60代後半の4割が就業、働く高齢者大国・日本

 「意欲ある方求む。60歳以上で年齢上限なし」

 13年前、岐阜県中津川市で地元中小企業「加藤製作所」が思い切った実験を行った。土日にも工場を止めず、365日稼働することが目標だった。それまで求人は容易ではなかった。社員がアイデアを出し合ったところ、「年金を受け取っているが、まだ働きたいシルバー世代を募集したらどうか」と話がまとまった。そして、市内に配布した求人チラシはたちまち話題になり、100人以上が面接に訪れた。

 1888年創業でプレス板金部品加工を行う同社には、成功談を取材しようとマスコミ21社が殺到した。85の団体から見学申し込みも相次いだ。そのたびに経営陣は「高齢者1人を若者数人が支えるという発想自体が誤っているのではないか。生きがいと収入は伴うべきだ」と語った。

 加藤製作所のような会社が増え、日本社会では働く高齢者の割合が高まっている。日本経済新聞によると、60代後半(65-69歳)の日本人のうち働いている人の割合は、2013年の38.9%から昨年は40.7%に上昇した。

 日本政府の統計にもそうした傾向がはっきり表れている。30年前の1985年には労働人口全体(5963万人)に65歳以上が占める割合は5.0%(300万人)にすぎなかった。現在は9.9%(6577万人のうち650万人)まで上昇した。高齢者に配慮した働き口の提供というレベルを超え、高齢者がいなければ日本経済が傾くほどだ。

 日経の分析によれば、30年前には働く高齢者の60%以上が自営業だった。しかし、農業が衰退し、コンビニエンスストア、大型スーパーマーケットが増え、自営業者の割合は30%以下に低下した。会社、組織、官公庁で働く月給労働者が働く高齢者の主流になった形だ。

 日本は韓国よりも1世代前から国民年金を導入した。そのため、高齢者の国民年金受給率は100%に近い。1人当たりの平均受給額は年間209万円(厚生労働省統計)だ。

 問題は若者が感じる負担感だ。「財政的な幼児虐待」だという表現まで出現した。学習院大の鈴木亘教授による分析では、1940年生まれの人は自分が支払った年金保険料よりも受給額が4930万円多く、2010年生まれでは逆に受給額が支払った年金保険料を3650万円下回る。祖父の世代とは8000万円もの差が生じることになる。今年4月から公的年金の受給額を毎年1%実質的に削減する改革案が実施され始めた。「この程度では不十分だ」と追加的な年金改革を求める声も強い。

 働く高齢者が増えれば、年金問題の解決策にもなり得る。高齢者が年金と給与というダブルの収入を得れば、年金改革に対する反発は減る。若者の収入よりも高齢者の収入の方が内需刺激効果が大きいという。若者は貯蓄やローン返済で消費余力がないが、高齢者はローン返済も終わり、貯蓄意欲も低いため、収入の90%を消費に充てるからだ。

キム・スヘ記者(社会政策部)
<記事、写真、画像の無断転載を禁じます。 Copyright (c) The Chosun Ilbo & Chosunonline.com>
関連ニュース