東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 政治 > 紙面から一覧 > 記事

ここから本文

【政治】

在宅介護家族負担重く 認知症の負担社会で14兆円

写真

 認知症の人の医療や介護で社会全体が負担している費用は、二〇一四年時点で約十四兆五千億円に上るとの研究結果を厚生労働省研究班(代表・佐渡充洋(みつひろ)慶応大助教)が二十九日、発表した。このうち介護保険サービスとは別に家族が自ら行う介護や、仕事を辞めたことによる収入減などを費用換算すると、約六兆二千億円に相当する。

 厚労省によると、認知症のケアに掛かる費用の幅広い推計は初めて。国は介護保険財政の膨張を抑えるため、施設から在宅介護への移行を進めているが、家族負担の在り方を含めた対策作りが課題となりそうだ。

 研究班は、団塊ジュニア世代が八十五歳以上になる六〇年には、社会負担は約二十四兆三千億円に膨らむとも推計。佐渡助教は「限られた財源で患者や家族の生活の質をどう向上させるかが課題だ」と指摘している。

 厚労省によると、認知症の高齢者は一二年に四百六十二万人、二五年には六百七十五万〜七百三十万人に増えると推計されている。

 一四年の社会負担の内訳は医療費一兆九千億円、介護費六兆四千億円、家族が自ら行う介護などは六兆二千億円。医療費と介護費は患者のレセプト(診療報酬明細書)のデータなどから計算した。

 家族が行う介護などは、全国の医療機関や支援組織を通じ千四百八十二人を調査した。一週間の介護時間や内容を尋ね、介護サービスの単価を基に費用を算出。さらに介護のために働けない経済的損失を、性別、年代別の平均賃金を参考に足し上げた。

 介護費の内訳は特別養護老人ホームなどの施設に入っている場合が一人当たり年間三百五十三万円。これに対し、在宅での介護サービス利用は二百十九万円、家族が行う介護は三百八十二万円で、合計すると施設よりコストは高かった。

 研究班によると、調査手法は異なるが、英国の一三年の社会負担は約三兆九千億円、米国では一〇年に約十七兆五千億〜約二十四兆円との推計もある。

 

この記事を印刷する

PR情報