「中国非難集会」を薄めるための巧妙な「仕掛け」
5月29日~31日まで、シンガポールで、アジア安全保障会議が開かれた。この会議は、アジア太平洋地域の国防大臣らがシンガポールのシャングリラホテルに集まって、地域の安全保障問題を話し合うことから、「シャングリラ対話」とも言われる。
ここ数年は、アメリカの国防長官が中心になって中国の軍事拡大を非難する場と化している。今年もカーター米国防長官が、最近中国が南シナ海で活発化させている岩礁の埋め立て工事について、強烈な非難を浴びせたのだった。
それで、中国はどう対抗したかと言えば、今年は巧妙な「仕掛け」をした。最大の「防御策」は、同じシンガポールでシャングリラ対話に先がけて、5月20日~22日まで、AIIB(アジアインフラ投資銀行)の第5回首席交渉官会合を開いたことだ。
AIIBは、いま話題のトピックなので、改めて解説するまでもないだろう。中国が主導して年末に北京に設立する「第2のADB(アジア開発銀行)」である。1966年に日米が中心になって設立したADBではアジアのインフラ需要に追いつけないという建前で、2013年10月に習近平主席が提唱した。これに現在まで57ヵ国が賛同し、6月下旬に北京で設立協定の調印式を行う予定だ。
中国からすれば、57ヵ国の代表が一堂に会するこのAIIBの首席交渉官会合を、絶妙のタイミングでシンガポールで開催することで、「中国はアジアに平和なインフラを造る主導者である」ということを、アピールしたかったのである。それによって、その翌週にシンガポールで行われる、いわば「中国非難集会」を薄めようという狙いだ。
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