露大統領:「平時の戦死」国家機密に追加
毎日新聞 2015年05月31日 18時39分
【モスクワ杉尾直哉】ロシアのプーチン大統領は5月28日、国家機密に関する1995年の大統領令を変更し、新たに「平時に実施された特殊作戦の人的損失」を国家機密に追加したと発表した。タス通信などが伝えた。これまで機密に含まれていた「戦時の人的損害」に加え、「平時の戦死」の公表も処罰の対象となった。
ロイター通信によると、米国務省のラスキー報道部長は「ロシア軍の現役兵がウクライナ東部で戦い、死亡しているという誰でも知っていることを隠蔽(いんぺい)しようという工作だ」と批判、報道の自由が制限されることへの懸念を表明した。
ロシアのペスコフ大統領報道官は、大統領令の変更について「ウクライナとは関係ない。(ウクライナへの軍事介入も)考えていない」と述べた。ロシアはウクライナ東部への軍事介入を一貫して否定している。
だが、今年2月に暗殺されたロシアの野党指導者ネムツォフ元第1副首相の支持者が5月12日、「昨年から今年にかけてウクライナ東部での戦闘で200人以上のロシア兵が戦死した」との報告書を公表し、ウクライナ政府などに情報を提供した。さらに同16日にはウクライナ東部ルガンスク郊外で監視活動中に戦闘で負傷し、ウクライナ軍に拘束されたロシア人2人が「自分たちは現役のロシア軍兵士」と取り調べやメディアの取材で語っていた。「軍の介入疑惑」が強まっていることを受け、プーチン政権が国家機密を拡大した可能性がある。