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<小笠原沖地震>エレベーター停止1.3万台 首都対策急務

毎日新聞 6月1日(月)8時0分配信

 30日夜に小笠原諸島西方沖で発生し、関東地方1都6県で最大震度5強〜4を観測した巨大地震で、高層ビルやマンションで停止したエレベーターは関東を中心に少なくとも約1万3000台に上ったことが、各管理会社のまとめで分かった。国は、地震でエレベーターが停止した場合の避難などソフト面の対策を民間任せとしており、首都直下地震対策でも、大勢の人が高層階に足止めとなる事態への対応はほとんど示していない。専門家は「民間に任せず、国として対策を急ぐべきだ」と指摘する。

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 大手エレベーター管理5社のうち、三菱電機ビルテクノサービスは約7000台、日立ビルシステムは約6000台の停止を確認。フジテックも停止を確認しており、さらに増えるとみられる。三菱などによると、各社で定める震度5弱〜3程度の基準を超えた揺れを感知すると最寄り階で止まる管制装置が作動した。国土交通省によると、閉じ込めは関東で8件だった。

 首都圏で約6万4000台が停止し、閉じ込めが78件に上った2005年の千葉県北西部地震をきっかけに、国はハード面の対策に取り組んだ。08年の法改正で、エレベーターの安全性を向上させたうえで停止する揺れの強さを引き上げたり、管制装置の設置義務化を定めたりした。

 今回、六本木ヒルズ(東京都港区)では、52階の展望フロアへのエレベーターが停止。100人以上が一時取り残され、従業員の誘導により非常用エレベーターで降りた。また、東京都庁(新宿区)では45階の展望室につながる専用エレベーター2台が停止。都によると発生約50分後、職員が約250人を誘導し、別のエレベーターが動いていた32階まで階段を下りて避難させた。だが六本木ヒルズが高層階に長時間足止めとなった時のため備蓄などの対策をマニュアルで定めているのに対し、都にはこうした対策がないという。都の担当者は「来訪者が安心して過ごせる方法を考えなければならない」と話す。

 首都直下地震(マグニチュード7級)の国の被害想定では、停止台数は約3万台に上る。だが同地震でのエレベーター対策は、今年3月に決定した緊急対策推進基本計画で「安全対策を進める必要がある」とした程度だ。政府関係者は「火災や重病者の発生など緊急事態を除き、高層階で取り残された人々の安全確保は施設管理者の責務とするのが基本的な考えだ」と説明するが、帰宅困難者については民間団体などと対策会議を設置しており、エレベーターとは温度差がある。

 東大地震研究所の古村孝志副所長は、エレベーター点検に国家資格があることを踏まえ、「エレベーター管理会社が対応できない場合に備え、停止したら施設の管理者が動かせるよう資格取得の規制緩和をするなど、国も対策を急ぐべきだ」と話した。【狩野智彦、竹内良和】

 ◇関西でも同じ事態予想

 高層ビルが多い関西の都心でも強い地震の際には同じ事態が予想される。

 30日は大阪市内も最大で震度2を観測。あべのハルカス(60階、同市阿倍野区)では最上部の展望台用エレベーター2台が止まった。広報によると、閉じ込められた人はおらず、展望台の客は36階まで階段で下り、別のエレベーターを使った。大阪府咲洲(さきしま)庁舎(55階、同市住之江区)でも展望台の上りエレベーターが停止したという。【小林慎】

最終更新:6月1日(月)9時17分

毎日新聞