「日経ビジネス」が独自に作成した「病院経営力ランキング」で全国2位となった国立病院機構熊本医療センター(熊本市中央区、550床)。「集客力」「効率性・医療の質」「提供体制」「収益力」という4つの指標別にみると、各順位は623位、7位、211位、2位だった。「効率性・医療の質」と「収益力」の成績の良さが全体の順位を押し上げていることが分かる。
収益力の源となっているのは、血液がんの分野などで専門性の高い医療を提供していることに加え、救急患者の受け入れを積極的に進めている点。熊本城の二の丸の一角に位置する同院は、“真の意味”で、「24時間365日断らない救急医療」を実践している。
ある日の深夜、同院の救命救急センターに、救急隊から一本の電話が入った。自殺企図で薬剤を大量に服用した精神疾患患者を受け入れてほしいという要請だった。
「では、すぐに運んでください」。
電話を受けた看護師がそう応じると、救急医と精神科医とで患者が来るのを待った。
救命救急センターでこうして救急医と精神科医がタッグを組むのは、同院では当たり前の光景。だが、全国的にはそうとは限らない。
救命救急センターは急性心筋梗塞や脳卒中、頭部外傷など、二次救急で対応できない複数診療科領域の重篤な患者に対し高度な医療技術を提供する三次救急医療機関を指す。
救命救急センターの指定を受けている病院は全国に266施設あるが、厚生労働省によれば、そのうち精神科病棟を持つのは109施設(2013年度)と、4割にとどまる。
精神科病棟がない理由は、精神科入院の診療報酬は他科に比べて低いことや、医師や看護師の確保が困難なことなどによる。二次救急を行っている総合病院でも年々、精神科病棟を持つ施設は減少している。
従って、「救急患者を絶対に断らない病院」などとうたっていても、実際には精神科分野については、関連病院や専門病院へ転送してしまっていることは決して珍しくない。
だが、熊本医療センターはそんな他の病院が敬遠しがちな精神科救急の受け入れを積極的に行っている。それもひとえに、「地域でのニーズを踏まえてのことであり、当院の生き残り戦略でもある」と河野文夫院長は言う。