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【正論】
伝統イルカ漁こそ海との共存だ 動物行動学研究家、エッセイスト・竹内久美子
≪「アンチ・ザ・コーヴ」を≫
日本の捕鯨発祥の地とされる太地町で、人々は400年も前からイルカに感謝しつつ生きてきた。肉だけでなく骨も皮も利用する。また人々の姓には「海」「磯」「浜」「漁」といった字がよく使われている。ちなみに現在の漁業組合長は「脊古(せこ)」さんという。別の字で「背古」「世古」もあり、クジラを追い立てる役の意だ。
このように太地町自体が世界に誇れる日本の文化なのであり、人間はここまで自然と共存することができるという見事な例である。
今回、WAZA、JAZA、双方に圧力をかけてきたのは反捕鯨団体であり、一連の問題の核心はこれらの団体とその周辺にありそうだ。特に太地町で撮影され、2009年に公開された映画、「ザ・コーヴ」(コーヴは入り江の意)は、隠し撮り、やらせ、捏造(ねつぞう)などが満載であるにもかかわらず、翌年にアカデミー賞の長編ドキュメンタリー映画賞を受賞。イルカ追い込み漁を悪とする世界的キャンペーンとなってしまった。
われわれは反捕鯨団体の動きを封ずるために、とにかく真実を世界に伝えることが大切だろう。そのためには太地町の人々の本当の暮らしを、それこそ「アンチ・ザ・コーヴ」として公開することも有効な方法ではないだろうか。(たけうち くみこ)