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【社会】

過労死基準超 依然7割 残業時間、企業任せ

 本紙は、二〇一二年に大手百社を対象に実施した長時間労働の実態調査について、その後の改善状況を知るため再調査をした。その結果、厚生労働省の通達で過労死との因果関係が強いとされる月八十時間以上の残業を従業員に認めている企業が、前回と同じく七割に上った。国会で審議入りが予定される労働基準法改正案は、長時間労働をしても残業代や割増賃金を支払わなくてよい対象を広げる内容で、企業側の過労を防ぐ意識が一層重要になるが、長時間労働に依存した働き方は根強い。

 一二年四月に調査した東証一部売り上げ上位百社(一一年決算期、合併で現在は九十九社)を対象に昨年十一月、各本社所在地の労働局へ「時間外労働・休日労働に関する協定(三六協定)届」を情報公開請求した。

 今回開示された資料によると、「過労死ライン」の月八十時間以上の残業を認めている企業は、前回調査の七十三社から七十二社、月百時間以上も三十八社から三十七社と、ほぼ横ばいで改善は見られなかった。

 最長は関西電力の月百九十三時間。日本たばこ産業(JT)が百八十時間、三菱自動車が百六十時間と続いた。

 中部電力や大日本印刷など十二社が時間を引き下げ、逆に八社が引き上げた。東京電力は三年前より月五十時間以上も引き上げていた。

 今回の法改正の議論の中では、このように労働時間が高止まりする現状を危ぶむ労働者側代表者が、「法律による残業時間の一律規制」を主張したが、経営側が反対し、結論は見送られた。

 九十九社には今年一〜二月にかけてアンケートを実施した。残業時間を一律に規制することについては、回答した四十七社中二十八社が反対。十四社が賛成し、五社がどちらともいえないとした。日立製作所、丸紅、日野自動車などは「企業により働き方が多様である」ことを理由に一律規制に反対した。

 だが、企業の自主性に任せると、従業員を長めに働かせられるように三六協定を締結する傾向もあった。大和ハウス工業は「繁忙月にも労使協定の時間に収めて法令を順守するため、労働基準監督署に相談した結果」上限を引き上げたと回答した。将来的には引き下げる方針という。

 一律規制に賛成とした会社の中でも、コマツは「日本で大部分を占める中小企業への影響など国レベルで考える課題は多い」と指摘した。

 <三六協定> 残業を例外的に認めた労働基準法36条に定められた協定。同法で定める労働時間は1日8時間、週40時間。企業がこれを超えて労働者を働かせるには、労使合意に基づき書面で上限時間などを定めた協定を結び、労働基準監督署に届け出なければならない。協定には月45時間、年360時間までという上限があるが、上限を超えて働かせられる「特別条項」があり、これが健康や生命を害するほどの残業時間の高止まりにつながっている。

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