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【本紙前ソウル支局長公判】
引用先の朝鮮日報記者、出廷拒否 前支局長は「低俗な内容を加えて大統領の名誉を毀損した」
【ソウル=桜井紀雄】ソウル中央地裁で1日開かれた公判で、産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が主な引用元としたコラムを執筆した朝鮮日報の崔普植(チェ・ボシク)記者が証人出廷を拒否した。
同じ朴槿恵(パク・クネ)大統領の噂を扱いながら起訴されず、韓国内外から「公平性に欠く」と疑問視する声も上がっていたが、法廷の場で執筆の根拠を自らの口で説明することはなかった。
「自分のコラムと被告の記事は趣旨が違う。自分のコラムは大統領の国政運営で周囲が適切に対応せず、不必要な噂を生んでいると忠告する趣旨だった」
地裁に提出した欠席事由書で崔氏はこう弁明した。加藤前支局長のコラムについては「低俗な内容を加えて大統領の名誉を毀損(きそん)した」とし、「取材源を公開することはできない。見解は既に検察に明らかにしている」と、先月29日夜に唐突に欠席を通告した。
しかし、崔氏はコラムで、昨年4月の旅客船セウォル号沈没事故当日、朴大統領が7時間、対面報告を受けず、「誰かと会っていた」という噂があることを紹介。加藤前支局長はこのコラムに沿って記事を執筆しており、同コラムがなければ、名誉毀損に問われた記事も書かれることはなかったとの見方が出ていた。
加藤前支局長だけが在宅起訴されたことに、日本や欧米メディアの間では「韓国政府に批判的な海外メディアが狙い撃ちされた」との指摘が上がっている。韓国のメディア労組などが加盟する「全国言論労働組合」も声明で「バランスに問題がある」とし「政治権力の影響力が作用したとみられる」と批判していた。
裁判長は引き続き出廷を求めるが、4月に予定していた公判も「日本出張」を理由に欠席を通告し、延期されており、出廷の見通しは低いとみられている。