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【国際情勢分析】AIIBの陰で中国政府ファンド「シルクロード基金」の“やりたい放題” 国際社会に乏しい警戒感

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【国際情勢分析】
AIIBの陰で中国政府ファンド「シルクロード基金」の“やりたい放題” 国際社会に乏しい警戒感

4月20日、パキスタンを訪問し、フセイン大統領(左)、シャリフ首相(右)と歓迎式典に臨む中国の習近平国家主席。この際、「シルクロード基金」の初の投資案件が決まった=イスラマバード(新華社=共同)

 昨年末で3兆8430億ドルと日本の約3倍に上る世界最大の規模を誇る中国の外貨準備。米国債を始めとする米ドル建て公的債券が運用先の過半だが、これをいかに分散させ、かつ投資効率を上げるかという点に習指導部は主眼を置いたようだ。シルクロード基金の規模は外貨準備高全体からみれば現段階ではまだ小さいが、有効性が確認されれば、スピーディーに大幅増額されることも考えられる。

 日本など先進国が中国も含む途上国向けに行っている政府開発援助(ODA)が政府予算から拠出され、経済支援を目的としているのに対し、中国の場合は世界第2の経済大国になってもなお自ら途上国であると称して、供与(グラント)要素の大きいODAなどではなく「収益目的」のインフラ建設に固執している。しかも、環境破壊も人権侵害も軍事転用もなんら国際的に監視される制度がない。

国家戦略実現へ猛威

 投資先第1号となるパキスタンの水力発電所は年内に着工して2020年稼働をめざす。建設資機材や発電用タービンの輸出、労働力の提供などは、中国企業がほぼ独占するものとみられている。中国のパキスタン重視は地政学的な理由からだ。

 中国は中東から輸入する石油はいずれパキスタンの港で陸揚げし、内陸を伝わるパイプラインで中国内に輸送することをもくろんでいる。シルクロード基金の最初の投資先にパキスタンを選んだのは、こうした経済的な戦略性に加え、インドへの牽制目的もあるパキスタンとの軍事協力拡大への道筋も見え隠れする。パキスタン以外でも中国からの原発や高速鉄道の洪水のような輸出が始まるだろう。

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