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中韓首脳会談:韓国はなぜ戦略的に失敗するのか

今日の横浜北部は昼前から晴れてきまして、午後はスッキリ快晴に。日差しは真夏ですね。

さて、この記事を書いている現時点で、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が中国を訪問中です。この話題について少し。

韓国の歴代大統領は、就任してからまず同盟国であるアメリカや日本に先に訪問するのが建国以来の「恒例」になっていたわけですが、朴大統領はアメリカの後に、今回初めて中国を訪問しております。

(FNNより)
※参考記事※
http://sankei.jp.msn.com/world/news/130627/kor13062707300000-n1.htm

このような動きというのは、普段、国際政治を分析する者にとっては、少々不可解な動きに見えます。

というのも、普通の地政学の考え方からすれば、韓国は今まで通りに、アメリカと日本との安全保障的な結びつきを強め、北朝鮮を牽制しながら、中国を警戒するような動きを見せなければならないわけです。

ところが今回は、中国に積極的にバンドワゴニング(追従)する姿勢を見せております。このようなことはなぜ起こったのでしょうか?

これについて参考になるのが、本ブログをご覧の皆さんにはすでにおなじみの、来月の末に新刊として出る予定の『自滅する中国』という本の中で展開されている、戦略家エドワード・ルトワック氏の分析です。

ということで今日はこのルトワック氏の韓国の戦略状況の分析の要点をご紹介。

ルトワック氏によれば、韓国の戦略状況は以下の要点にまとめられることになります。

===

●国家は普通は独立を尊ぶものだが、従属したがる国もある。それが韓国だ。

●彼らは中国と中国人にたいして、文化面で深い敬意を持っている。
中国の「マーケットの将来性」にもその原因がある。

●韓国における中国と中国人への尊敬の念は明の時代にまでさかのぼることができる
その一番の担い手は、知的エリートとしての官僚である両班だ。

●面白いことに、中国文化の影響が非難されるのは北朝鮮
北では漢字は事実上禁止され、ハングルの使用だけが許されているほど。

●韓国では教育水準が高ければ高いほど反米の傾向が強まる。
 しかも最近はアメリカが衰退していると考えられているために、
 中国の重要性のほうが相対的に高まっている。
 個人で中国でビジネスを行っている人が多いという事情もある。

●極めて奇妙なことに、韓国は大規模な北朝鮮の攻撃を抑止するのは、
 グローバル規模の軍事力を持つアメリカの役目だと考えられており、
 実際に天安沈没事件や延坪島の砲撃事件にたいしても
 (死者が出たにもかかわらず)ほとんど報復は行っていない。

●つまり実際のところ、韓国政府は米国と中国に依存する
 従属者
となってしまっている。
 米国には全面戦争への抑止力、そして中国には
 一時的な攻撃にたいする抑止力を依存しているのだ。

●ところがこれは、アメリカにとって満足できる状況ではない。
 韓国を北朝鮮から庇護するコストとリスクを、
 アメリカは独力で背負わなければならないからだ。

●その上、韓国への影響力は中国と折半しなければならない。
 中国は北朝鮮への統制を中止すると脅かすことで、
 常に韓国政府を締め上げることができる
からだ。
 今のところ韓国が中国に声を上げることはない。

●米韓同盟を形成しているものが何であれ、
 そこには共通の「価値観」は含まれていない。
 なぜなら韓国はダライラマの入国を中国に気兼ねして
 堂々とビザ発給を拒否
しているからだ。

●現在のような政策を保ったままの韓国は、いわゆる「小中華」の属国として、
 しかも米韓同盟を続けたまま、中国による「天下」体制の一員
 となることを模索
しているのかもしれない。
 韓国が自国の安全保障のコストとリスクを受け入れず、
 かわりに従属者になろうとしているのは明らかだ。

●このような韓国の安全保障の責任を逃れようとする姿勢は、
 「日本との争いを欲する熱意」という歪んだ形であらわれている
 ところが日本との争いには戦略的に何の意味もないし、
 日本へ無理矢理懲罰を加えても、韓国側はリスクを背負わなくてすむのだ。

===

いかがでしょう。

このルトワックの分析の要点をさらに簡潔にまとめれば、

1、米国に従属している韓国は、同時に中国にもすり寄っていこうとしている。

2、その大きな理由は二つ:歴史的・文化的な面での尊敬と、ビジネスのチャンスだ。

3、安全保障面では、北のコントロールを中国に、そして前面戦争の抑止は米国に依存。

4、その責任逃れの憂さ晴らしとして、日本にたいする情熱的な敵対心を展開。

となります。

アメリカ人がこのような分析をするというのは意外な感じがしますが、ルトワック自身はこの韓国の戦略を「大間違いを犯している」として非難しております。

もしこの分析が正しければ、韓国はこれから米中を両天秤(ヘッジング)にかけながら、その不満を日本に向かって吐き散らしていくという、今の構図がますます強まるのかもしれません。

しかし、果たしてこのような政策を韓国はいつまでも続けていけるのでしょうか?

ということで今後の韓国と中国の動きにますます注意していきたい今日このごろです。

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