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2015年05月31日 Sun
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英語版『ボーナンザ』の交換ルール

要約:英語版『ボーナンザ』は原文(ドイツ語)ルールと交換ルールが異なっている。おそらく Rio Grande Games が独自に改変したものだろう。また、日本語版は原文ルールがベースとなっている。

※日本語版『ボーナンザ』を原文(ドイツ語)ルールでプレイする場合の修正点はこのページの一番下にまとめた。時間のない人はその部分だけ読めば十分である。


■日本語版に記載されていない交換ルール

Twitter 上で『ボーナンザ』日本語版に記載されていない交換ルールが存在するという Tweet を見かけた。

「ボーナンザ、このページにある「日本語版ルールには明記されていませんが、めくられた2枚のカードを全く使わずに【手札のカード同士を交換することもできます】これによって、手札の邪魔なカードをうまく処理することができます」って重要じゃないか。
http://t.co/EnUy3OrbdP
https://twitter.com/JSS_sa_ra/status/604534838482247680

以下は上記 Tweet リンク先の Hammer Works のページより引用。

「 ● 交換と贈与
 日本語版ルールには明記されていませんが、めくられた2枚のカードを全く使わずに、手札のカード同士を交換することもできます。これによって、手札の邪魔なカードをうまく処理することができます。」
●ボーナンザ – ルールに関するお話 - Hammer Works on the web
http://www4.plala.or.jp/hammer/board/bohnanza/bean_rules.html

その後、他の Tweet で英語版『ボーナンザ』のルールブックにそのような記述があることを知った。

「英語版ルールにはちゃんと「the two face up cards and/or cards from his hand」って書かれてる! しかも交換と寄贈の両方に / http://t.co/9hFNOtYgTo
https://twitter.com/koge2do/status/604589625848401920

こちらのリンク先は英語版『ボーナンザ』のパブリッシャーである Rio Grande Games の Web サイト。このページの右上「Download Game Assets」から英語版ルールブックの PDF がダウンロードできる。
●Bohnanza - Rio Grande Games
http://riograndegames.com/Game/36-Bohnanza
[PDF] http://riograndegames.com/getFile.php?id=535

たしかに英語版ルールブック「2. Draw, trade & donate bean cards」項には

「Rules for trading/donating:
 - Each trade must involve the active player and one other player. The non-active players may not trade amongst themselves.
 - The active player may trade/donate the two face up cards and/or cards from his hand.」

と書かれている。

■Rio Grande Games のルール改変

さて、ここまでの情報を確認したところで、わたしは「英語版ルールは原文(ドイツ語)ルールから改変されているのではないか」と思った。

というのも、2000年前後の Rio Grande Games はユーロゲームの英語版を出す際にルールを改変することがしばしばあったからだ

例えば『ノミのサーカス』の10種10点ボーナス『クランカー』の換金『コルサリ』のスコアリングなど。

■原文(ドイツ語)ルールはどのように書かれているのか

原文(ドイツ語)ルールを確認しよう。下記リンク先ページ右下から各国語のルールブック PDF がダウンロードできる。ドイツ語はもちろん、英語、日本語ルールブックもダウンロード可能だ。

●Bohnanza - AMIGO Spiel + Freizeit GmbH
http://www.amigo-spiele.de/artikel-107900.html
●[PDF] http://www.amigo-spiele.de/download/download.php?section=rule&file=107900_DE&title=Bohnanza_DE

原文ルールブック「2. Phase: Handeln und Schenken」項の英語版ルールブックと同じ箇所には

「Grundsätzlich gilt:
 - Ein Handel ist nur mit dem Spieler erlaubt, der an der Reihe ist. Neben den beiden aufgedeckten Karten darf dieser Spieler auch Karten aus der Hand anbieten. Dabei spielt die Reihenfolge der Karten keine Rolle.」

と書かれている。

和訳すると

「一般的に:
 - 交換は手番プレーヤーのみに許可されている。表向きになっている2枚のカードに加え、手番プレーヤーは自分の手札からカードを提示することもできる。カードの並び順は問わない。」

となる。

英語版ルール「Rules for trading/donating:」には箇条書きで二つのことが書かれていた。

一つ目は「それぞれの交換は手番プレーヤーと他のプレーヤー1人で行わなくてはならない。手番以外のプレーヤーどうしで交換を行うことはできない」。二つ目は「手番プレーヤーは自分の手札のカード および/または 表向きになっている2枚のカードを 交換/贈与 することができる」。

しかし原文ルールの交換ルールは「および/または」ではなく、あくまで「表向きになっている2枚のカードに加え」である。つまり、自分の手札のカードのみを交換することはできないのである

ただし、贈与については英語版ルールと同様に「手札のみ」「表向きになっているカードのみ」「その両方」での受け渡しが可能である。

原文ルール:

「Der Spieler, der an der Reihe ist, darf allen Mitspielern Karten aus seiner Hand oder Karten, die er vom Zugstapel aufgedeckt hat, schenken.」

上記の和訳:

「手番プレーヤーは、手札、または山札から表向きにしたカードを、他のすべてのプレーヤーに贈与することができる。」

英語版:

「The active player may donate the two face up cards he drew or cards from his hand.」

日本語版:

「手番プレーヤーは、手札と山札からめくったカードを贈与することができます。」

※日本語版では「手札“と”山札からめくったカード」になっているが、これは “or” の意味だとかんがえるのが自然だろう。この文脈で「手札と山札からめくったカードを必ずセットにしなければ贈与することはできない」と認識する可能性は低い。正確に表現するならば“または”を使ったほうがよいが、その場合は「どちらか片方だけしか贈与できないのか」という誤解が生じる可能性もある。「A または B またはその両方」と書けば誤解は生じないだろう。

■日本語版は原文(ドイツ語)ルールがベース

では日本語版ルールブックの交換ルールはどうなっているのか。こちらも確認しよう。前述の AMIGO 社のページか、またはメビウスゲームズの Web サイトからダウンロードできる。

●[PDF] http://www.amigo-spiele.de/download/download.php?section=rule&file=107900_JP&title=Bohnanza_JP
●[PDF] http://www.mobius-games.co.jp/PDF/Bohnanza.pdf

レイアウトの都合上、原文ルールブックとはやや配置が異なっているが、該当箇所は以下のとおり。

「・手番プレーヤーは交渉の際、手札のカードも交換材料に加えて出すことができます。」
「・全てのプレーヤーは、手番プレーヤーに対してのみ、交換を行うことができます。手番プレーヤーが関与しない交換はできません。」
「プレーヤーは手札のどの位置にあるカードでも、交換材料とすることができます。」

項目はそれぞれ分かれているが、合わせれば原文ルールと同じ内容である。

■原文ルールで「手札のカードのみ」交換ができない理由は?

「手札のカードのみ」で交換ができず「表向きになっている2枚のカードに加え」となっている理由はなんだろうか。

ここから先は想像だが、一番の理由はプレイ時間の短縮だろう。表向きになっている2枚のカードを軸とした交渉に手札を追加できる、という縛りによって5人プレイでも公称プレイ時間45分のゲームになっているのだと思う。

『ボーナンザ』は使用するカードが104枚(トランプの約2倍)と多く、1回の手番で手札を3枚補充するため、手札が10枚を超えることもある。もし手札のみでの交換が可能になった場合は組み合わせパターンが多すぎて交渉に時間がかかってしまうかもしれない。

■英語版ルールで「手札のカードのみ」交換を可能にした理由は?

Rio Grande Games によるルール改変は「複雑なルールをシンプルにする」という法則があるように思える(詳しくは前述の3タイトルを参照)。なので『ボーナンザ』の場合は交換のカード制限を贈与と統一することでルールを少なくしたのではないかと推測する。

では、プレイ時間が伸びることについてはどう考えているのだろう。英語版ルールも公称プレイ時間45分と書かれているが、これについてはあまり気にしていないのかもしれない。というのも、英語版には最初から拡張セットが含まれているので、本来ならば拡張セットの公称プレイ時間「60分」を併せて記載する必要があるからだ。
●Bohnanza Erweiterungs-Set - AMIGO Spiel + Freizeit GmbH
https://www.amigo-spiele.de/artikel-101902.html

■Hammer Works のページについての補足

最後に Hammer Works のページに書かれているその他の項目について補足しておこう。


 「● マメをまく
 マメをまく順番は、各プレイヤーが好きに決めることができます。換金はいつでもできるので、うまく換金すればより多くのマメを集めることができます。 」
●ボーナンザ – ルールに関するお話 - Hammer Works on the web
http://www4.plala.or.jp/hammer/board/bohnanza/bean_rules.html

これは単なるルールの補足だろう。日本語版ルールブックはレイアウトの都合上、「行動3:豆をまく」の進行例が削られているため、任意の順番で豆をまくことができるかどうか明確に示されていないのだ。

原文および英語版ルールでは「Beispiel 4:(example 4:)」として以下のとおり書かれている。

「Sojabohne(12) 1枚と Gartenbohne(6) 1枚 をめくったあと、Uwe は その Sojabohne(12) に手札から Blauen Bohne(20) 1枚を加え、Volker の Rote Bohne(8) 1枚と交換しました。そして、めくられたもう1枚の Gartenbohne(6) については残しておくことにしました。彼はこれら2枚の豆カードを配置しなければなりません。最初に彼は  Rote Bohne(8) を1つ目の畑に配置しました。続けて、Gartenbohne(6) を2つ目の畑に配置しました。」


「 ● ゲームの終了
 ルールの改正があったらしく、終了条件が多少変わっているようです。以前は、山札が3回なくなったらその時点でゲームが終了するようになっていました。
 改正後は、交換と贈与のときに山札がなくなった場合は、交換と贈与を行い、マメをまいたあとでゲームが終了します。」
●ボーナンザ – ルールに関するお話 - Hammer Works on the web
http://www4.plala.or.jp/hammer/board/bohnanza/bean_rules.html

これはたしかに原文ルールに記載されている。原文ルールがどのタイミングでアップデートされたのかはわからない。あるいは日本語版ルールブックの単なるエラッタかもしれない。

日本語版ルールブックには「3回目の山札がなくなったら、直ちにゲーム終了です。」とだけ書かれている。しかし、原文ルールには以下のとおり書かれている。

原文ルール:

「Wird der Zugstapel während der Phase „Handeln und Schenken“ eines Spielers zum dritten Mal aufgebraucht, werden die Phasen „Handeln und Schenken“ und „Bohnen anbauen“ noch zu Ende gespielt. Wird der Zugstapel während der Phase „Neue Bohnenkarten ziehen“ zum dritten Mal aufgebraucht, ist das Spiel sofort beendet.」

上記の和訳:

「3回目の山札が『行動2:交換と贈与』でなくなったら、『行動2:交換と贈与』と『行動3:豆をまく』まで行います。3回目の山札が『行動4:豆カードを引く』でなくなったら、直ちにゲーム終了です。」


ここで注意しなければならないのは、Hammer Works のページに続けて書かれている

「このとき、めくられたカードが 1枚の場合でも、1枚だけめくって交渉を行います。」

は原文ルールに書かれておらず、英語版ルールにのみ存在する記述であるという点だ。

英語版ルール:

「The game ends when the draw deck is exhausted for the third time. If this occurs during step 2, the game continues until the end of step 3 for the currently active player. If there are not enough cards for him to draw two, he draws just one. If this occurs during step 4, the game ends immediately.」

では、原文ルールの場合、どのような処理を行うのだろうか。「4. Phase: Neue Bohnenkarten ziehen」項には以下のとおり書かれている。

原文ルール:

「Wird der Zugstapel in dieser Phase oder in der Handelsphase leer, dann wird der im Laufe des Spiels entstandene Ablagestapel gemischt und zum neuen Zugstapel.」

上記の和訳:

「山札がこのフェイズ(『行動4:豆カードを引く』)または『行動2:交換と贈与』でなくなった場合、捨て札の山のカードを混ぜ、新たな山札をつくります。」

この指示に従うならば、3回目の山札が残り1枚で『行動2:交換と贈与』をむかえた場合は、4回目の山札を作って不足分の1枚をめくると考えるのが自然だろう。


「あと、英語版のルールでは同点のときのタイブレーカーがあります。同点の場合は、最も手札の多いプレイヤーが勝利します。 」
●ボーナンザ – ルールに関するお話 - Hammer Works on the web
http://www4.plala.or.jp/hammer/board/bohnanza/bean_rules.html

これは Hammer Works のページに書かれているとおり英語版ルールにのみ存在する記述である。

英語版ルール:

「If two or more players tie with the most gold coins, the player with the most cards in his hand, among those tied with the most gold coins, is the winner.」

原文ルールには書かれていない。

原文ルール:

「Die Karten auf der Hand zählen nicht mehr. Wer danach die meisten Bohnentaler besitzt, hat gewonnen.」

上記の和訳:

「手札のカードはもはやカウントしません。もっとも多くの豆ターラーを獲得したプレーヤーが勝者です。」

■日本語版『ボーナンザ』を原文(ドイツ語)ルールでプレイする場合の修正点

ここまでの内容を整理すると、

  • Rio Grande Games の英語版ルールは Hammer Works のページに書かれているとおりだが、それは原文ルールとは異なる。
  • 日本語版『ボーナンザ』は原文(ドイツ語)ルールをベースに書かれている。
  • 原文ルールと日本語版の相違点は「ゲーム終了」項の
    日本語版:「3回目の山札がなくなったら、直ちにゲーム終了です。」

    原文ルール:「3回目の山札が『行動2:交換と贈与』でなくなったら、『行動2:交換と贈与』と『行動3:豆をまく』まで行います。3回目の山札が『行動4:豆カードを引く』でなくなったら、直ちにゲーム終了です。」
    になっていること。

となる。