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砂防ダム内の空き家撤去 京都、不法占拠を半世紀黙認

砂防ダム内で進められている空き家の撤去作業(22日、京都市北区衣笠・紙屋川)
砂防ダム内で進められている空き家の撤去作業(22日、京都市北区衣笠・紙屋川)

 京都市北区衣笠の紙屋川の砂防ダム内に住宅が密集して建っている問題で、京都府が所有者不明の空き家の本格的な撤去に乗り出している。昨年に2戸を解体したのを皮切りに、今年は秋までに7戸を撤去する予定だ。住民の安全確保と「不法な占拠状態」の解消が目的で、具体的な作業が動きだしたことで、移住に否定的だった住民の中には、転居したり、移住を検討する声も出始めている。

 砂防ダムは1953年に建設された。完成直後から住宅が建ち始め、府の2013年度の調査によると28世帯54人が生活する。多くは在日コリアンの人々で高齢化が進む。ダム内は、河川法上、住宅などの占有が認められていないため、不法占拠に当たるが、河川を管理する府は50年以上にわたって、事実上、居住を黙認してきた。

 しかし、12年7月の集中豪雨で、大半の家屋が浸水したのを機に、危険性がクローズアップされ、府と京都市、国が協議会を設置し、立ち退き要請も視野に入れ、対策を進めている。

 府による家屋の解体は、所有者不明の空き家が対象。撤去を求める警告文を一定期間、建物に貼り付けた上で、所有を名乗り出る人がいない場合、実施する。昨年は約500万円をかけ、6月に1戸、11月に1戸を撤去した。今年は、約2千万円をかけ、6月までに4戸、秋にも3戸を撤去する予定という。

 一方、ダム内で生活を続ける住民に対して、府は長年の経緯を考慮して、今のところ立ち退きを求めていない。住民側も、府が対策に乗り出した直後は、立ち退きを拒絶していた。

 しかし、最近になって、重機による撤去作業を目の当たりにして、浸水被害を受けた住民が、ダム外へ転居したケースもある。

 移住を検討し始める住民もいる。50年ほど前から住み、現在はダム内に家族3人で暮らす男性(77)は「最初は立ち退くつもりはなかったが、河川内なので(移住するしか)仕方ないかと思う。12年の大雨で身の危険も感じた」と話す。ただ、「早く出て行ければいいのだが、行き先がなくどうしようもない」と不安も隠さない。

 今後の対応について、府砂防課は「長年の経過があるので、対話を重ねて解決の道を探りたい」としている。

【 2015年05月31日 11時59分 】

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