(うめき声)
(成海次郎)素子?お前…!!
(雷鳴)
(茶島龍之介)大田区塾経営者夫婦殺害事件。
発生は1995年でしたか。
(神楽坂遼一)当然君も覚えているだろう。
教団テロの報道が落ち着いた頃に起きた凶悪事件。
私は当時東京地検でこの事件の担当をしていたんだ。
それで?その事件を君に調べてもらいたい。
確か事件発生から20年の節目で一課が再捜査に動くと聞きましたが。
一課は遺族に報告だけ済ませ手を引いた。
未解決事件だからな君たちのほうが適任だろう。
ところでその一課の人間が我々の捜査に疑問を持ち始めています。
(宇田川賢)司法取引したな。
司法取引?なんの事でしょう。
千代田響子が逮捕された。
なぜかまた検察案件でだ。
津島は千代田を告発した代わりに無罪放免になった。
あんたが取引持ちかけたんだろう?そんな権限我々にあるわけないじゃありませんか。
何か不審な点がございましたら検察に聞いてみたらいかがですか?
(神楽坂)それがなんだ?そいつが検察にねじ込んできても知らぬ存ぜぬを通すだけだ。
(阿野忠臣)しかし…。
(阿野)大丈夫なんでしょうか?司法取引など行われた事実はない。
匿名交渉課が我々検察と繋がりがあるという事実も存在しない。
(蒔田ヒカリ)1995年10月18日。
大田区の塾経営者夫婦が殺害され一人娘が誘拐された。
これって有名な未解決事件ですよね?どうして一課は手を引いたんですか?元々形だけの捜査だった。
事件を風化させないアピールが主な目的だったが何より遺族が再捜査を望んでいない。
遺族って…。
まさか両親が殺されたあと誘拐された…。
当時8歳の娘だ。
(茶島の声)成海由佳ちゃんは両親が殺害されたあとに犯人に連れ去られ監禁された。
3日後に犯人の隙を見て自力で逃げたらしい。
彼女の証言から作り上げた犯人像がこれだ。
警察は何度も聴取を繰り返したが犯人を特定する有力な情報は得られなかった。
8歳で両親を殺されてこんなひどい目に…。
(成海由佳)いらっしゃいませ。
成海由佳さんですか?はい…。
(由佳)どうぞ。
恐れ入ります。
素敵なお店ですね。
成海さんが経営されてるんですよね?
(由佳)いえ私は何も…。
付き合ってる彼が全部やってくれてるんです。
あっ散らかしちゃってごめんなさい…。
事件…。
もしかして出版もされてるんですか?彼が元々出版社で勤めてたんです。
そこでバイトしてた時に知り合ったんですけど絵本専門のお店を持ちたいという私の夢を彼が叶えてくれたんです。
事件の…。
優しい方なんですね。
事件の事聞いてもよろしいですか?はい…。
先日捜査一課の人間が来たと思いますが捜査継続を望んでいないと仰ったらしいですね。
ようやくこのお店も軌道に乗り出した時なのでそっとしておいてほしいとお願いしました。
ですがあなたのご両親を殺害した人間が捕まっていないんですよ?犯人が憎くないんですか?茶島さん。
事件からもう20年です。
今さら犯人が捕まるはずありません。
正直私はもう事件の事は思い出したくないんです。
前だけ向いて生きていきたいんです。
(ドアの開く音)
(平林茂典)お疲れ〜。
(由佳)おかえり。
あっ警察の方。
先ほどお話してた…。
(平林)なんの用ですか?お邪魔しています。
20年前の事件について成海さんにお話を。
事件に関する話なら僕聞きますんで外で話しましょう。
あっいやでも…。
外行きましょう。
もうよろしいんじゃないですか?随分お店から離れましたよ。
あなた方警察が来るだけで変な噂を立てられるんですよ。
もういい加減にしてもらえませんか?随分警察を嫌ってらっしゃるみたいですね。
由佳は思い出したくない事を何度も聞かれました。
学生時代も好奇の目で見られ続けてそれは今でも続いてます。
彼女は子供の頃からずっと苦しんできたんですよ。
ずっと?成海さんと知り合ってもう長いんですか?出会ったのは5〜6年前ですか。
確かあなたが勤めていた出版社に成海さんがアルバイトで来たのがきっかけだとか。
そんな事どうでもいいでしょう。
あの本屋さんのために出版社を退職されたと聞きました。
由佳はあの性格だから人にものが強く言えないんです。
彼女には守ってやれる人間が必要なんですよ。
僕が近くにいれば彼女を過去から遠ざけられる。
とにかくもう由佳に近づかないでください。
どうやら捜査中止を望んでいるのは本人というよりあの男のようだな。
でも気持ちはわかる気がします。
事件から20年由佳さんはどんな思いで生きてきたんでしょうか?調べてみるか。
えっ?
(児童たちのはしゃぐ声)遊ぼう。
遊ぼう…。
ほらほらほらみんなあっちのお部屋へ行くよ。
ほら行くよ。
すみません…。
パパ?すみません!ほらみかぜも行くよ。
(施設長)お待たせしました。
すみません。
当時の写真です。
失礼します。
(施設長)あんな事件のあとだから最初は心配してたんだけど気丈な子でね。
他の子とも仲よくなってすぐに笑顔を見せるようになったんです。
事件後成海さんに何か不審な事はありませんでしたか?誰かにつきまとわれたとか。
何度かマスコミがここにも取材に来て表で待ち伏せされていたり興味本位であの子を見に来るような連中もいました。
あんな幼い子に…。
かわいそうでしたよ。
随分絵が多いですね。
ああ…画家の先生が絵画教室を開いて子供たちに絵を教えてくれているんです。
あれ由佳ちゃんが描いた絵です。
(施設長)父の日を題目に学校で描いたそうです。
先生にコンクールに応募するよう勧められて見事に受賞したんです。
(施設長)亡きお父さんの思い出にあの子はこの絵を大切にしていました。
こんにちは!走らないでね。
こちらです。
(施設長)風見さん。
(風見恒夫)はい。
あっ…。
成海由佳さん…ええ知ってますよ。
あれ?この絵…由佳さんのお店で見ました。
実は今私成海さんから仕事をもらってるんです。
風見さんの絵で絵本を作ろうとしてるんですね。
私は文才がないもので絵本なんて無理だと言ったんですが貧乏な私に気を使ってくれたのかもしれません。
素敵な絵ですね。
ありがとうございます。
ところであの事件ですが何か進展はありましたか?そういうわけではないんですが今調べ直しているところなんです。
風見さんは昔からこちらで絵を教えているそうですが成海由佳さんがこちらへ来た時の事覚えてらっしゃいますか?ええ。
最初は心を閉ざしているようでしたが徐々に元気を取り戻していきました。
絵を描く事が好きで将来は画家になりたいと言っていました。
画家に…ですか。
成海さんは確か結婚を前提にお付き合いをしている人がいるはずです。
私が言うのもなんですがまた騒ぎを起こすような事態は避けてやってくださいますか?なんか複雑ですね。
遺族が望んでいない捜査をするって。
メールした件わかった?
(恵庭茜)はい。
なんですか?それ。
平林茂典について調べてもらった。
平林…。
由佳さんの恋人ですか?どうして?それで平林が勤めていた出版社は?文奏堂出版です。
どういう事ですか?さっきの児童養護施設の書籍8割方の本が文奏堂出版のものだった。
(茜)文奏堂出版は定期的に小説漫画などを涼風児童学園を含めた児童施設に寄付しています。
平林は本の配送を行っていた事から入社当時から涼風児童学園へ定期的に出入りしていたようです。
えっ?ご苦労。
成海由佳と知り合ったのは5〜6年前だと言っていた。
だが奴の言葉が気になってな…。
彼女は子供の頃からずっと苦しんできたんですよ。
奴は意図的に成海由佳のいる施設に近づいた可能性がある。
そしてそれを本人にも隠している。
今回の事件のカギは事件後かもしれないな。
事件後?この事件遺留品は数多く残されていたんですね。
争ったような犯人の足跡指紋も検出されています。
過去の犯罪者の指紋データとは一致しなかった。
夫婦に関係のある500人以上の人間に任意で事情を聞いたがその人たちの指紋とも一致していない。
それで通り魔的な殺人の線が強いと思われた。
現金や貴金属はそのままだった。
突発的な怨恨の可能性も疑われたが夫婦の関係者から容疑者は挙がらなかった。
2010年4月に時効が廃止された時も大きく取り上げられましたよね。
過去の事件にもさかのぼって適用され時効目前にして救われた事件だと。
遺族の無念な思いを受けて時効廃止に至ったのに今回は遺族が捜査を望んでいない。
皮肉なもんだ。
誰ですか?入間正人。
重要参考人で当時警察がマークしていた。
入間って…。
あっ確かネットに書かれていました。
発生直後から疑われて何度か取り調べを受けたと。
一時は入間が犯人だと確信していた。
マスコミも嗅ぎつけ週刊誌は面白おかしく書き立てた。
中学3年生の息子が受験に失敗して自殺。
塾に責任があると考えた入間は被害者と口論になっていた。
当時仕事をクビになったばかりで事件から3日間のアリバイもなかった事が疑惑を増した。
でも指紋は一致せず他に決め手はなくて逮捕には至らなかった…。
んっ!?篠宮中学…。
どうしたんですか?誰だ?こんなところに置いたのは。
えっちょっと…茶島さん!何してるんですか?自分で置いたんじゃ…。
同級生か…。
まだ俺の事疑ってるんですか?あなたは当時重要参考人だったわけですから一番にお話を伺いたいと思いましてね。
(ため息)あなたが疑われたのは亡くなられた息子さんの事で成海夫妻と口論になっていたからですよね?確かにあの夫婦のせいで隼人は…。
でもだからって人殺しするわけないだろう!「あの夫婦のせい」とはどういう事ですか?塾の教えが悪かったせいで不合格になったからだと供述していましたよね?本当にそれだけですか?余計な事を言ったらまた疑われるだろう。
(ため息)あなたの事件後の行動を見る限り犯人である可能性は低いですね。
2001年と2004年にあなたは海外で計2年間シニアボランティアに参加していますね?当時はまだ時効15年が適用されている最中です。
海外渡航中は時効が停止する。
もしあなたが犯人ならばそんなまねはしないでしょう。
私は弁護士ですが警察と検察によってあなたに行き過ぎた捜査があったとしたなら代わりに謝罪致します。
受験に失敗した息子にあの夫婦はひどい言葉を浴びせたんです。
出来の悪い奴を入れたのが間違いだったとか家庭環境に問題があるとろくな子に育たないとか…。
隼人は繊細な子でした。
その言葉がきっかけになって…。
あの夫婦がそんなひどい事を…?その話は直接息子さんから聞いたんですか?いや…隼人が自殺したあとに仲のよかった友達が教えてくれたんです。
篠宮中学で一緒だった友人の平林茂典さんですね?ああ…。
平林は当時15歳。
だが身長も高く8歳の女の子から見れば大人と変わらない。
この格好をすればなおさらだ。
仮に友達が成海夫妻のせいで自殺していたとしても殺人なんてするんでしょうか?少年による凶悪犯罪は20年前珍しくない。
でも平林さんは今被害者の由佳さんと付き合ってるんですよ?奴は過剰なまで成海由佳を守っている。
それは裏を返せば強い独占欲だ!施設には本の寄付を口実に出入りし事件後の彼女に近づいた可能性もある。
文奏堂出版は本の寄付と同時に施設にアルバイト募集の求人を出していたそうです。
成海由佳さんはその求人を見て応募してきたそうです。
その求人も平林の策略だったかもしれない。
偶然を装って出会い関係を築くために…。
考えすぎですよ。
事件関係者が大人になって恋に落ちた。
こんな偶然あるか?監禁していた3日間で8歳の少女に異常な愛情を持ったか顔を見られた事への不安から見張ろうと考えたのか…。
どこへ行く?そんな事信じたくありません。
平林さんに聞いてきます。
ん?豆を変えたな?これは…。
変えてません。
(店員)成海さん。
すみません度々…。
今日平林さんは?
(由佳)今営業で外に出てます。
この間あの人失礼な事言ったんでしょ?すみません。
いえ…。
あっこれ風見さんの絵ですね?風見さんご存じなんですか?すみません…。
実は成海さんが暮らしていた施設に行ったんです。
そこで風見さんにもお会いしました。
この絵本出版されるのが私も楽しみです。
これが一冊の本になるなんて夢のようです。
彼が頑張ってくれて私のわがままを全部叶えてくれるんです。
それで今日は何を聞きに来たんですか?あの実は…。
成海さんちょっといいですか?はい。
ちょっとすみません。
(足音)何しに来たんですか?由佳に近づかないでくれって言ったはずですよ。
平林さんにお聞きしたい事があって来ました。
入間隼人さんご存じですよね?あとにしてください。
由佳のいないとこで…。
あなたの友人である入間隼人が成海夫妻からひどい言葉を浴びせられていたのをあなたは彼の父親に伝えた。
父親は重要参考人として取り調べを受けたが友人であるあなたにまでは捜査の手は及ばなかった。
平林さん文奏堂出版に勤務していた頃由佳さんの施設に出入りしていましたよね?その事どうして由佳さんに隠してるんですか?何が言いたいんですか?あなたは友人を自殺に追い込んだ成海夫妻を殺害しそして娘の由佳さんを誘拐した。
その後意図的に彼女に近づいて関係を築き上げた。
正気っすか?こうまであなたの名前がまとわりついてくるとただの偶然とは思えない!この話まさか由佳にも…!?まだ話していません。
先ほどお会いしましたけど言えませんでした。
しかしここであなたが隠し事をされるなら成海さんにも話さざるを得ませんね。
平林さん話して頂けませんか?由佳さん事件の事は忘れて前を向いて生きていきたいって言っていました。
でも事件を解決する事が一番その助けになると思うんです。
由佳さんはあなたを心から信頼しています。
私も平林さんを信じたいんです。
20年前自殺した隼人は親友でした。
隼人を死に追い込んだあの夫婦を僕は恨みましたよもちろん。
でも直接抗議する度胸もなくて窓の一つでも割ってやろうかなと思ってあの家に行ったんです。
(すすり泣き)虐待…?そんな…幸せな家族だったって…。
去年由佳に結婚を申し込みました。
でもまだ自信がないからと断られた。
その時に幼い時に受けた虐待の話をしてくれました。
僕は何も知らないふりしてその話を聞いた。
テストの点が悪いと体を殴られて血が出るほど手首を縛られて外に放置されたと…。
僕がその時目撃した事は今でも由佳に話せてません。
助けてやれなかった自分がもう恥ずかしくてね…。
そのあと事件が起きた…?びっくりしました。
今の僕が由佳のあの姿を見たらあの両親を殺すかもしれないです。
でも僕じゃない。
きっとあの2人には天罰が下ったんです。
そしてその後の成海さんの事が気になりずっと見守ってきたわけですね?最初はそんな気持ちなんてなかったんですけどね。
なんか気丈に生きている由佳を見ているうちにだんだん好意を持つようになってしまって…。
もしも再捜査で虐待の事実が判明するような事になったら由佳はまた世間の好奇の目にさらされます。
だからやめてほしかったんです。
僕は心から由佳を幸せにしたいと思ってるんです。
これは本当です。
この2人にそんな裏の顔があったなんて…。
成海由佳が施設に入ってすぐに笑顔が戻ったのも納得だな。
むしろ両親が殺されて彼女は解放された。
覚えてるか?保護された時の成海由佳の傷。
あれは犯人にやられたんじゃない。
虐待の傷?被害者が嘘をついていたら事件が解決しないのも納得だ。
そうなるとそもそも誘拐自体が本当に起きたのか…。
由佳さんが殺したと考えてるんですか?動機は十分だが現実的じゃない。
2人は正面からひと突き。
傷は深かった。
しかも夫のほうは争った末に刺されている。
8歳の女の子に出来る事じゃない。
おかしくないですか?ん?由佳さんが描いた父親との絵。
それが?虐待をしていた父親の姿をあんなふうに描けるものなんでしょうか?現実がつらいから願望の親子像をイメージして描いたのかもしれないな。
そうかもしれませんけど…。
あっどうも。
いつもここにいらっしゃるんですね。
園長の好意でアトリエとして使わせてもらってるんですよ。
ハハッ…。
どうしました?風見さん…。
この絵ご存じですよね?ええ。
由佳さんは亡くなったお父さんの思い出にその絵を大切にしていたそうです。
でもそこに描かれているのは本当の父親じゃない。
風見さんじゃないですか?その帽子昔の写真に写っていた風見さんが被っていたものに似ています。
由佳さんはあなたを父親のように思ってその絵を描いた。
本当の父親からはひどい虐待を受けていたから…。
風見さん由佳さんとはこの施設で出会ったと仰っていましたよね。
でもその絵は1995年8月の絵画コンクールで最優秀賞を受賞しています。
つまり事件前に描かれたものだったんです。
当然由佳さんはまだこの施設に来ていません。
本当は由佳さんに事件前から絵を教えていたんじゃないですか?家でひどい目に遭っていた由佳さんはそれで救われた。
なぜその事について嘘をついたんですか?なぜ事件前の関係を隠そうとしたんですか?家庭で居場所をなくし絵の好きだったあの子は私のところに来た。
(風見の声)最初は妙な子供が来て面倒だと思い無視していた。
でもあの子は毎日のように来て私のまねをして絵を描いていた。
(すすり泣き)
(風見)どうした?なんでもない。
(風見)えっ?
(風見)それ以来そこであの子に絵を教えていた。
子供なんてうっとうしいと思っていた私があの子の涙に心を動かされた。
(風見)おっ!上手だねぇ。
(風見の声)彼女はどんどん上達した。
私もあの子に教えるのが楽しかった。
褒めてあげると嬉しそうに笑って…。
でもある日…。
(風見)ちょんちょんちょん。
ね?
(風見)どうした?なんでもない。
それであなたは…。
私が話せるのはここまでです。
風見さん…。
これ以上話すつもりはない。
風見恒夫か…。
今回はお前に先を越されたな。
でも肝心な事は話してくれませんでした。
虐待による傷について嘘をついていた事。
2人の事件前からの関係。
状況証拠は十分だ。
殺害現場から検出された指紋が風見と合致すれば逮捕に踏み切れる。
どうした?由佳さんはまた苦しむ事になるんですか?両親から虐待されてそれが原因で殺人が起きて…。
ずっと事実を隠して大切な人を守ってきた。
なのにこのままじゃ今度は共犯者として扱われます。
まだ8歳の女の子だったんですよ。
20年前の犯人を知りながら現在もかばっているなら犯人隠避罪。
これは立派な犯罪だ。
本当にそれでいいんでしょうか?それで本当に事件が解決したと言えるんですか?どういう意味だ?事件が未解決のままでいいという事か?そうじゃありません。
でも全ての真実を明らかにしたら事件が解決しても誰も救われません。
私たちはなんのために捜査してるんですか?罪を暴くためだ。
証拠が揃い真実が明らかになった。
この件はそれで終わりだ。
お前は真実をねじ曲げる気か?茶島さんも真実の一部を隠して罪を見逃してきたじゃないですか。
殺人は何があっても許されない事です。
その罪は償わなければいけません。
でも事件の被害者が救えないなら真実なんて意味ないじゃないですか。
俺たちの仕事はここまでだ。
一課に報告して風見恒夫と成海由佳を逮捕させる。
風見さんはそれ以上は何も話したくないと口を閉ざしました。
ですが我々は風見さんが20年前あなたのご両親を殺害したと考えています。
動機はあなたを虐待から守るため。
そしてあなたはその犯行を知りながら誘拐をされたと嘘をつきでたらめな犯人像を証言した。
当時8歳だったあなたにはなんの罪もありません。
ですが今なお殺人犯をかばっている場合犯人隠避の罪が問われます。
私はあなたに自首を勧めに来ました。
風見さん。
ん?お願いしたい事があるんです。
逮捕に踏み切れる材料は揃っています。
仮にお二人が否認を続けても検察は公判維持は可能と判断するでしょう。
せめて自首して頂ければ罪は軽く出来ます。
それだけお伝えに来ました。
早い決断をおすすめします。
あっ…。
由佳さん。
お話があるんです。
20年前の殺人風見さんはいまだに犯行を認めていません。
この犯行を立証するにはあなたに真相を話してもらうのが一番早いんです。
成海由佳さんあなたに司法取引を提案します。
蒔田…。
全てを話してくれれば捜査協力の見返りとして一切の罪を問いません。
蒔田お前にそんな権限はないんだよ。
蒔田!私は真実を曲げる事はしません。
真実を明らかにした上で由佳さんを救いたいんです。
由佳さん話してください。
私は何も話すつもりはありません。
(風見)由佳。
(由佳)どうして?取引に応じるんだ。
このままでは2人とも逮捕される。
なら君だけでも助かるべきだ。
(由佳)やめてください。
蒔田さんが私のところに来てくれた。
由佳さんはこの20年間も人に言えない秘密を抱えて生きてきた。
もうその苦しみから解放されるべきです。
このままでは2人とも逮捕され虐待の事実も全て公表されてしまいます。
風見さん由佳さんを助けてあげてください。
(風見)蒔田さんの言うとおりだ。
これ以上由佳にとって苦しい事態はなんとしてでも避けなければ駄目だ。
私は…。
由佳のおかげで変わる事が出来た。
それまでの私は大の人間嫌いで誰も自分の事なんて構ってもくれない。
でも人を思いやる優しさを8歳の君から私は学んだ。
由佳を追いかけるようにして施設で私は絵を教え始めた。
子供たちと交流して絵を描く事がこんなに楽しい事だったのかと改めて思った。
(風見)だから私は由佳のおかげで少し…少しましな人間になれた。
だから私はそれでいい。
だが人一倍苦労した君は人一倍幸せにならなければ駄目だ。
これが私の最後の絵だ。
(風見)名前を伏せて出版してほしい。
この絵本をたくさんの子供に読んでもらいたい。
私は由佳と一緒にこの絵本を作れて…。
作れ…作れて…よかった。
(すすり泣き)取引に応じなさい。
嫌だ…。
由佳さん…。
司法取引を成立させます。
嫌だ!嫌だよ…。
(由佳の泣き声)由佳は虐待を受けてる事について話したがりませんでした。
あざを隠してなんでもないと強がって…。
でも心の中では常におびえていたんです。
(成海素子)どうしてこんな点数取るのよ!ごめんなさい!ごめんなさい!
(素子)駄目な子ね!
(素子)うるさい!
(由佳)ごめんなさい!あんたみたいな出来損ないいらないのよ!どうした?えっ?ううん。
どうしたんだ?平気。
なんでもないから。
何があったんだい?ん?
(すすり泣き)助けて。
おじさん助けて!
(由佳のすすり泣き)
(風見の声)その夜気になってあの子の家に行ったんです。
(由佳)おじさん!
(風見)ううっ…ああ…。
(明かりをつける音)隠れて!えっでも…。
お願い。
本当にあんたって子は…。
(素子)なんでそんなふうに生まれてきたの!なんで生まれてきたの!?
(由佳)ごめんなさい…。
(素子)あんたなんか生まれてこなきゃよかったのよ!
(由佳)ごめんなさい!
(素子)うるさい!
(由佳)ごめんなさい。
ごめんなさい!ごめんなさい!
(雷鳴)
(素子)あっ!うっ…!あっ…。
(成海)素子?お前…!
(風見)あっ…うう…。
(成海)うう…!
(成海)うわっ!ああ…!あっ…!
(服部乃絵美)事件の発端である虐待の事実を伏せる事が今回の司法取引の条件になっています。
起訴状はこの条件を踏まえた公訴事実とします。
ですがあなたが成海由佳さんを守ろうとした事を我々は考慮の上求刑します。
(風見)いえ。
守られたのは私のほうなんです。
私は由佳を置いて自首しようとしたんです。
(風見の声)でも独りぼっちにしてしまったあの子をどうしても放っておく事は出来なかった。
(風見の声)そんな生活が長く続くわけもなく…。
独りになるの嫌だ。
君は独りじゃないんだよ。
(風見)由佳は新しい人生を歩むんだからね。
ね?嫌だ。
(すすり泣き)
(風見の声)その後どうしても気になって見に行くと大好きな絵を独り寂しそうに描いていた。
それを見て居ても立ってもいられなくなった。
今日から絵を教えてくれる画家の風見さんです。
(児童たち)こんにちは!
(拍手)
(風見の声)由佳にまた笑顔が戻り私も生きがいを得た。
(風見の声)由佳も大人になり大事に思ってくれる人が現れた。
彼です。
あっそうか!家族のいない私に家族のように接してくれて…。
救われたのは私なんです。
由佳…由佳ありがとう。
ありがとう…。
(神楽坂)ご心配には及びません。
こちら側で早急に対処致しますので。
ご用件というのは?本日をもって…。
匿名交渉課を解散する。
(神楽坂)わかってると思うが匿名交渉課について我々は一切関知していない。
いいな?階段から突き落とされて殺されたようです。
(神楽坂)我々は一切関知していない。
茶島さんが検事を辞めた理由この事件と関係があるんですよね?無実の人間を犯人に仕立て上げた。
必ず償って頂きます。
野良犬が…。
真実を知りたいんです。
2015/05/30(土) 00:26〜01:26
ABCテレビ1
天使と悪魔—未解決事件匿名交渉課— #8[字]
迷宮入りした未解決事件の真相に「司法取引」という禁断の交渉で迫っていく!
“警察官×弁護士”の異色バディが人間の裏の顔を掘り下げた時に見る衝撃の真実とは…
詳細情報
◇番組内容
【未解決事件 CASE.8“殺人家族と消えた少女”】
20年前におきた塾経営者一家殺害事件。8歳の娘は数日間監禁されたあと、傷だらけで発見される!この未解決事件を捜査するが、遺族の娘は再捜査を拒否。今まで苦しんできたが、ようやくお店も軌道に乗り始め、これからは前だけを見て生きていきたい…との思いを伝えられる。その事件を捜査していくと、あまりに悲しく、切ない真相が待ち受けていた…。
◇出演者
剛力彩芽、渡部篤郎、長谷川朝晴、内藤理沙、中村静香、荒川良々、宇崎竜童
【ゲスト】小林涼子、山本圭、窪塚俊介
◇脚本
香坂隆史
◇監督
片山修(テレビ朝日)
◇音楽
林ゆうき
◇主題歌
ソナーポケット『Song for you 〜明日へ架ける光〜』(徳間ジャパンコミュニケーションズ)
◇スタッフ
【ゼネラルプロデューサー】内山聖子(テレビ朝日)
【プロデューサー】山田兼司(テレビ朝日)、布施等(MMJ)、木曽貴美子(MMJ)
◇おしらせ
☆番組HP
http://www.tv-asahi.co.jp/tenshitoakuma/
ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ
福祉 – 文字(字幕)
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
映像
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
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