児童ポルノはカルチャーじゃない–JKビジネスが流行るのは日本全体の意識の低さ
女子高生を商品化した「JKビジネス」や売春の現場、家庭内の虐待から保護された少女たちは、児童相談所の保護所で生活をおくることになります。孤立・困窮状態にある10代の少女を支援しているColabo・仁藤夢乃氏は、保護所内で職員が子どもに対して虐待を行っているケースをあげ、適切なケアが行われていない保護所の実体について語りました。(Colabo仁藤夢乃氏・外国特派員協会記者会見 より)
- スピーカー
- 一般社団法人Colabo 代表 仁藤夢乃 氏
日本は子どもの人権に対する擁護意識が低い
記者:先ほど児童買春、児童ポルノが野放しになっているというふうにおっしゃっていたんですけども、北米の状況とは違うわけです。ペドフィリア、子どもに対して性的興味を持つというのは精神病のひとつだと見られているので、そのようなものに関わった人たちは逮捕されるわけです。どうして日本と北米はこの状況が違うと思いますでしょうか。
仁藤夢乃氏(以下、仁藤):日本では昔から「そこで売られている子どもが悪い」とか「女性が悪い」というような認識のもと、法整備もできています。例えば売春防止法も、買春が悪いのではなく売春が悪いという考え方で、売る女の子たち、売る女性たちを取り締まろうというやり方で、日本はずっとやってきてしまっています。
そういう欧米での認識とは違う認識があるというか、少女たちを性の対象として見ることが「カルチャー」として受け入れられてしまっているという現状があります。それをポップな感じで紹介する海外メディアなんかも、やめてほしいなといつも思っています。
特に日本では、子どもに対する人権の擁護意識が本当に低いと思います。なので、子どもの夢を応援するという形、アイドルの見習いということで、児童ポルノのようなビデオがたくさん売られたり撮影されています。
ですけど、子ども自身はそれが将来どんなもの(になる)かというのが、今はわかってないわけですよね。乳首が透けるような肌色の水着を着てお風呂に入れるようなポルノの動画、そういうものが「児童ポルノ」として取り締まられずに、お店で普通に売っているという現状が日本にはあります。
記者:すばらしいプレゼンテーション、ありがとうございました。統計というか数字的な側面についての質問なんですが、いわゆるJKビジネスで働いている人のうち、実際には何%くらいが18歳未満かという統計はありますでしょうか。
あと、例えばそのスライドに映っている女性たちのうち、何割くらいが18歳未満だったり20歳未満だったりという調査はございますでしょうか。よろしくお願いします。
仁藤:そういう統計はまだ出ていませんし、検察も行政も調査はしていません。どのくらいの少女が18歳未満なのかというと、これは本当に(当該の話題の)時期や流れ、注目されれば(変わってくる)。
未成年というか16歳や14歳の子は、メディアで放送された日はいなかったりしますけど、だんだん話題が落ち着いてくると出てきたりすることもありますし、その時々によります。
だんだん規制が厳しくなってきたので、チラシ配りをしている女の子は18歳以上の子も増えてきています。でも、お店の中に16歳・15歳、中には13歳~14歳の少女を囲ってそういうサービスをさせているということも、実態としてまだ残っています。
少女がファミレスでバイトするような感覚で入ってくる
記者:2点なんですが、まず第1点が、最近はむしろ恵まれた家庭の娘さんがこういうJKビジネスをやるようになってきているというお話でしたけども、その理由は何だとお考えでしょうか。
第2点が、時間その他の関係で先ほどは説明していただけませんでしたが、児童相談所に保護されるとかえって虐待されるかもしれないということで、保護されることを恐れる少女たちがいるということでした。これは具体的にどういうことなのか。この2点、よろしくお願いします。
仁藤:まず「何も問題を抱えていない子が入ってきているのはなぜか」という1点目なんですけど、それは高校生の女の子の中でこういう仕事の危険性が知られていない、両親も知らない、皆さんも知っていましたか、ということなんです。
知らなくて、誰も大人に教えられていない。子どもたちの中では大人が知る前から流行っていて、口コミでも広まってますし、少女たちに馴染みのあるツールや文化の中に入ってスカウトや求人広告が出ています。
もうすぐ夏休みがまた来ますけど、夏休みになるとおそらく「女子高生人気ナンバーワンアルバイト」「一番稼げるアルバイト」というような広告が、少女たちの目に触れるブログやいろいろなところに載ってきます。
そういう危険を知らずに普通のバイト感覚、ファミレスやマクドナルドでバイトするのと同じような感覚で働いてしまっている。そういう危険性の認識がないということが問題です。
虐待で保護された子どもが保護所職員に怒鳴られる
仁藤:次に、一時保護所や児童相談所の保護の実態ということなんですけど、私が少女たちから聞いた事例ですと、よくあるのが「そこに保護されている子ども同士が目を合わせてはいけない」というルールや「名前を教えてはいけない」。
例えば仁藤夢乃という名前だったら「ゆめの」というところまでだったら言ってもいいけど「仁藤」はダメとか、そもそもお互いの私語が禁止されている状態だったり。そこで1週間2週間、長いと2ヶ月保護されて誰とも会話することなく過ごすということもあります。
あと「シャワーが3日に1回しか浴びられなかった」という話とか「歯みがきやトイレに行くときも施設の職員がついてきて監視をされている」監視カメラが付いているような状態だったり。
もっとひどいのは、1日に6時間くらい勉強させられたりするんですけど、そのドリルにちゃんと向き合って書いたりしていないのがわかると怒鳴られたり、内省という名目で個室みたいなところに隔離されて、パーテーションで仕切られた部屋でひたすら何時間もレポートをやらされるとか、反省文を書かされるとか。
もっとひどいのだと、親からの虐待があって保護されてきた子なのに、その子に対して「お前、なんでここで保護されてるかわかってるのか。落とし前つけろよ」みたいな形で職員が怒鳴るなんてことも、結構多く聞きます。
正直、児童相談所は職員の人数よりも予算、研修も十分に足りてないですし、職員が専門職ではないので、虐待に理解がないということもあるんですね。
保護の実態というのは、保護された少年少女たちから聞く声しかあがっていなくて全然表に出ていないんです。だからまだ問題にもなっていないという現状があります。
「正直、鑑別所に入ったときよりも嫌だった」なんて声も聞いたことがあります。ケアではなく管理になっているという状態があります。