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「火星の土地を探せるようになって不動産を侵略する」お部屋探しをITでひっくり返す | ietty

「火星の土地を探せるようになって不動産を侵略する」お部屋探しをITでひっくり返す | ietty

新しい住まいを探そうと思ったとき、借り手であるユーザーは膨大な量の物件情報から「住みたい一部屋」を探します。そこで、“不動産がユーザーにレコメンドする”という、新しい提案型のスタイルを打ち出したのが“お部屋探されサイト”『ietty』を運営する株式会社iettyです。

iettyに1人目のエンジニアとしてジョインした取締役CTOの戸村憲史氏は、「レガシーな不動産業界のデータベースを、すべて網羅していきたい」と語ります。では、不動産業者に対して「部屋を見つける」アクションを起こし続けなければならないユーザーの現状を、iettyはどのようにして変えていくのでしょうか。社員のリモートワークや副業もOKにしたスタートアップの働き方とともに、お話を伺いました。

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戸村 憲史氏

2007年に株式会社CSK(現:SCSK株式会社)入社。システム開発の上流工程から下流工程を経験。クラウドサービスのアプリケーション開発を担当。2012年に株式会社iettyにCTOとして入社。

創業メンバーからクビになって。いくつか会社を紹介してもらって出会った社長は「八百屋のお兄ちゃんかな?」と

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戸村氏が「ユーザーに望まれるサービスを自分の手で作りたい」と考えるようになったのは、クライアントの開発を請け負うシステムエンジニアの経験からでした。

戸村:

前職は受託開発の企業でエンジニアをやっていました。受託や企業向けの開発は予算の範囲内でしかサービスは作れないですし、疑問とか提案をしても返ってこないので「ちょっと違うな」と感じることが常々あって。そのときから何か自分でサービスを作りたい、起業したいと考えるようになったんです。

そこで週末54時間で起業を目指すスタートアップ体験イベント『Startup Weekend Tokyo』に参加したところ、2名の仲間とともに投資を受けることが決まったそうです。しかし、起業の夢は思いもよらぬ展開で消えてしまいます。

戸村:

会社を登記する段階になって「(創業者が)3人は多すぎる」と、急に僕がクビになったんです。最近その会社の人と飲んだりしたのですけれど、「あのときは、申し訳ありませんでした!」って(笑)

投資家はメンバー全員に投資したつもりだから、ちゃんと最後まで面倒を見るよと。それでいくつか会社を紹介してもらって小川さん(現:株式会社iettyの代表取締役)と知り合ったんです。でも、小川さんの第一印象って、まず社長には見えなくて。会ったときの服装が、八百屋のお兄ちゃんかな? 卸売とかやってます? みたいな(笑)

「この人となら一緒に面白いことができるかもと直感して」iettyにジョインすることを決めましたが、このとき社内に正社員のエンジニアは戸村氏以外に誰もいませんでした。

戸村:

僕が入社する前はエンジニアが1人もいない状態だったので、基本的に開発は全部学生が起業した会社みたいなものに投げていて。サービスも、とりあえず立ち上がってはいたんですけど、リンクを辿っていくと途中で404エラーになるような結構雑な作りだったんです。僕の仕事は、まずそこをちゃんと動くようにしていくことからでした。

入社当初は学生が作ったものを地道にリニューアルしていった戸村氏。そこで印象的な思い出をお聞きすると、ミクシィの投資子会社であるアイ・マーキュリーキャピタルから投資を受けたときのエピソードを語りました。

戸村:

投資が決まったとき、サービスの仕組みを変える話が出たんです。でも、ミクシィとしてもアイ・マーキュリーキャピタルで初めての投資案件だったので「そんなに待てないです」と。なので、どうするかを8月末まで考えて、9月だけで全部作って、みたいな。業務委託の方は何人かいたんですが、自分だけが正社員のエンジニアだったのは、やはりきつかったです。

しかも(iettyの)リリース直後にビジネスコンテストが別にあって。リリース直後なんでバグもあったりして、ビジネスコンテスト開始直後ぐらいまでバグを修正していて「今、審査員の方がログしてるところ、改修中だからバグがありますって説明して」って伝えたり。最後の方はもう寝ずに働いて、ポカリスエットにリポビタンD入れたやつ飲んで踏ん張ってたら、周りの人から「戸村さん死にそうな顔してる」って言われて。

「できなければ寝ずにでもやれ」と言われるくらいなら、ディレクターはいらない

いわゆる“B to C”を行う企業で、新しい機能の企画やプロジェクトの進捗管理といった仕事は、ディレクターが担うケースが多いでしょう。しかしiettyでは、あえてディレクターを設定しないそうです。

戸村:

今まで僕がやってきた開発が受託だったので、Webサービスの開発がどういうものかって、あまり分かっていませんでした。なんとなく、ディレクターがエンジニアやデザイナーに仕事を振っていくと思っていたので、ディレクターを雇ったんですけど、結果として社内の空気が悪くなっちゃって。

その人のやり方が独特だったのもあるけど、エンジニアとデザイナーに対して「これをいつまでに必ずやってください」「できなかったら寝ずにでもやれ」みたいな感じで、効果があるかどうかもわからない施策を依頼しちゃってたんです。彼らからすれば、なんでこんなに頑張らないといけないの? と、ストレスになってしまった。

「自社サービスなんで、エンジニアと営業の間に壁を作らないのは重要」だと話す戸村氏。それは「自分たちで作っていく」共通認識を職能にこだわらずにもつことが、スタートアップで働くには必要不可欠なマインドだと考えているからでした。

戸村:

手を動かしている自分たちで問題点を見つけて、開発を進めていく方向にシフトしたほうがいいと思って。今ではクライアントに関わる営業チームと話し合う機会が多くなって、そこには(ディレクターを挟んでいたときには見えなかった)宝がありますね。だから、企画に特化した人を作らず、エンジニア、デザイナーが自らサービスの改善点や問題点を発見し、開発を進めていく組織を目指してます。

ディレクターが担うような役割を「自分の仕事に必要だ」と思って自ら積極的に動いて、仕事をどんどん取っていける人がいないとスタートアップの良さは発揮できないです。いい意味で、カメレオンみたいに柔軟な気質の人が合っているんじゃないかなあ。

エンジニア、デザイナー、営業が自分たちでサービスを作っている感覚があってこそ、スタートアップならではのスピード感を保つことができます。iettyがチャレンジしている開発体制からは、情報を積極的に共有して課題を解決し合う企業文化が見えました。

戸村:

不動産業界ってレガシーで、ITベンチャーが参入すること自体すごく新しいんです。だから、古い仕組みも理解しつつ、新しい方法を取り入れていかないといけない。こういうことに対してモチベーションをもてないと、スタートアップでは「なんとかなるし、まあいいや」って、最初は小さい問題でもどんどん良くない方向に行ってしまう傾向があると思うので。

水曜日休みで、副業OK。自分自身をマネジメントするのが、モチベーションに繋がるから

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サービスをさらに良くするため、能動的に行動できるチームを作っていくのと同時に、戸村氏は個々のマネジメントでも「権限の委譲でモチベーションを上げる」ことを大切にしているそうです。

戸村:

部下には、ある程度の権限を付与しています。下から要望が上がってくる環境が一番いいと思っているので。スタートアップで働くからには、どんどん考えて動いて、自らをマネジメントできるくらいにならないといけない。

例えば「こういう技術や機能を使ってみたい」という話をされたとき、「基本的には使っていいよ」と僕は言います。それが勉強にもなるし、特にエンジニアとっては新しい技術を試せるのはモチベーションに繋がるから。

プロとして、仕事は「秩序を保ってやり遂げれば、週5日や常勤といった形式に捉われる必要はない」と考える戸村氏。お互いを信頼し合う“性善説”ともいえるマネジメントは、メンバーのモチベーションを最大限に引き出す秘訣なのかもしれません。

戸村:

働く環境の話でいうと、水曜日は休みで、副業OKにしています。勤務時間も20時にはほぼ全員帰るようにしている。エンジニアやデザイナーだと勉強会に行く機会があると思うけど、それも終業時間前に出ますとか全然構わない。この働き方はすごくいいと思ってます。

管理している側からすると、工夫しているのは期日設定の仕方です。こちらで決めずにエンジニアやデザイナーに決めてもらう。「この日までに、こういうのが欲しいんだけど、いつまでにできそう?」と。そうすると、自分で期日を決められるので、自分で決めたのなら守らないといけないよねってなります。評価制度も、それに見合う形に変えていきたいですね。

不動産の世界はまだ古い体質のまま。テクノロジーの力でその体質をひっくり返したい

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地域に特化した業界だからこそ、独自の仕組みが確立されている不動産業界。戸村氏は度々“レガシー”と表現してきましたが、その言葉の意味である「時代遅れの古い仕組み」について、現状と課題を話します。

戸村:

不動産業者は2種類あって、物件を仲介している業者と、物件を管理してデータベースに掲載している業者がいるのです。そこからユーザーが不動産情報にアクセスするためには必ず営業マンを介さなければならなくて。この管理業者の方々にITに疎い方が多くて「いまだにXPです」とか「FAXじゃないとダメ」とか。

課題は、国が管理している(大本の)データベースですかね。ここのデータベースというのは繁忙期だともう1週間で中身が全部変わるぐらいにどんどん更新されているのです。だから、ユーザーが本当に求めている物件を探すのには苦労をしています。大手不動産サイトを見て、お店に行っても既に物件がなくなっているみたいな。

では、従来の賃貸検索サービスからの改革を進めるiettyが目指す、新しい不動産サービスのあり方とは、どのようなものなのでしょうか。

戸村:

不動産業界の市場規模は、およそ60兆円。他の業界と比べてもかなり大きい規模なので、業界の需要をうまく当てはめられれば、iettyは一気に大きい会社になれると思う。

不動産の世界って古くからの確執がまだかなり残っているんです。そういった閉鎖的な価値観を変えていくことで、不足している情報をどんどんユーザーに届けることができるんじゃないかなと。その分野は、まだITが完全に入りきっていないので、テクノロジーの力でひっくり返す! みたいなことは可能だと思ってます。

ITの進出が遅れている“リアルタイムな情報取得”ができない不動産業界に対して、iettyのサービスが攻めていくポイントを聞きました。

戸村:

今は賃貸情報のサービスだけでやってますが、将来は不動産で扱うもの全部をやっていきたい。どうやって崩していくのか、方法はまだ明確には見えていないんですけど、うちに物件を載せると簡単に決まる、っていう信頼を管理業者からも築いていきたいです。

そこから物件情報をちょっとずつオープンにして、地図上に流してもらって、最終的にはうちのサービスを見れば全部載っているっていう形で侵略していくイメージでいます。2018年にはIPOを目指していて、海外でもサービス展開の可能性があれば挑戦したいですね。それで日本や世界よりも宇宙、火星の土地を検索みたいになったら楽しいかなと思います(笑)

業界を変えるサービスを作る、と聞くと画期的な技術が求められるような印象を受けますが、iettyの考えはあくまで“温故知新”。

戸村氏が大切にしている信頼やモチベーションといった“何かを良くしたい”と望む純粋な気持ちこそが、古いものを新しいものに生まれ変わらせることができる技術なのではないでしょうか。iettyのサービスが住まい情報のあり方を変え、私たちの住まい探しを変える未来もそう遠くはないかもしれません。

インタビュアー:そめひこ / カメラマン:大塚麻祐子 / 編集者:小田直美

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