雪景色のパリモンマルトル。
20世紀初頭パリの町並みを詩情豊かに描いたモーリス・ユトリロ。
哀愁漂う風景には母への思いが重ね合わされているともいわれています。
ユトリロとその母で画家のスュザンヌ・ヴァラドンの展覧会です。
17歳でルノワールをはじめ名だたる画家のモデルをしていたヴァラドン。
やがて自らも絵筆をとるようになります。
翌年ユトリロを生みますが父親は分かっていません。
創作に恋に自由奔放に生きるヴァラドンは息子の面倒を自分の母親に任せていました。
ユトリロは寂しい少年時代を過ごします。
ユトリロ初期の作品。
彼が絵を描き始めたのは10代の頃母のいない孤独感からアルコール依存症になったのがきっかけでした。
治療のため絵を勧められたのです。
一方母ヴァラドンは独学ながらデッサン力を磨きその腕前はドガが称賛するほどでした。
力強い輪郭線と鮮やかな色彩。
ヴァラドンは生命力あふれる裸婦像を得意としました。
女性が裸婦像を描く事がほとんどなかったこの時代ヴァラドンが描こうとしたのは女性ならではの躍動する生命の輝きでした。
この時代のパリはフォーヴィスムをはじめ革新的な表現を模索する画家たちが集まりカフェで芸術論を交わしました。
しかしユトリロはそんな画家たちの熱気には一人背を向けます。
汚れた壁の家並みや人影のない裏通り。
酒のため入退院を繰り返しながらも黙々と生まれ育ったパリの街を描き続けます。
絵に広がるパリの静かなたたずまい。
ユトリロにとってそこだけが心の安らぎをもたらしてくれる自分の居場所だったのです。
晩年のヴァラドンは静物画や風景画などモチーフの幅を広げていきました。
色彩の鮮明さ筆致の力強さは増し1938年72歳で亡くなるまで創作意欲が衰える事はありませんでした。
ヴァラドンの死後ユトリロは母の大きな写真を飾り祈りをささげながら絵を描き続けました。
ヴァラドンが37歳のユトリロを描いた肖像画です。
ヴァラドンを見つめる強いまなざし。
画家としての息子への敬意に満ちています。
描く事によって結びついた母と子の深い絆が感じられます。
先月24日大分県立美術館がオープンしました。
建物は建築家坂茂による設計。
大分伝統の竹の工芸をイメージしたデザインによって開放的な空間が広がります。
大分出身の作家たちを軸に時代や国ジャンルを超えた「出会い」をテーマに開館記念展が開かれています。
1910年大分に生まれた画家宇治山哲平。
円三角。
色鮮やかな幾何学模様が踊るようにひしめき合っています。
線と面による構成を追求したモンドリアン。
東西を超え色と形が響き合います。
江戸後期の絵師田能村竹田の山水とフランスの画家ルソーの描く森が出会います。
昨年32歳で亡くなった書道家石井誠の展覧会です。
5歳の時書と出会った石井。
筋肉が徐々に萎縮していく筋ジストロフィーという難病と闘いながら創作を続けました。
横8mの大画面に「生」という文字がせめぎ合う代表作。
9世紀から15世紀にかけカンボジア一帯で栄えたアンコール王朝。
その宗教彫刻を中心にインドシナ半島の彫像を紹介する展覧会です。
瞑想するブッダに覆いかぶさるように7つの頭を広げる蛇の王ナーガ。
降りしきる雨からブッダを守ったという一場面が表わされています。
宇宙の創造を表わすヒンドゥー教の神ブラフマー。
左右と後ろにもある4つの顔。
精緻な彫りによって威厳と優美さが表現されています。
「束ねられたひかりはふたたび生まれるため闇に還される。
闇は重く黙りこみ出産する。
輪廻を映すそのたびごとに」。
浜口陽三と丹阿弥丹波子2人の銅版画家の展覧会が開かれています。
ビロードのような黒。
そこに赤い皿とぶどうが鮮やかに映えます。
深い黒の表現は「メゾチント」という技法です。
浜口陽三はその漆黒の世界に色彩を持ち込みました。
メゾチントは先端に細かな刃が連なった「ベルソー」という道具を使います。
揺りかごのように揺らしながら何か月もかけて縦横微細な溝を銅板に刻み込んでいきます。
その無数の溝にインクを詰め刷る事によって黒く深いトーンが得られるのです。
闇の中かすかな光に浮かび上がるめだか。
今年88歳になる丹阿弥丹波子は50年以上メゾチントによる銅版画を作り続けています。
メゾチントが生み出す静謐な深い闇に魅せられています。
この黒い所を作るためには相当な時間かけてベルソーで彫ってかなきゃならないんですけどその時間毎日毎日の積み重ねっていうんですか。
日記つけてるようなね面白さがあるんですよね。
時間ばかりとってバカみたいな話ですけどもその時間の堆積みたいなものがねとっても私は魅力感じますね。
豊潤な黒。
それは丹阿弥の喜びや悲しみなど時々の感情の集積でもあるのです。
丹阿弥が目を向けるのは草花など身の周りにあるもの。
それらを通して自らの心の形を追い求めているのだといいます。
(丹阿弥)あの花びらなんか描く場合には殊に風に吹かれて…。
風のない部屋に置いておいても空気が周りにありますから。
その空気描きたいみたいな感じのとこがありますね。
だから空気描いてると自然と花びらが出来てくるっていうような。
とにかくこれでも駄目これでも駄目と思って一つとして満足のものが出来なかったから続いてるんじゃないかと思います。
2015/05/24(日) 20:45〜21:00
NHKEテレ1大阪
日曜美術館 アートシーン ▽“ユトリロとヴァラドン—母と子の物語”展 ほか[字]
「ユトリロとヴァラドン—母と子の物語」(東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館 4月18日〜6月28日)ほか、展覧会情報
詳細情報
番組内容
「ユトリロとヴァラドン—母と子の物語」(東郷青児記念損保ジャパン日本興亜美術館 4月18日〜6月28日)ほか、展覧会情報
出演者
【司会】井浦新,伊東敏恵
ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化
情報/ワイドショー – その他
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
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