2015-06-02 本に必要な4要素のアンバンドリング
本を作り、ある程度 売ろうと思えば、次の 4要素が必要です。
1.コンテンツ
2.文章力
3.企画・編集力
4.販売力
コンテンツは中身で、それを言語化するスキルが文章力。
全体をどんな本にするか、メッセージを決め、ストラクチャーを考えて、タイトルや表紙を全体のメッセージに合わせ、市場にアピールする形に揃えていくのが、企画・編集力。
最後の販売力は、書店での販売力と、本人のブランドや訴求力の二つに分かれます。
とはいえ、ひとりで全てを持つ必要はありません。てか、そんな人いません。
下表のように、私(ちきりん)は「そこそこ面白いネタ」と「かなり上手い文章力」と「本人による“それなり”の訴求力」をもっていますが、
有名企業の経営者やトップスター、一流アスリートであれば、コンテンツの破壊力が抜群な上、本人の知名度も「日本中が知ってるレベル」ですから、文章力や企画編集力なんて自分でもつ必要は全くありません。
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(色が濃いほどレベルが高いことを意味します)
上の表で三段目にいるのは、下記の著者みたいに「息子 3人を全員、東大の医学部にいれた」みたいな人のことで、こういう場合、本人の知名度も全く問われません。それでも、けっこう売れたりします。
他にも(加害者であれ被害者であれ)たまたま大事件に遭遇した人とか、障害があったけど選挙に当選した、みたいな人もこのカテゴリーです。
「灘→東大理III」の3兄弟を育てた母の秀才の育て方posted with amazlet at 15.06.01佐藤 亮子
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このように、本を作って売るには 4つの要素が必要なのに、そのうちのひとつ、もしくはふたつしか持たない人だって出版を実現し、ベストセラーを出しているわけです。てか、寧ろそういう人の本の方が売れてます。
なぜかって?
足りない部分を補うプロのサービスが確立しているからです。
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つまり、
<強力なコンテンツ + プロの仕事> の方が、
<ひとりが 4要素すべてを、ちょっとずつ持ってる>
なんかより、できあがるものの質は高くなるんです。
だから本を出したいからといって、「一生懸命ブログを更新し、文章を書く練習をする」のがいいとは必ずしも言えません。
そんなことするより、なんらかコンテンツとしてインパクトのある経験を獲得しとくほうが、よほど役だったりするわけです。
もちろん、ビジネス書などノンフィクション分野とは異なり、いわゆる作家さん(フィクション・小説家)の場合は、販売力以外の大半を自分で持っている必要があるんでしょうけど。
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で、ここから電子書籍時代のセルフ出版(自己出版)の話なのですが、「誰でも本を出せる時代になった!」とかいって、
・自分の経験をコンテンツとして、
・自分で文章を書き、
・自分で本のコンセプトやメッセージを決めて、ストラクチャーし、
・自分の SNS で売る
みたいなことをしても、できあがった本は全く売れなかったりします。
ざっくり言えばその理由は・・・4つの要素が、どれも中途半端だから、なんじゃないでしょうか。
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換言すれば、「誰でも自分で本を出せる時代」ってのを、「本の製作と販売の全部を自分でやらなくちゃいけない時代」だと思い込まないほうがいい、ってことです。
たとえば、「自分は毎日ブログを書いてて、ブログ読者やツイッターのフォロアーもそれなりにいる。文章も書ける。でも自分の経験なんてタカが知れてる」と思うなら、
「自分の考え」なんかを本にするのは止めて
「なんかスゲーおもしろい人とか、スゲー強烈な経験をしてる人っていないの?」
みたいに、強力なコンテンツを持ってる人を探し、その人を取材して本を出したほうがいいと思う。
それが、下記でいう取材型のセルフ出版
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さらに、ごく普通の優等生として生きてきてユニークな経験も無いし、文章力もごく普通。だけどフォロアーは多いし、おもしろそうなモノに気が付く能力は高いというなら、二段目にあるような企画型のセルフ出版を試みて、「他者のコンテンツを、外部ライターに文章化」してもらえばいい。
さらには「企画自体も公募しちゃえ!」ってのが、三段目。ネットワークと影響力だけは持ってる、なら、これでもいい。
大事なのは、「すべてを自分ひとりで揃える必要は無い」ってことであり、「自分が持ってる中途半端なモノを 4つ集めるより、他者のでいいから一流のモノを探してきて 4つにする」ほうが、最終的な生産物の質が高くなるかも、という“発想の転換”をすること。
先日受けたデジタル出版機構の I Love ebook宣言 というキャンペーンのインタビューでも、そういう話をしてるんでご紹介。
→ ブログではなく、電子書籍で出版するメリット by ちきりん
まだまだ「めっちゃスゴイ」コンテンツで、言語化されてないモノはいくらでも存在します。
もし私が今 20才だったら(=今ほどの経験を持っていなければ)、自分のコトなんて書かずに、多分そっちを狙うんじゃないかな。っていうのが、“マーケット感覚 ” なわけです。
つい最近、電子書籍印税の総額が(ようやく)1000万円を超えました。過去数年の合計額なんで、まだウハウハって感じではないけれど、電子書籍元年から 3年でこれくらいなら、未来は決して暗くありません。
ただ、「てきとーなモノを、てきとーな文章で、てきとーに本をして、てきとーに売って」も売れないってことはわかっておいたほうがいい。
自分は何に集中すべきなのか、しっかり考えましょう。
そんじゃーね!