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統合失調症予防の施設 浜医大が全国初

統合失調症の発症メカニズムを説明する森教授=浜松市東区の浜松医科大で

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 幻聴や妄想に悩まされる統合失調症は、十代後半から三十代前半に発症しやすく、遺伝する可能性も高いとされる。浜松医科大精神神経科(浜松市東区)は八月にも、遺伝の可能性がある未発症者を定期的に診断し予防や治療に役立てる全国初の「統合失調症予防センター」を立ち上げる。同科の森則夫教授は「未発症の近親者の発症因子を観察することで、予防プログラムの確立に努めたい」と話している。

 統合失調症は、胎児の時期に遺伝子の塩基配列の変化やウイルス感染、母体への精神的ストレスなどが絡み合って発症因子ができる。発症因子は出生時には存在しているにもかかわらず、二十歳前後まで発症しないケースがほとんどで、発症の原因などは分かっていない。近親者に患者がいる場合、発症の確率は十倍高くなるという。

 センターは、両親や兄弟など二親等以内に患者を持つ未治療者を公募。脳内の異常を察知すると増殖するタンパク「ミクログリア」を陽電子放射断層撮影(PET)で計測し、血中内の分泌量も測定する。集中力や記憶力などの認知心理学検査も行って精神状態も把握する。発症の兆候を見つけるため、診断は半年ごとに繰り返す。本人と家族の了解が得られれば、抗精神病薬を使った臨床試験も実施する。

 森教授は自閉症患者のミクログリアをPET計測し成果を挙げていたことから統合失調症にも応用。発症直後の患者の脳内ではミクログリアの70〜80%が活性化していることを突き止めた。さらに動物実験で詳しく調べた結果、症状が現れるタイミングで活性化することが確認できたという。

 森教授は「ミクログリアが活性化することで脳細胞の障害が進行し、それが一定のレベルに達すると幻聴や妄想が出現することが考えられる」と説明。未発症者から詳細なデータを集め、予防法や治療薬の開発につなげたいという。

 大阪府立精神医療センターと共同で実施するが、未発症者の協力を得られやすくするため、そのほかの専門医療機関にも参加を呼び掛けている。

<ミクログリア>脳内の免疫を担当する細胞の一種。活性化すると脳細胞の障害を引き起こし、統合失調症、うつ病などを発症する。活性化が一定のレベルに達すると逆に脳細胞を保護する働きを持つ。

<統合失調症>幻聴や妄想、自発性低下や感情平板化などの症状が出る精神疾患。人口の約1%が発病するといわれ、遺伝と環境の両方の要因が発症に関与していると考えられている。発症者の子供は13%、きょうだいでは9%に発症率が高まるとの研究報告がある。

 

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