追い込み漁で畠尻湾内に駆り立てられたバンドウイルカの群れ=2013年9月、和歌山県太地町【拡大】
いわば、多勢に無勢。日本側は弱みに付け込まれた格好だ。JAZAの対応については「『人質』に取られては打つ手はなかった」(産経)、「国際的な孤立を避ける上でやむを得ない選択」(毎日)など、同情する社説が多かったのも事実だ。だが、政府を含め、成り行き任せだったとすれば猛省が必要だろう。
◆問題は、今後の対応だ。
太地町の地元漁協は、今回の決定に反発しつつも、追い込み漁そのものが禁止されたわけではないとして、操業はこれまで通り続けるという。従来よりも小さな群れを選ぶなどの配慮をし、伝統漁法の継続に向けて理解を求めていく考えだ。
和歌山県によると、昨期に捕獲した鯨類937頭のうち、生きたまま水族館などに販売されたのは84頭。漁協側は「操業に影響はない」としているものの、先行きへの不安は、やはり隠しきれない。
一方、イルカを飼育しているJAZA加盟施設の中には、今回の決定を死活問題と捉え、脱会を検討し始めたところもある。ショーを集客の目玉にしている施設は少なくない。
水族館はテーマパークや遊園地などと並んで、家族連れを中心に日本では根強い人気がある。イルカの調達が難しいとなれば、影響は大きい。
朝日は「海外を中心にイルカ漁に厳しい目が向けられているのも事実だ」と指摘。「新方針に沿った対応」として「人工繁殖に本格的に取り組むこと」を提言している。読売と毎日も同様の指摘をしている。
◆攻勢強める反捕鯨
だが、問題は「米国では、水族館生まれのイルカが7割を占めるのに対し、日本は1割余りにとどまる」(読売)ことだ。繁殖にはノウハウの取得もさることながら、ショーとは別の専用プールが必要になるなど、費用もかさむ。「小さな水族館では取り組みが難しい。実績のある水族館を中心に連携し、行政も支援を考えてほしい」(朝日)