博物館預託:資産隠しか 破産経営者、管財人に説明せず

毎日新聞 2015年05月29日 12時29分(最終更新 05月29日 13時14分)

 相続した国指定重要文化財などを博物館に寄託しているのに破産管財人に説明しなかったとして、東京地検特捜部が、破産した不動産会社「不二企業」(名古屋市)元代表取締役の女性(67)宅などを破産法違反(説明の拒絶)容疑で捜索していたことが関係者への取材で分かった。寄託された文化財の中には3億円で売却できた絵画もあり、特捜部は女性が資産を隠した可能性もあるとみて調べている模様だ。

 関係者によると、女性の父は不二企業を創業した高額納税者の資産家で1996年に死去した。女性が経営を引き継いだものの業績が悪化し、2011年に同社と女性は破産を申し立てられた。

 女性は父から複数の文化財を相続したが、管財人から所在の説明を求められた際に「知らない」などと回答した。その後の管財人の調査で、女性が文化財数点を京都国立博物館(京都市)に預けていたことが判明した。

 管財人はこのうち、ともに国指定重要文化財で鎌倉時代の歌仙図である「紙本著色三十六歌仙切(しほんちゃくしょくさんじゅうろっかせんぎれ)(是則(これのり))」と「紙本著色源宗于(みなもとのむねゆき)像」の絵画2点を今年2月にそれぞれ3億円、1億8600万円で文化庁に売却し、債権者への配当に充てた。今後、残り数点の文化財も売却手続きが進む見通し。

 寄託は所有権を保ちつつ博物館などに無料で預けられる仕組み。破産法は管財人から説明を求められた際、故意に隠すことを禁じている。【近松仁太郎】

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