9課外授業 ようこそ先輩〜センセイの頭の中〜▽作家・古武術応用研究家 多田容子 2015.05.29


鋭い眼光。
鮮やかな剣さばき。
そんな彼女の本来の仕事は…。
「柳生十兵衛」など剣豪の姿をリアルに描き出すその作風は時代小説の世界に新風を吹き込んでいます。
今注目を集める気鋭の作家。
四方を山に囲まれた忍者の里伊賀市。
上野城の城下町に多田さんは住んでいます。
この町に移り住んで新しい作品の執筆を行っていました。
あ〜はい。
光栄です。
結構見させて頂いて…。
あ〜そうなんですね。
簡単に言うと…そういう感じですね。
侍なら必ず修得していた武術。
そこに現代に通じる学びを見いだす多田さん。
子どもたちにも古の知恵を伝えたいと早速授業内容を考えます。
考え考え剣を振りまた考える。
しかし僅か2日の授業で子どもたちに伝わるのか。
多田さんは悩んでいました。
そうですね2番目の子より…小学生の頃の多田さん。
お隣は小学1年生。
確かに小さい。
体の小さい自分は弱い存在。
いつしかそう思い込んでいました。
そんな多田さんが学生時代夢中になったのがテレビの時代劇。
中でも…。
うわっ。
絶体絶命のピンチを一発逆転乗り切る忍者。
その姿に心奪われました。
「そうか」みたいな。
子どもたちが興味の持てる授業とは。
多田さんついに決断します。
やっぱり。
確かに忍者は面白そう。
でも授業になりますか?忍者の知恵を現代に伝える。
一体どんな授業になるのか。
多田さんが育った町兵庫県尼崎は大阪に隣接する大きな工業都市。
多田さんの母校は市内一の生徒数を誇る大規模校です。
授業前怪しい黒装束の人物が。
やっちゃいました。
多田さん一体何をするんですか?突然の出来事に子どもたちはあぜん。
子どもたちの心をつかむため多田さんが考えた奇襲作戦。
その成果は…。
(笑い声)
(拍手)どうでしたか?いよいよ授業が始まります。
(拍手)
(男子)先生!誰だと思いますか?忍者。
そうですね。
多分みんながイメージする忍者ってそんな感じかなと思います。
作家の多田容子といいます。
侍とか忍者とかが出てきてその辺の物語を小説で書いているのが仕事です。
なので…今でいう…お〜。
子どもたちにとっての忍者は魔法のような忍術を使うスパイ。
といったイメージのようですが…。
スパイっていうのに含まれてると思いますけど偵察したりとか見てきたりとかして盗るものが情報。
かなりこれが大きい仕事です。
忍者の使命は戦況を有利にするための情報収集。
戦いに勝つための修練がいつしか自然や人間の能力を知り尽くす知恵となっていたのです。
多田さん現代にも応用できる術の一つを紹介します。
みんなだったらどうします?木の実や果物普通はそう考えるよね。
でもそれさえ許されない状況で忍者が渇きを抑えるために口にしたものがあります。
その名は…まず最初に食べてみたい人?
(一同)はい!はいどうぞ。
どこ行った?ちょっと待ってね。
(笑い声)うっ…!
(笑い声)正解。
漢方が入っている。
あとは?そうその材料は滋養のあるさまざまな漢方と酸味を出すための梅干し。
中でも梅干しは一番のポイントで…。
そういうので忍者はどうしても水飲めない時とかにはやってて。
忍者は極めて科学的にして合理的。
生き延びるために無駄のない知恵を持っていました。
次の授業は教室を飛び出し体育館で。
今の人はこう歩いてるけども昔の人はどっちかというとこう。
日本古来のナンバ歩き。
疲れにくく昔の飛脚もこの歩き方を用いていたといわれています。
ポイントはすり足によって体の上下動を抑える事。
上げ下げはあんまりしなくて下がったら下がったままでもいいかな。
ナンバ歩きは最低限の動きで楽に前へ進める…はずなのですが…。
本当にこの歩き方とか体の使い方いろんな事が日頃みんながやってる生活とかそういうのにもいろいろ役立つと思ってて。
多田さんは子どもたちのために独自の練習方法を考えてきました。
体の重心がぶれなければ頭の上の物も落ちないはず。
揺れてると落ちやすいからピ〜ンとピ〜ンと立っていけてるんだっていう…。
…とはいっても子どもたちのナンバ歩きはなかなかうまくなりません。
今まで経験した事のない奇妙な動きにだんだん子どもたちの集中力が失われていきます。
1日目の授業も残り僅か。
多田さんにはこの日のうちにどうしても伝えたかった事がありました。
忍者も学んだといわれる…ポンッとこういう感じになります。
相手に致命傷を負わせずあくまで次の技が出せないよう相手を封じ込める技。
そしたらまた手元につけて斬れないようにする。
江戸時代っていう将軍様とかが…で振りかぶったらまたこう。
相手を傷つける事なく我が身に降りかかる危険を避ける。
忍者の世界は実に奥深い。
その技の中にある武術の精神まで感じ取ってほしかったのですが…。
そういう感じ。
1日目の授業が終了。
多田さんは子どもたちの微妙な反応を感じ取っていました。
う〜んちょっとあれですね。
いろいろ次々言ったり…う〜ん…。
次の授業をどうするか。
多田さんは深夜まで悩んでいました。
多田さんにとって幼い日に出会ってから忍者は今も夢の存在。
そういう事かもなと思ったんですよね。
どうしたらその夢を子どもたちと共有して彼らの自由な発想を解き放てるか。
そこで目をつけたのは子どもたちのアンケート。
そこには「何でもできるとしたら何をしたいですか?」という質問の結果が…。
子どもたちの夢の形がさまざまにつづられていました。
(一同)おはようございます。
2日目どういうふうな授業をしたらいいかなというのをいろいろ考えたりしました。
前回ちょっと皆さんに聞きたい事があるって言って課題というかアンケートみたいなのをお願いしたと思うんですけど。
アンケートに子どもたちが書いてくれたやってみたい夢。
その中から4つを選びました。
この4つのテーマに分けてそれぞれグループに分かれて…苦手な走りを克服。
タイムトラベルで違う時代に行く。
お金持ちになる方法を考える。
そして争いのある世界を平和にしたい。
忍者ならみんな実現できるのかな。
子どもたちは夢をかなえるために一体どんな忍術を生み出すのでしょうか?世界平和を目指すグループです。
どうすれば平和な世界が築けるのか議論中です。
文明を潰していけばいいんちゃうん?文明って?今栄えてるこの国というものをどんどん貧乏にしていけばいい。
だから合併していけばいい。
何だか想像ばかりが膨らんでいます。
そこで子どもたちは形にするため物語を作る事にしました。
こちらは苦手な走りを克服するグループ。
1日目多田さんから習ったナンバ歩きで早く走れる技を修得しようと考えました。
しかし1時間たってもうまく歩けません。
中には飽きてしまった子どもも。
そこへ多田さんが登場。
お待たせ。
お待たせしました。
うまくいかず気落ちしている子どもたちに多田さんはこんなヒントを出しました。
昔の侍とかは竹馬に乗ったりして。
昔の人の練習方法を聞いて子どもたちは独自のやり方を考えました。
男の子たちが作っているのはナンバ歩き修得グッズ。
竹馬と同じ原理です。
そして女の子は別の工夫を。
和服の帯に見立てそれが外れないように歩く事でした。
舞子さんてこんなんするやん。
こんなんじゃね?頑張ろうと思ってもそれで頑張っただけで結果が出るっていうのはある程度まではいくと思うんですけど実はなかなか難しいと思ってて。
それよりは何かもうちょっと心とか頭とかを自由にして…こちらはお金持ちになりたいグループ。
どんな忍術を使うのでしょうか?彼らは忍者グッズでお金を稼ぐ事にしました。
そして商品は…。
吐きそうやった。
目玉商品は多田さんに教わった水渇丸。
でもあの味はいただけない。
そこで味を現代風にアレンジする事に。
用意したのは梅干し。
更にレモン。
食べやすいようハチミツや砂糖も入れて現代風アレンジ。
練った材料は…焼くの!?めっちゃ健康によさそう。
現代風すいかつ丸の完成です。
果たして調理がうまくできるか心配していた多田さん。
子どもたちの自慢の逸品を目にします。
だいぶ見た目は梅干しっぽいけど…。
パンがあるけど。
パン!?え〜ちょっとじゃあ頂きます。
酸っぱいのはすごい酸っぱい。
子どもたちも試食します。
うまっ!めっちゃおいしい。
めっちゃおいしい。
めっちゃおいしい。
もっといろいろ言わなきゃいけないのかなと思ったりしてたんですけど…最後の授業それぞれのグループがその成果を発表します。
まずはタイムトラベル。
発表前彼らは現代機器を使ってタイムトラベルの目的地江戸時代の情報を集めていました。
(男子)尼崎城。
すると尼崎の歴史が詳細に書かれているホームページを発見。
もしもし。
自分たちが暮らしている尼崎にかつて忍者がいた。
忍者の情報収集によって見つけたスクープです。
それを子どもたちは大きな壁新聞に仕上げました。
お金持ちになりたいグループは作った忍者食をみんなに振る舞います。
酸っぱい!酸っぱ!苦手な走りの克服を目指したグループ。
ナンバで練習した成果を見せました。
(拍手)最後に世界平和グループの発表です。
彼らが作ったのは世界を平和にする物語。
それは忍者が情報を入手し戦争を未然に防ぐというものです。
そんなストーリーを考える上で参考になったのは多田さんが教えてくれた柳生新陰流。
戦いで人の命を奪わないという剣術でした。
えい!
(笑い声)2日間にわたった忍者の授業。
そこには子どもたちが自ら武術の世界を楽しむ姿がありました。
全体的に予想以上にこんなにいろいろみんなが思いついてどんどんやってくれると想像してませんでした。
本当に忍者を今に生かすっていう事が結構私の言いたい事というか私は本物の忍者じゃなくて忍者が好きで詳しいっていうぐらいなんでどのぐらいみんなが考えてくれるかなっていうのは心配だったんですけど本当にみんながすごくよく考えてくれてしかも楽しそうにもやってくれたんで本当にうれしかったです。
これから本当にみんないろいろ何でも不可能を可能にしてやっていけると思いますのでそれぞれで自由に伸び伸びやっていって下さい。
本当にありがとうございました。
(一同)ありがとうございました。
(拍手)忍者の事がすごく分かったです。
何か結構泥棒みたいな事して悪いイメージやったけど忍者のイメージが180度変わったっていうか。
すごく優しくてしかもいるといろいろ詳しく言ってくれるし勉強にもなるし何かすごくうれしかったいてくれて。
さようなら。
またどこかで!ありがとう。
2015/05/29(金) 19:25〜19:55
NHKEテレ1大阪
課外授業 ようこそ先輩〜センセイの頭の中〜▽作家・古武術応用研究家 多田容子[解][字]

今回の先輩は、作家で古武術応用研究家の多田容子さん。長年研究してきた忍者の知恵を、現代にいかすことを子どもたちといっしょに考えていきます。

詳細情報
番組内容
多田容子さんは幼い頃から時代劇に熱中し、なかでも忍者の存在に憧れた。伊賀市に住んで長年にわたり忍者を研究してきた。多田さんは尼崎市の母校の後輩たちに、忍者式サバイバルや歩き方の練習など“忍者の本当の姿”を教えることにした。そして授業2日目、多田さんは、忍者になった気持ちで不可能と思われたことにチャレンジしてほしいと、4つの課題を提示した。忍者に学んだ子どもたちはどのように解決をはかっていくか。
出演者
【出演】作家・古武術研究家…多田容子,【語り】杉本哲太

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
日本語
サンプリングレート : 48kHz
2/0モード(ステレオ)
日本語(解説)
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