(2015年6月1日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
激しい戦闘によるインフラの損害が経済復興を妨げている(写真は今年3月、ウクライナ東部を流れるドネツ川で、破壊された橋に架けられたはしごを下りる女性)〔AFPBB News〕
もう使われていない小さな塹壕や解体されたバリケードが点在するウクライナ東部のヴフレヒルスクの町に入る道路の脇に、地元の炭鉱の立坑坑口が遊休状態で立っている。炭鉱は数カ月前、水浸しになった。ロシアの支援を受けた分離主義勢力がウクライナ政府軍を町から追い出した際の激しい戦闘の最中に、地下水ポンプへの電力供給が絶たれたからだ。
「今は仕事がない」。新たに樹立を宣言した町政のトップ、オレグ・ネレドバ氏はこう話す。
さらに「ポンプで水を吸い出し、再び炭鉱を動かす必要がある」と付け加えるが、いつそれが実現するか明言することができない。
ドネツク市の北東60キロに位置し、かつて8000人近くが住んでいたヴフレヒルスクのような町以上に、ウクライナの壊滅的な経済崩壊の深刻さが強烈な場所はない。近くにある鉄道の要衝、デバリツェボを制圧するための反政府勢力の軍事作戦の一環として3カ月前に繰り広げられた戦闘で「災禍を免れた建物は1つもない」とネレドバ氏は言う。
東部経済の深刻な荒廃
住民は生活を立て直すのに苦労しており、屋根のない小屋でスープを作っている。だが、以前は800人を雇用し、間接的にさらに数百人の住民に生計手段を与えていた炭鉱の沈黙は、疲弊したウクライナ東部経済の復興に向けた課題の大きさを象徴している。
車でドネツク市に戻ろうとすると、すぐにほかの象徴が見つかる。ヴフレヒルスクの先には広大なヒマワリ畑が視界いっぱいに開けてくる。昨年は収穫されず、今では日に焼けて茶色く枯れている。