「礼」――。審判が告げると、東京・日本武道館には満場の拍手が響いた。5月29~31日に開催された世界剣道選手権。最後は男子団体の決勝を戦った日本と韓国の両チームが黙礼し、3日間の熱戦は幕を閉じた。16回目となった今回も男女の団体戦と個人戦の全4種目で日本が優勝を飾ったが、世界との差の縮まりを感じさせる大会だった。
■国内競技人口、柔道の10倍
剣道の世界選手権は3年に一度の開催だ。日本では第10回大会以来18年ぶりの開催となった今回は、1970年の第1回大会の3倍以上となる56カ国・地域から800人超の剣士が集い、世界の「KENDO」ファンを魅了した。
全日本剣道連盟によると、日本の剣道人口は2014年末で177万人。全日本柔道連盟の登録者数16万人の約10倍を誇る。ブラジルやフランスがすでに日本の競技人口を上回っている柔道に対して、剣道は世界の7割以上を日本人が占める。韓国の剣道人口が50万人程度であることを考えれば、日韓戦が名実ともに頂上決戦。今大会も前評判通り、男子個人戦を除く3種目で日本対韓国の決勝戦となった。
| 日本 | 世界 | |
| 剣道 | 177万 | 250万 |
| 柔道 | 16万 | 数百万 |
| 野球 | 690万 | 3500万 |
| サッカー | 480万 | 2億7000万 |
(注)数字は各競技団体及び日本生産
性本部のレジャー白書2014に基づく
男子団体決勝では、日本の竹ノ内佑也・四段が先鋒(せんぽう)戦を制しながら、韓国が次鋒で面2本を連取してすぐさま逆転。中堅戦で相手の猛攻を受けて「気持ちにスイッチが入った」という正代正博・六段が、「先」を取る小手2本を決めてリードを奪い返した。
副将戦は相手に打つ機会を与える「間」を作らないつばぜり合いの応酬で、互いに譲らず引き分け。優勝がかかった大将戦で日本は内村良一・錬士六段を迎えた。
■自国開催の重圧乗り越えた日本勢
時間とともに1本の重みが増し、チケット売り切れの満員の日本武道館からは一挙一動にどよめきが起きる異様な雰囲気となった。石田利也監督に「攻めながら守ることができる」と信頼される35歳の内村は、若手中心のチームで数少ない世界選手権の経験者。しかも優勝の喜びだけでなく、2006年大会では初めて団体優勝を逃すという苦い経験も味わっている。1本の重みを誰よりも知る主将は、鉄壁の守りで若手がもたらした虎の子のリードを世界一の座とともに何とか守り切った。勝負を分けたのは日韓の実力の差というよりは、ホームでの応援の差だったかもしれないと思うくらいの接戦だった。
「ここで歴史を変えるわけにはいかないと思いました」。韓国勢の躍進で、女子個人戦で初めて日本人以外との決勝を戦った松本弥月・四段は、試合前の心境をこう振り返る。女子は団体・個人戦で優勝を譲ったことはない。男子団体は06年に優勝を逃したが、日韓対決で直接敗れたことはない。
今回は第1回大会以来45年ぶりに日本武道館での開催ということで、お家芸の伝統を守るため、日本チームにかかった重圧は想像以上に大きかった。男子個人で優勝した網代忠勝・錬士六段も「日本人と当たるまでは絶対に負けられないと思っていた」と打ち明けた。
「礼」――。審判が告げると、東京・日本武道館には満場の拍手が響いた。5月29~31日に開催された世界剣道選手権。最後は男子団体の決勝を戦った日本と韓国の両チームが黙礼し、3日間の熱戦は幕を閉じた。1…続き (6/2)
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