7日曜美術館「永遠の“モダン” 京の春・重森三玲の庭」 2015.05.24


そんな理想を掲げ庭に人生を懸けた男がいました。
古き伝統に学びながら生み出した庭はまさにモダンアート。
その手にかかれば砂と石で宇宙までつくり出してしまいます。
昭和を代表する作庭家重森三玲。
京都を拠点に数々の名園を残しました。
(菊地)いやぁすごいなこれは。
う〜ん…。
水墨画を思わせる異次元空間。
突如雲間から現れた龍の姿。
これこそ真の意味でエッジが立ってる感じでやばいですよね。
まるでばらまかれた石。
モダンを超えた美の境地。
(高橋)どっかへ突き抜けようとしてる感じがする。
京都に重森三玲の庭を訪ねます。
その美は何を語りかけてくるのでしょうか。
鴨川に春の風が吹く季節。
(シャッター音)日本美術に深い関心を寄せる井浦新さん。
重森三玲の庭を見るため京都にやって来ました。
なんか僕の性格上どうしても人が作ったものというものはやはり作った人の何らかの思いがあるという…。
そのきっと庭から…お庭から人を感じようとどうしてもいつもしてしまうんですけどもね。
京都五山の一つ…ここに重森三玲の代表作とされる庭があります。
すごい形をしているんだな。
白い砂を敷き詰めた壮大な海。
水を使わずに海や山を表す「枯山水」の様式を用いた庭です。
幾何学模様の波。
そこに立つ石は不老不死の仙人が住む島。
室町時代に生まれた伝統を踏襲しながらその姿はモダンアートを思わせます。
水海を表している砂紋もすばらしいなと思うんですけどやはりいきなり目に飛び込んでくるのは石ですねやっぱり…。
ほんとに景色の変わり方が面白い。
ああ…。
自分が動く事によって…海が波が動いているようにも見えますね。
あと微妙に傾いていたりちょっと前に出ていたり自然なようでなんかしっかりと考えられてるような…。
だんだんこの目が慣れてくるとだんだんとこの石が石でなくなってくるというか…。
ほんとに三玲さんの心の中に描いた景色の中に自分も今いるように感じますね。
建物の裏へ回ると…。
うわぁ…。
石と苔の緑が織り成す全く趣の異なる庭。
この庭にも伝統を重んじる三玲の思いが込められています。
石と苔で描いたのは2色の四角を交互に配する…古くから着物などに使われる日本古来の模様です。
完全にデザインの世界です。
ほんとにこれこそ面白いなって素直に感じますよね。
こんなお庭があっていいんだなって思わされますよね。
しゃれてますよね。
市松模様がね時間が流れていくようにも感じますよね。
こうだんだんと散っていって向こうの方だともうすごい隙間が空いていって。
だから向こうの景色にだんだんなじんでいってますもんね。
なんかやっぱ人がこしらえたものであるけれどもやっぱりこのデザインは自然へと一つになっていっているようなふうに見えますね。
自然と調和していってる。
僕好みはこっちの…。
こっちがほんとに…好きですね。
重森三玲は数々の名園を手がけた昭和を代表する作庭家です。
伝統と革新を融合させた世界はどのようにして生まれたのでしょうか。
日本画と美術史を専攻します。
そのころの作品「眼球」。
三玲は西洋の抽象絵画に大きな影響を受け新しい日本画に挑みました。
しかしこうした作品は画壇では全く評価されませんでした。
その後画家になる事を諦め京都に移り住んだ三玲は美術の研究者としての道を歩み始めます。
生け花やお茶庭などさまざまな分野で日本文化の歴史を探求しました。
転機が訪れたのは昭和9年38歳の頃。
室戸台風が近畿地方を襲い各地の日本庭園も大きな被害に見舞われました。
庭は建物と違って設計図などの資料がほとんど残されていません。
三玲は多くの庭園が修復の手がかりすらつかめない状況を目の当たりにしました。
国に調査を依頼しますが交渉は難航。
自ら調査に乗り出します。
私財を投げ打ち日本中の庭を巡ります。
庭の様子を描き写し一つ一つの石の位置まで詳細な測量調査を行いました。
3年の歳月をかけ300に及ぶ庭を調査。
測量と同時に歴史も調べ膨大な著書にまとめていきました。
その中で強く心を引かれたのが室町時代に始まる枯山水の庭です。
水のないところに水を感じ山のないところに山を感じる。
禅の思想と共に発展した日本の美意識を象徴する庭です。
古い庭が持つ美の奥深さに感銘を受けた三玲。
多くの庭を調査する中で新たな決意が芽生えました。
そして昭和14年43歳の三玲が本格的なデビュー作として作り上げたのが京都東福寺の庭でした。
お寺を訪れていた新さんもう一つの庭に出会いました。
円筒の石は不要になった柱の土台を再利用したもの。
それを上から見ると…。
分かりますか?夜空にきらめく北斗七星。
足元に宇宙を見るという三玲にしかできない庭。
どんなにモダンでもしっかりと日本的なので日本の美意識で作られてるのでなんかほんとすごい…。
そこはほんとに重森三玲さんのすごさっていうか…。
この三玲さんの庭というのはやっぱこの今を生きてる者ならばその古典をしっかり学んで今しかできない事をしっかり表現してみなさいというふうに問いかけてくれてるような気がします。
三玲の美意識はどのようにして磨き上げられたのか。
その秘密を物語る場所があります。
三玲が後半生を過ごした自宅の一部が公開されています。
庭はもちろん三玲の作。
中でも特に三玲のこだわりが詰まった場所があると孫の三明さんが案内してくれました。
それは敷地の奥に建てられた茶室。
三玲自身が設計しました。
あの市松の庭有名ですけどご覧のとおりこちらに…。
襖は市松で波を表してます。
波なんですね。
襖には大胆な市松模様。
引き手には象形文字。
欄間には藤の花の透かし彫り。
全て三玲のデザインです。
またあの釘隠しですか。
とても…。
普通は金物を使うんですけどこの部屋の釘隠しは清水焼の陶板で出来上がってます。
色鮮やかですね。
そうですね。
本人が表面の絵付けも描いてます。
そうですか。
はい。
この家でよくお茶を点てた三玲。
茶の湯の歴史の本を執筆するほど研究にものめり込みました。
日々の暮らしの中で日本の美を徹底的に探求する。
それが作庭家重森三玲の流儀でした。
(三明)芸術は創作でなければいけないというふうに言ってたんですよ。
要するにかっこいいものを作るだけじゃ駄目で「創作」というその文字が表すごとく新作でありオリジナルなものを作らなきゃアートじゃないという事なんですよね。
でそういった創作をするためにはやはり古いものをよく研究し何ていうんですかね…。
芸術の糧にするというか。
はい。
三玲の庭に出会うため京都にやって来た人物がまた一人。
典型的な何にも知らないのに好きっていうパターンでお寺さんも神社もよく行きます近所の。
何も知らないですほんとに。
名前とか由来とかも何にも。
…なんですけどやっぱりどっちも好きですね。
神社もお寺さんも庭も好きですけど…はい。
訪れたのは東福寺の中でも国宝に指定されている…おお〜…。
うん。
現れたのは意外にも一面に白い砂だけが敷かれた庭。
いいですね。
あのギザギザ感もなんかその…。
ちょっとこうそのまんまですけど尖った感じがしてなんかいいなぁという…。
この竹垣も三玲のデザイン。
稲妻を表しています。
きれいに敷き詰められた砂は波一つない穏やかな海。
そこに突如雷が響き渡ります。
実は竹垣の向こうに三玲の演出が隠されています。
いやぁ…。
いやぁすごいなぁこれは。
う〜ん…これはやばいですね。
いやぁすごいですねこれは。
うん…。
それはまるで一幅の水墨画の世界。
雲を巻き起こし天に昇る龍の姿です。
石は見え隠れする龍の体。
尖った口と2本の角。
顔を出した瞬間です。
なんか予感めいたものがありましたけどね。
ただじゃ済まないんだっていう感じはあったんだけどここでバーンとこうきたっていう…。
これこそ真の意味でエッジが立ってる感じで。
黒い砂は立ちこめる雲。
白い砂は波打つ海。
その境界線にセメントを使って筆で描いたような輪郭線を引き雲が渦巻く様を際立たせています。
龍吟庵の名前から発想した龍が舞う庭。
枯山水でありながらそこはもう劇場空間です。
もうこう稲妻見たからじゃないんですけど電気的な音がビューンってノイズみたいな。
もうめちゃめちゃ鳴ってるような感じの…。
伝統的でありながら絶対古びない前衛をやるんだという意志から始まって。
だからめちゃめちゃにすれば前衛的になるんだけどそうイージーにはやらないんだという。
僕も自分の最初のソロアルバムを作った時にコンピューターに一人一人の合奏じゃなくて一人一人の演奏を別々に録ってそれでそのあとコンピューターの中で一つにして疑似合奏みたいに編集すると一見合奏してるみたいに聞こえるっていう。
この三玲さんの庭からは何ていうのかな…。
似たバイブスを感じますねすごく。
現代のアーティストをも魅了する三玲の世界。
そこには新しい庭を作る事への揺るぎない哲学があります。
次に訪ねたのは東福寺の光明院。
うわぁ〜。
これは…。
これはどう…。
いやぁ…何だろう。
何ていうかな…これはやっぱ高低がある分ダイナミックなんで。
ちょっと笑っちゃいますよねおかしいっていうんじゃなくて。
こう…すごいなぁ。
これはさっきみたいな渋み…よりももっと派手ですよねなんか。
一見ランダムに置かれたような石。
実は石の並べ方に三玲の巧みな計算が隠されています。
この庭の設計図です。
上の3つの石から放射状に線が引かれています。
この線に沿って全ての石が規則正しく並べられているのです。
確かに奥から放射状に石が並んでいる事が分かります。
三玲は光明院の名にちなみ仏の光が隅々まで降り注ぐようにと庭に願いを込めたのです。
その…見せ方みたいなものも含めてすごい爽快っていうかねショッキングですね。
光がバーッとさすというようなね。
ちゃんとしたプランニングがあってこうやって線が引かれてまあ何ていうのかねぇそれこそヨーロッパ人がやりそうな光学的なパノラマの発想。
立体っていうかね…もあるんでしょうけどやっぱねこの…キャラクターみたいに石がボンって全部立っててあの…これに圧倒されますよね。
なんかジョイフルっていうか。
楽しくなっちゃうっていうかね。
三玲さんは相当激しい人だったと思うんですけど楽しい人でもあったような感じがすごいしますね。
気持ちよく我の強さが入ってくるというか。
こう自分がクレーンになったみたいな感じで上がったり下がったりしても楽しいですよねこれ。
すごいなぁ…。
ここが菊地さんが見つけたベストポジション。
すると予期せぬ感覚が湧いてきました。
こっちはなんかね具体的な音楽が聞こえますね。
ハンガリーにゾルタン・コダーイって作曲家がいるんですけどちょっとオペラなんかがあればおちゃらけたシーンもあるから「ハーメルンの笛吹き」みたいなねわさわさ出てきてちょっと響きがユーモラスっていうようなのあったりするんですがそういうシンフォニックだけどユーモラスな音楽の感じがしますねなんか。
古代から神が降臨するとあがめられてきた松尾山。
その麓に京都で最も古い神社の一つ松尾大社があります。
やって来たのは…ここには重森三玲が亡くなる直前最後に作った庭があります。
まずは緑豊かな山と曲がりくねった小川が流れる…平安時代貴族たちがそばで歌を詠んだという曲水を取り入れた雅な庭。
すごいかわいい感じ。
他の三玲の庭もそうなんですけどこの曲がって川を描いてるんですけど完全にアニメの線だよね。
ほんとに「となりのトトロ」でトトロがワッてやると草がバッと生えるっていうこういう生命の感じ。
だからすごくアニメっぽいんですよ。
だから三玲の庭見てると違和感がないっていうのはこれ古いお寺の庭っていう感じじゃない。
テーマパーク?みたいな気がします。
すごいかわいい。
かわいいものって日本人好きだしすごいなんか落ち着くもん。
ここ来るとあっ来た事あるな見た事あるなって感じがしますね。
「曲水の庭」いいっすね。
そしてこの先に三玲の到達点といわれる庭があります。
よいしょ。
ああこれかぁ…。
まるで荒れた大地に巨大な石をばらまいたかのようです。
怖いね。
こんな巨大な建物がなぎ倒されたように見えるでしょ。
震災のあととかさ戦争のあとにも見えるもんね。
でも同時に生命の源みたい。
何とも言えない感じ。
まださっきの「曲水の庭」とかね他の重森三玲の庭だと何となく言葉に翻訳できそうだけどこれはちょっと無理だね。
人間の生命とか生命の裏の無意識にはこんな人前にさらけ出すと怖いものがあるよっていう…。
これがちょっとやっぱり正常では作れないよね。
ちょっと自分の中にある狂気を解放した感じが…。
それまで全部かわいいなと思ったけどこれ石がさかわいくないんだよねどれも。
79歳。
革新的な庭を作り続けた三玲が石へのなみなみならぬ思いを込めた最後の庭です。
作庭は石に始まり石に終わる。
三玲は石組みが庭の命であり組む瞬間を捉える事が何より大切だという信念を持っていました。
そんな三玲が最後に挑んだのは神が鎮座する場所「磐座」です。
自らの手で神そのものでもある磐座を作ろうとしたのです。
一切の邪心を振り払うため報酬を断って臨みました。
芸術家の使命の一つにすばらしい作品を作るという事があるんですがそれは基本的には人間を理解するって事だと思うんですよ。
でもアートで人間の理解をどんどん広めていくともしかすると最後はこれ以上先は分からないってとこまで行くのはでも僕は芸術作品を作ってる人みんなの希望だと思うんだよね。
一番やりたい事はもちろん人間の理解だけどでもそれは考えてみればどっかでこれ以上先はもう人間じゃないですよというとこまで行けばもしかすると最高ですよね。
それは分かったっていう事はそういう事かもしれないし。
つまり分かんないっていう。
やっぱり最後にやり残した事っていうのはじゃあ限界がどこでこれ以上行くと人間じゃなくなっちゃうって何?というのは僕でも思いますからね。
そういう最後にたどりついたのは人間…こっから先はもはや人間でなくなるものまで見たかったんじゃないでしょうか。
それは具体的な形で表すとこの庭ですね。
大きくて一個一個怖くていろんな方向に倒れてる。
そういった巨岩が巨大な雑草の中にゴロンと並んでいてその向こうにはなんかね実際に山が広がっている風景。
この向こうには何があるっていう…。
それがたどりついたところ。
三玲の人間認識だったのかもしれないですね。
生涯「永遠のモダン」を追い求めた重森三玲。
日本の美を突き詰めた果てにたどりついた境地です。
2015/05/24(日) 20:00〜20:45
NHKEテレ1大阪
日曜美術館「永遠の“モダン” 京の春・重森三玲の庭」[字][再]

春の京都に、昭和を代表する作庭家・重森三玲の庭を訪ね歩く。日本の伝統美を徹底的に研究する中から生まれた「永遠のモダン」。3人の旅人が、革新に満ちた庭と対話する。

詳細情報
番組内容
目指したのは「永遠のモダン」。春の京都に、昭和を代表する作庭家・重森三玲の庭を訪ね歩く。重森は、300を超える庭を調査する中から、作庭家として歩み始め、枯山水など、日本の伝統的な美を徹底的に学びながら、独自のモダンを追求した。重森の庭が数多く残る京都を訪ね、デビュー作から最晩年の庭まで、珠玉の庭を堪能する。その美は何を語りかけてくるのか。3人の旅人が庭との対話を重ね、革新の秘密を読み解く。
出演者
【出演】作家…高橋源一郎,音楽家・文筆家…菊地成孔,【司会】井浦新,伊東敏恵

ジャンル :
趣味/教育 – 音楽・美術・工芸
ドキュメンタリー/教養 – カルチャー・伝統文化

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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