あのう…もう一度原点に戻ってみませんか?原点?清川由紀はどうして鯛なんて言ったんでしょうかね。
木島由紀が刃物店で出刃包丁を買ったとき店主に何て聞かれたんだっけ?どんなことにお使いですかって。
で彼女は何て答えた?鯛をおろすのにって。
このとき清川由紀は口からデマカセでそう言ったんですかね?それはそうだろ。
清川由紀は鯛なんか買っちゃいないんだ。
じゃどうして鱗落としまで買ったんですか?そりゃ店主に言われるまんまにそのまま買ったんだろ。
それじゃあ発想をひっくり返してみましょう。
彼女が本当に鯛をおろすために出刃包丁を買ったとしたらどうですか?こっちのほうが鱗落としまで買ったってことがすんなり納得できますよね。
つまりこういうこと?清川由紀は誰かに頼まれて鯛をおろすための出刃包丁を買ったってこと?そうです。
誰に頼まれたんですか?田代恭子?はい。
恭子の父親に確認したところ彼女は魚をおろせるそうです。
いやでも…。
あの部屋に鯛はなかった。
まさか吉永さん。
そうだ。
田代恭子は清川由紀を計画的に殺害したってこと?計画的!?あっ!出刃包丁を清川由紀に買わせたのは正当防衛に見せかけるため。
そういうことだ。
もちろんこれはまだ仮定の話です。
でももしこれが計画殺人だったとしたら田代恭子が窓から出刃包丁を投げ捨てたのにも何か意味があるはずです。
例えば清川由紀を殺したことを何者かに知らせるためとか。
そんなことどうしてわざわざ知らせるんですか?その何者かが清川由紀が殺されたことを確認した上で牧野春樹の部屋に向かった。
そう考えれば時間的にもぴったりと一致するんです。
それだ!班長もう一度田代恭子のマンション家宅捜索させてください。
吉永さんはここに誰がいたと思ってるんですか?お前さ。
はい。
少しは自分で考えろよ。
考えてますよ!考えてるから聞いてるんじゃ…。
どうした?あ〜やっちゃった。
何してんだよ。
動くな!お前みたいなドジが他にもいたみたいだ。
いいかグレーのスーツグレーのジャケットグレーのスラックス。
もしくはグレーのカーディガン。
本件に関係のありそうなものはすべて押収してくれ。
はい。
行くぞ。
田代義一さん家宅捜索令状が出てます。
ご協力お願いします。
終わりました。
ご協力ありがとうございました。
あなたがお父さんに牧野のことで何かニュースやってない?って聞いた意味がやっとわかりました。
あなたは牧野が殺されたかどうか知りたかったんでしょう?やっぱりそうなんですね。
覚えてないなんていうのも全部ウソだ!出ました!家宅捜索の結果が出ました!あったか?該当する衣類はありませんでした。
ない?そんなわけないだろうお前!最後まで聞いてくださいよ!衣類はありませんでしたけど布切れが見つかりました。
これです。
繊維を分析した結果吉永さんが見つけた繊維と同一のものと断定されました。
これ何だよ?スーツ買ったときに付いてくる切れ端じゃないですか?おお。
かぎ裂きしたときに補修する布ね。
布切れだけ残ってたってことはスーツは処分されてますね。
クソ!証拠隠滅か。
スーツ捜してきます。
処分されてますって!見つかるわけないでしょ!それでも捜すのがデカだろ!吉永さん!清川さん。
どうも。
田代恭子さんなんですが実は今日退院なんですよ。
勾留される前に一度お会いになっておいたほうがいいんじゃないですか。
お客さんです。
(ノック)田代さん申し訳ないんですけれどもちょっと廊下のほうでお待ちいただけますか?はい。
すみません。
さてと…。
あなたのほうからこの人に持ちかけたんですよね?何をですか?交換殺人をだよ。
あんたのほうからこの人に持ちかけたんですよね?何をですか?交換殺人をだよ。
交換殺人?何の話ですか?あんたがこの人に代わって牧野春樹を殺しこの人があんたに代わって奥さんを殺したってことだ。
え?牧野って誰ですか?そうか…そうやってとぼけるか。
だったらこれから俺の話をよく聞いてろ!あんたはこの人が牧野のストーカー行為に悩まされてることを知ってその弱みにつけ込んで交換殺人を持ちかけたんだ。
この人があんたの奥さんを殺したのは正当防衛なんかじゃない。
あんたと示し合わせた計画殺人だ。
あんたの芝居たいしたもんだったよ。
どうしました?2週間くらい前に由紀がひどく怒って帰ってきたことがあるんですそう言ってあんたは事件当日の2週間前から2人の間にトラブルがあることを我々警察に印象づけた。
しかしそのトラブルはすべてあんたが演出したもんだ。
まず奥さんがテニス合宿を口実に不倫旅行に行っていることがバレるように仕向けた。
当日この人が急に具合が悪くなって行かれなくなったのもあんたが書いた筋書きだ。
そうですね?不倫旅行がバレた奥さんの怒りの矛先は狙いどおりこの人に向けられた。
何すんのよ?あなたの顔なんかもう二度と見たくない!2人の激しい口論は店の従業員や客たちに目撃されてこれまた2人の間にトラブルがあることを我々に印象づけた。
更にあんたは奥さんの不倫相手の島本さんのところに乗り込んで別れろ!と迫りおまけに慰謝料まで要求した。
もちろんあんたの一番の狙いはカネじゃない。
話は知ってんだよ!この人の口から奥さんとの不倫を聞いたと島本さんに告げて島本さんの口からこの人にバラされたと奥さんに話させるためだ。
それを聞いた奥さんはもちろん怒り狂った。
こうやってあんたはこの人の正当防衛のお膳立てを揃えたわけだ。
そして計画は山場を迎える。
事件の前日あんたはこの人に指示して奥さんに電話をかけさせた。
おそらくこんな内容だ。
この間はごめんなさい。
奮発して鯛を買ったの。
由紀鯛のお刺身好きでしょ?明日の晩家で一緒に食べない?いいけど。
じゃあ悪いけど家に来るときに鯛をおろす出刃包丁を買ってきてくれない?引っ越したときどこかにしまい忘れちゃって。
私が買ってくの?由紀のマンションの近くに刃物屋さんがあったじゃない。
あそこ種類が豊富なの。
悪いけどお願いね。
もちろんお金は私が払うから。
出刃包丁だけでいいのね?ええ翌日奥さんは何の疑いもなく出刃包丁を買ってこの人の部屋を訪ねた。
わざわざ鱗落としまで買ってだ。
そして鯛の刺身を食べることもなく殺された。
あんたの望みどおりに。
そのときあんたはこの人の部屋の下つまりあの生け垣の近くに身を潜めて待ってた。
なんでそんなところで待ってたのか?この人が奥さんを本当に殺したかどうかを確認するためだ。
あなたはそれを報せるために出刃包丁を投げたんですよね?その足であんたは牧野の部屋に向かい警察を騙って部屋に上がりこんだ。
清川:田代恭子さんのことでちょっとお話が…。
玄関先じゃちょっとまずいでしょ牧野を刺殺したあんたはあらかじめ用意しておいた恭子さんの髪の毛を牧野の手に握らせた。
更にエアコンの設定温度を16℃にしてタイマーも仕掛けた。
実際に殺害した時刻よりもっと早い時間に殺されたように見せかけるためだ。
つまりあんたは牧野殺しの罪も最初からこの人にかぶせるつもりだったんだ。
そんなことをどうして僕がするんですか?僕にメリットなんて何もないじゃないですか。
いやいやいやいやメリットだったらおおいにあるだろ。
病床の義理の父親が亡くなったら莫大な財産はすべてあんた1人のものになるわけだからな。
妻は殺されたんですよ。
遺産なんて僕にはもう何も関係ないじゃないですか。
まだそんなふうにしらばっくれるつもりなのか?もうとっくに調べはついてるんだよ。
あんたは奥さんが殺される1週間前突然奥さんの父親の養子になってるよな。
届け出には奥さんの同意も必要だ。
どうせ不倫してることを責めたてて無理やり同意させたんだろう。
養子になったからって何だと言うんですか?いやだってあんたたち夫婦の関係はとっくの昔に破綻してたんだろ?それを今になって養子になろうなんて遺産目当て以外他に何があるって言うんだよん?ここ2年まともにろくな仕事もしていない。
事務所の家賃だって1年以上滞納だ。
困り果てて不動産投資に手を出したら逆に1億もの負債を抱えてしまった。
この穴埋めをするためにはあんたも奥さんを殺すしかなかったんだよ。
さもなきゃあんた自身がやばい連中にたっぷり保険金をかけて殺されかねないからだ。
そんなそんなことありませんよ。
もうこの男の本性がわかったでしょ?あなたはまんまとこの男にはめられたんです。
あなたのアパートに石が投げ込まれたことがありましたよね。
結局誰がやったかわからなかった。
あれをやったのはこの男です。
そんなそんなはずありません。
引っ越した先のマンションに3日も経たないうちに牧野が現れたのも…。
あっ…この男がなんらかの手段を使って牧野に教えていたからです。
違います。
そうやってこの男はあなたを追い詰め恐怖心を植えつけていったんですよ。
そしてその一方であなたに近づきあたかも親身になって心配しているようなフリをして相談にのるようになったんじゃありませんか?そうでしょ?知らなかった。
恭子ちゃんも由紀にそんなつらい目に遭わされていたなんて…。
痛いほどよくわかるよ。
ほんとは由紀がどんな女だったか。
僕は結婚してからだけど恭子ちゃんは子供の頃からずっとだもんな。
つらかったよな。
ほんとつらかったね。
恭子ちゃんの傷は僕の傷だよ。
もうダメ。
どこに逃げてもあの男は追いかけてくる。
もう一生あの男から逃げられない。
もう一度だけ警察に相談してみたら?無理。
警察がいちばんアテにならないわ。
きっと私はあの男に殺されるのよ。
あるよ。
あいつから永遠に逃げられる方法がひとつだけ。
僕が助けてあげる。
どうやって?僕の言うとおりにするって約束できるかい?そうやってこの男はあなたの心の中に忍び込んでいったんです。
最初からあなたを利用する目的で。
田代さんいいかげん目覚ますんだ。
今更言い訳にしかならないかもしれないけどあの日由紀が私の部屋にやってくるまでずっと迷ってたんです。
そこに由紀が来て由紀の顔を見た瞬間こんなことしちゃいけないやっぱりやめようって思ったんです。
ほんとにそう思ったんです。
この間はごめんね。
出刃包丁。
念のため鱗落としも。
ありがとう
(恭子)これでよかったんだ。
バカなことをしなくて済んだ。
自分にそう言い聞かせてそこで終わるつもりだったんです。
だけど由紀のあのひと言が…。
飼い犬に手を噛まれるってこのことね。
飼い犬に手を噛まれるってどういう意味よ?今の言い方謝って。
謝るのはあなたでしょ。
私は飼い犬に全身噛まれてボロボロなんだから。
気分悪いわ。
帰る。
今の言い方謝ってよ。
謝んなさいよ。
何やってるのよ?私を刺す気?犬のくせに生意気なのよ。
私はあなたの犬じゃない!
(うめき声)あれから毎日由紀に謝ってるんです。
ウソだ。
僕はそんなことやってない。
この人が僕に罪を着せようとしてるんですよ。
清川お前犯行のときに着ていたスーツ燃えるゴミの日に出したよな。
とっくに焼却場で燃やされたと思ってたか?すみませんどうも。
あのですね6月16日の日曜日の夜かもしくは次の日の月曜日の朝にゴミとしてスーツが出されてませんでしたか?
(小百合)スーツの上下とネクタイかしら?えぇ!えぇそれです。
火曜日の燃えるゴミに出しちゃいましたよね?出さないわよ。
えっ?じゃああるんですか?燃えるゴミに出したらもったいないでしょ。
すみませんどうもエコ命の管理人のおばちゃんが資源回収に出すためにとってあったんだ。
しかもそのスーツにはお前が牧野を刺したときに飛び散った血痕が付着してたんだ。
お前は私利私欲のためにストーカー行為に悩まされているこの人の気持ちを利用した。
それだけじゃない。
卑劣にもこの人と奥さんの間にあった複雑な感情までも利用した。
清川!これでもまだ交換殺人なんかやっていないって言い張るつもりか?知らない!僕は交換殺人なんてやってない。
この女にはめられたんだ。
清川!お前人として恥ずかしいと思わないのか!チクショウ清川。
よくも恭子を…恭子を…。
田代さん耐えてください。
耐えてください。
ちょっと!清川!清川幹雄公務執行妨害で逮捕する。
あなたをここまで追い詰めてしまったのは我々警察にも大きな責任があります。
申し訳ありませんでした。
清川さんだけだったんです。
清川さんが初めてだった。
私が私らしくいられたのは…。
本当にごめんなさい。
由紀…。
由紀お嬢さんとのこと知らなかった。
お前をそこまで追い詰めてしまったのはお父さんのせいなんだ。
すまなかった。
そんなことないよ。
そんなことないよ。
刑事さん俺を捕まえてくれ。
こんなことになっちまったのも俺のせいなんだ。
恭子は悪くない。
恭子は悪くないんだよ。
頼むから俺を捕まえてくれ。
刑事さんこのとおりだ。
このとおりだ刑事さん。
頼むよ頼むよ…。
お父さんいいの。
お父さんいいの!恭子…恭子すまなかった。
すまなかった。
いいんだよお父さん。
犯人逮捕お疲れさまでした。
お疲れさん。
誰かの見舞いか?おふくろがちょっと。
あぁ。
失礼します。
あ鑑君。
はい。
鑑刑事の息子さんだよね?いえ。
刑事のカガミって言われたあの鑑刑事の?うん。
おはよう。
おはよう。
パパ遅い。
もうお昼よ。
非番の日くらいゆっくり寝かせてよ。
寝てる場合じゃないんだから。
なんだよ。
おぉ〜。
あれ?なにこの服資源回収に出したんじゃなかった?フフフフ…。
何その笑いは?しようがないなぁ。
パパ問題ね。
どうして菜摘のベビー服を資源回収に出さなかったんでしょうか?え〜どうして?俺分けたやつが汚れてたのか?パパ鈍い。
起きたばっかりだもん。
頭回んないよ。
何なのよ?教えて。
ん〜。
またこの服を使うことになりそうなの。
またこの服使うの?うん。
え?それってまさか…。
え!?菜摘お姉ちゃんになるの。
パパ…パパ…またパパになるのか!?そう。
やった…。
やった〜!やった〜!菜摘やった〜!やった〜!うお〜!デコデコした!いやいやでかした。
せ〜の。
(3人)バンザーイ!2015/05/30(土) 14:00〜15:55
テレビ大阪1
土曜サスペンスドラマ「刑事吉永誠一 涙の事件簿12 親しい敵」[字]
「人を殺した」と女が自首してくる。部屋には死体…凶器の包丁は事件当日に被害者が購入したものだった。
詳細情報
番組内容
交番に「人を殺しました」と田代恭子が自首してくる。恭子の部屋には、清川由紀の死体があり、やがて凶器の包丁も発見される。調べると包丁は、恭子の部屋を訪ねる直前に由紀が購入した物だった。また、恭子の体の傷や証言、包丁に残っていた指紋や血液から、事件は恭子の正当防衛の可能性が高いと判断する。ところが、吉永らが捜査を進めるうち、2人の意外な関係性が見えてきて…。
出演者
吉永誠一…船越英一郎
吉永照子…中山忍
片山桐子…眞野あずさ
鑑貴一…小泉孝太郎
田代恭子…遠藤久美子
清川幹雄…野村宏伸
小沢慎一…林泰文
玉田隆一…山田純大
木島拓也…松尾諭
清川由紀…一戸奈美 ほか
原作脚本
【原作】黒川博行
【脚本】田子明弘
監督・演出
【監督】赤羽博
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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