特 集
All Nations Returnees Conference
一つのからだ、多くの部分
帰国者たちの新たな旅立ち
国内ではなかなか救われない日本人が、ビジネスや留学で海外に行くと次々に救われていく。しかし一方で、彼らが帰国し、日本の教会に根付こうとすると、様々な要因から、その多くが教会からも信仰からも離れてしまう。キリストが救いに導かれた人々を日本の教会はどのように受け止めていけばよいのか。
埼玉県熊谷市にあるヘリテイジ・リゾートにおいて3月19―22日、帰国者のための集会、All Nations Returnees Conference(ANRC10)が開催された。テーマは「一つのからだ、多くの部分」。
外務省領事局の統計によると、2008年10月1日時点で諸外国に在留している日本人は111万6993人。うち永住者は36万1269人、長期滞在者(3カ月以上の在留者で永住者ではない邦人)は75万5724人となっている。この数は年々上昇しており、地域別では北米が最も高く約4割を占める。
ビジネスマンや留学生は、この長期滞在者に含まれるわけだが、彼らはなぜ、海外地で教会に通い始め、クリスチャンになるのだろうか。ANRC10のフォーラムではまず、この点の分析がなされた。
講師として立った金山梨花さんは、在日韓国人として東京で生まれ、アイデンティティの葛藤を抱きながら育ってきた。そして留学先の米国で、アメリカ人の友人に「自分が日本人なのか韓国人なのか分からなくなっている」と打ち明けたところ、「So What?(だから何?)梨花は梨花でしょ」と言われた。
その言葉で、それまでのこだわりや葛藤が吹っ切れたという金山さん。民族的なアイデンティティを超えた、個としての普遍的なアイデンティティを得たと証した。そしてその後、クリスチャンになった母親の強い勧めもあって教会に行くようになり、礼拝の中で「血肉ではなく、私の血だけをあがめなさい」という主の御声を聞いた。
「私はそれまで、ナショナル(民族的)なアイデンティティを満たすことができない者だったのですが、イエス・キリストが、ありのままの私を愛してくれて、十字架で私個人のために血を流して、命そのものを与えてくれた。それが分かったんですね。信じられたんですね」。涙で声を詰まらせながら、金山さんは語った。
この原体験から文化人類学の研究を志し、(1)アイデンティティ(2)文化(3)言語(4)スピリチュアリティの4つのコンセプトで研究を続けている。今回の講演では「異文化体験」がもたらすアイデンティティの変容について説明した。