(テーマ音楽)うんとこしょどっこいしょ。
うんとこしょどっこいしょ…はぁ。
フフッどうですかこれ?似合うでしょ。
フフフフ。
(天の声)その格好どうしたんですか?いやね古い友人からね「田植えを手伝ってくれ」ってさ絵葉書が来たんですよ。
変でしょフフッ。
でもこれほら見てきれいでしょ?でもこれね「千枚田」って書いてあるんだけど千枚田って何?草刈さんそれは「棚田」のことですよ。
日本のふるさとの風景というと皆さんはどんな景色を思い浮かべますか?父母が耕し子供たちが遊ぶ。
そんな棚田の風景を思い出す方もいらっしゃるでしょう。
米作りをしながら自然と共に暮らしてきた日本の原風景です。
棚田の歴史は古く古墳時代から作られていたといいます。
江戸時代には厳しい自然の中で棚田が切り開かれていきました。
(強い風の音)まさにそれは自然のままの姿ではなくて長い年月をかけて人間が土地に刻むような形で棚田を作り上げてきた。
そうした…棚田はまさにまじめにこつこつと生きた日本人の営みそのものでもあるのです。
耕して天に至る棚田。
今日はその心にしみいる美しさを見つめます。
(カエルの鳴き声)数ある棚田の中で白眉といわれているのが輪島市にある白米千枚田です。
日本海に面してさざ波のように田が連なっています。
この棚田にはある昔話が伝わっています。
白米の田はそれほどまでに小さいのです。
この風景は日本中の棚田ファンを引き付けています。
神奈川県横浜市に住む乗越高嶺さんです。
(シャッター音)去年1年間で6回も白米を訪れ四季折々の姿を写真に収めました。
小さな一つ一つの田んぼが四季を通して海と一体になってまるで…田が幾枚も連なって春の海を望む絶景です。
今日一つ目の壺は…白米で一番小さい田んぼ。
ここで取れるお米はなんとお茶碗1杯分。
なぜこんな小さな田んぼが生まれたのでしょうか。
白米地区は…それで田んぼ同士が支え合いながらこういう田んぼが生まれてきてるということなんですけれども。
田はよく見ると一つとして同じ高さには作られていません。
互い違いの田んぼは重力を分散させながら斜面を支えているのです。
この小さな田を維持するのは並大抵のことではありません。
日本海の長い冬。
強風と氷雪にさらされるためあぜがひどく傷みます。
(風と波の音)
(ウグイスの鳴き声)4月中旬あぜ作りが始まりました。
先祖代々150枚の田んぼを耕している鵜嶋智さんです。
機械化が進んだ今でも白米地区ではあぜ作りをはじめとする全てが手作業で行われます。
まずは木槌であぜをたたき始めました。
水が漏れる原因となるモグラや虫が開けた小さな穴を潰します。
次に田の中の泥をあぜに塗っていきます。
粘土質の土は水を含めば軟らかい泥に乾けば強固なあぜになるのです。
泥を水と混ぜながらあぜに盛りならし斜面をなでつける。
これをあぜ塗り専用の鍬1本で刃の表と裏を使い分けて行います。
田起こしから代かきまで田植え前に1か月もかけて田を準備するのです。
手間ひまかけられた小さな田にはもう一つ地元の人々の思いが込められています。
「かいのごかち」と呼ばれる作業。
落ち穂を臼ですり潰し粉にしたものを雑穀に混ぜて食べていました。
一粒も無駄にせず食べるという風習です。
この精神がどんな小さな田でも大切にするという思いに結び付いているのです。
もったいないという気持ちでこの小さい田んぼの米作りをしていることがですね日本の原風景ともいえるこの景色になってると思っております。
もったいない。
もったいない。
小さな田を愛する気持ちが棚田をより輝かせます。
そうそう絵葉書と一緒にねこれも届いたんですよ。
へえこれがくず米で作った粉ですか。
へえ珍しいなこれ。
ちょっと食べてみよう。
あ!ちょっとそのままじゃ…。
それは雑穀米に混ぜて食べるものなんですよ。
岐阜県恵那市坂折地区にある棚田です。
目を引くのは石積み。
見上げるとそびえ立つ様はまるで城壁のよう。
豪快な顔の棚田です。
ここは花崗岩の奇岩が連なる景勝地恵那峡にほど近くかつて一帯は石の名産地でした。
整地すれば石が出るため邪魔になった石は積み上げられ屋敷の石垣や土手などに使われてきました。
同じようにして棚田にも出た石が活用されてきました。
400年前に積まれた石積みが今も活躍しています。
この地域でただ一人棚田の石積み技術を継承する石工柘植功さん。
石の性質を正確に見抜くことが大切だと言います。
一山あってもどのくらいの石で…積まれた石は数百年の時を経て田を守り独特の景観を作ってきました。
今日二つ目の壺は…ここ坂折の棚田ではさまざまな時代の石積みを見ることができます。
およそ400年前の江戸初期に積まれたとされる積み方…形も大きさも違う石を重ねています。
農民が一つ一つ自分たちで積んだものです。
やがて石を割る技術が伝わると平たく割った石を横積みするようになり整った石垣が生み出されました。
江戸時代中期に入ると高い石積みが現れます。
高さ4メートルもあろうかという石積みです。
この石垣を支えている「谷積み」という積み方は互い違いに斜めに石を積むことで強度を増しまた見た目も美しくしました。
更に横から見ると…見事に表面が平らにそろっています。
そして上に行くほど勾配がきつくなります。
「宮勾配」です。
城壁に用いられたこの高い技術は一体どうやってもたらされたのでしょうか。
地元の旧家に伝わっていた資料が近くの寺に残されていました。
代々の当主が残した雑記帳の中にはある記載が。
「天保8年黒鍬を雇って石積みの補修をした」という記録です。
「黒鍬」とは戦国時代から江戸時代にかけて築城や石垣普請に従事した石工集団のことを指します。
刃の厚い「黒鍬」という丈夫な鍬を使っていました。
江戸時代中期以降黒鍬の活躍の場は城造りだけではなく新田開発に広がったのです。
江戸時代の経済というものは年貢米ということですのでそのことが何を置いてもまず田んぼを作るあるいは畑を作るそういうことが一番大事なことですので。
石の勾配をきつくして高く積めば水張り面積が増えるというようなこともあるわけですので増産につながる。
生産増になる。
黒鍬の技術は棚田を高くあぜを狭くすることを可能にし水張り面積を広げることに役立ちました。
職人たちの知恵や技術が積み重なって見事な棚田が出来上がったのです。
しかし黒鍬をもってしても手に負えない巨石もありました。
人々はそれを「田の神」として祭りましたああいう大岩やあるいは…石を知り畏れ敬う。
石と共に生きる棚田です。
棚田で取れたお米が届いたんで早速炊いてみました。
あ〜ホントにきれいなお米だ。
へえ。
ほかほか御飯にはこれが一番。
おやこれは…?お月見ですか?棚田の四季。
皆さんが好きな季節はいつですか?緑のグラデーションがみずみずしい夏?それとも黄金色の稲穂と彼岸花が彩る実りの秋でしょうか。
大自然の厳しさに心打たれる冬かもしれませんね。
でも棚田が最も美しいのは春だと言う人がいます。
一番棚田がきれいな時期といったら4月か5月か6月。
田んぼに水を入れた時ですかね。
朝日とか夕日が水に反射してシルエットになった時が一番棚田の形がよく分かるじゃないですか。
そういう時が一番棚田らしくてまた美しいかなと思いますね。
水をたたえた田んぼの一枚一枚が光や色風景を映す時棚田はふだんとは違った神秘的な表情を見せるのです。
今日三つ目の壺は…かの歌川広重も春の棚田を浮世絵に描いていました。
空には満月。
そしてなぜか全ての棚田に月が映っています。
題して「田毎月」。
広重はこの光景を目にしたというのでしょうか。
この絵の舞台となったのは長野県の姨捨棚田です。
姨捨山伝説で知られるこの山は観月の名所としても古くから有名です。
この棚田で「田毎の月」を愛でることにいたしましょう。
春。
水守が堰を開ければ雪解け水が冬を越した田を潤していきます。
400年変わらぬ光景です。
水は上の田から順番に入れられます。
1時間かけてゆっくりと水が田を満たしました。
田に水が入るころ。
それは農家にとって特別な時期です。
「また1年始まるだな」っていう気合いも入るけどね気合いも。
「1年始まるだな」っていうね。
うん。
上の田が満ちたら下の田へ。
水はあぜを切って作った水路から流れていきます。
「田越し」と言われるやり方です。
やがて全ての田に水が満ちて田毎の月の舞台が完成しました。
深夜2時。
東の空に月が昇り始めました。
そして…月は田の中にもありました。
波立つ水面にはっきりと映っています。
しかし月が映っているのは1枚だけ。
田毎の月はやはり見えませんでした。
諦めて帰りかけたその時。
月はさっき映っていた田から隣の田へ。
更に歩みを進めるとまた次の田へ。
ゆっくりと移動していきました。
まるで月が一つ一つの田に満たされていくかのようです。
広重はこの不思議な体験を春の棚田の幻として描いたのかもしれませんね。
(謡曲「姨捨」)この地域では田んぼの季節地元の人たちが棚田に集い能の謡曲「姨捨」を謡いながら杯を交わします。
こだまする謡曲の調べ。
春の棚田と月がうたかたの夢を見せます。
また何か送られてきましたよ。
えこれは…?あ〜棚田で造ったお酒だ!やった〜!早速一杯。
フフッ。
・あなた!それで田植えのお手伝いにはいつ出かけるの?早くしないと夏になっちゃうわよ。
あいけない!忘れてた。
お〜い!今行くよ〜!♪〜2015/05/24(日) 23:00〜23:30
NHKEテレ1大阪
美の壺・選「棚田」[字]
身近なテーマを中心に、美術鑑賞を3つのツボでわかりやすく指南する新感覚美術番組。今回は「棚田」。案内役:草刈正雄
詳細情報
番組内容
日本人の心のふるさとの風景、「棚田」。耕して天に至る田んぼは、山を開きあぜを整え米を作った日本人の勤勉さの象徴である。同時に、自然と人間の関わりが生んだ究極のアートである。日本海に向かって広がる棚田の絶景とは?天にそびえる棚田の石垣を支える石工職人の技とは?そして、広重の浮世絵に描かれた、水が張られた春の棚田と月光が織りなす究極の光のシンフォニーとは?目に美しく、心にしみる棚田の風景を堪能します。
出演者
【出演】草刈正雄,【語り】礒野佑子
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
情報/ワイドショー – 暮らし・住まい
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
OriginalNetworkID:32721(0x7FD1)
TransportStreamID:32721(0x7FD1)
ServiceID:2056(0x0808)
EventID:8091(0x1F9B)