私はヘアケア用品を販売するメーカーの社員として、日々営業に勤しんでいる。まあそういう仕事柄、美容師と接する機会が多い。
表参道や青山、銀座などの最先端のエリアはもちろん、埼玉や栃木などの関東近県を担当している。そして、どの街に行っても美容師は自分たちのことを「バカ」と揶揄するのだ。
例えば営業に行った際、「今、インターネットでこういうのが流行っているみたいですよ」「Twitterとか、やってます?」などのアドバイスをすると仮定しよう。
ここで一般的な回答は、「教えて欲しい」か「興味がない」の二択であると思う。(サービスを使ってないと仮定して)
だが美容師は違う。
「まあ、僕たち美容師はバカですから。お客さんの髪切ってるだけでいいんですよ」と、思考を止めてしまうのだ。
しかも“僕”ではなく、“僕たち”と一括りにすることも特徴的である。
一体なぜなのだろうか。確かに日本の美容師は、ほとんど大学に進学していないようだ。美容師になるためには2年制の専門学校に行って、国家資格を取れば良いのだから。
だからと言って「僕たち、バカですから」と言ってばかりでは業界の士気を下げているようにしか思えない。そもそもお客からしたら、バカなやつに髪を切ってもらいたいなんて思わないだろう。
これまでの人生の中で、こんなにも自分たちのことを「バカ」という人たちは見たことがない。
美容という一つの専門知識については他の誰よりも知っているのに、それ以外のことにはまるで興味がないなんて勿体ないと私は思う。
仮に「頭が良い美容師」なんてジャンルの美容師がいれば、とても人気が出そうだ。そんな人がチラホラ出てきて目立ってきたら「美容師はバカだ」なんていう自分たちを蔑む人はいなくなるのではないだろうか。