新たな安全保障関連法案は、自衛隊の縛りを解くことに主な目的がある。 …[続きを読む]
南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で、中国が進めている岩礁埋め立ての狙…
南シナ海のスプラトリー(南沙)諸島で、中国が進めている岩礁埋め立ての狙いは何か。
シンガポールであったアジア安全保障会議で、中国軍の孫建国・副総参謀長が、軍事目的があることを明言した。
埋め立てについて「防衛上の必要な軍事的要請に応える」とし、建設中の滑走路を「軍民共用」とする見通しも示した。
全く容認できない発言である。この海域の岩礁は近隣国が領有権をめぐり争っている。力による一方的な既成事実化は明らかに国際ルールに反する。埋め立てを即刻中止すべきだ。
ファイアリークロス礁と呼ばれる環礁では、埋め立てによる滑走路が姿を現し、スプラトリーで最大の面積になろうとしている。これらを拠点に防空識別圏を設ける可能性がある。
中国政府が先週発表した国防白書は、陸軍よりも海軍に重点を置くとする海洋重視戦略を明確に掲げた。孫氏の発言はその線に沿ったものだ。
南シナ海への進出には、漁業資源や海底資源の確保に加え、重要海路を支配する軍事力を確立する狙いがあるとみられる。
孫氏は「海洋科学研究」「環境保護」も目的に挙げるが、埋め立ては環境破壊ではないか。他国から非難されても、制裁は受けないとの見通しがあるようだが、それは大国の傲慢(ごうまん)だ。
中国はこうした活動を「自国の主権の範囲内」としている。その前提には、南シナ海の大部分をU字形に囲った「9段線」内に歴史的優先権があるとする主張がある。中国で流通している地図にはその線が国境のように引かれているが、国際法上、説明がつくものではない。
習近平(シーチンピン)政権は、周辺国との外交の方針として「誠実」や「互恵」を掲げたはずだ。東南アジア諸国連合とは、南シナ海問題の平和的解決をめざす合意を重ねた経緯もある。力任せの行動が信頼を損ねている事実を自覚するべきだ。
中国の動きを受け、東南アジア各国が海軍力の強化に動いているのも心配だ。フィリピンは実効支配する島で軍事基地を強化し、ベトナムも岩礁の埋め立てをしていると伝えられる。中国を牽制(けんせい)する米軍の行動も緊張を高めかねない。
この海域で実効支配する島を持つ台湾は最近、領有権争いの棚上げと、資源の共同開発などを提案した。中国との関係で国際協議に加われない立場ではあるが、傾聴に値する。
南シナ海を穏やかな海に戻す努力をすぐに始めなければ、事態は悪化するばかりだ。
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