東日本大震災の被災地での復興予算について、政府が16年度から5年間の考え方を示した。

 15年度までの5年間は全額を国費でまかなってきたが、これを改め、一部の事業で被災自治体にも負担を求めるのが柱だ。

 津波被災地での高台移転や被災者の生活支援、除染など原発事故への対策は引き続き国が全額を出す。一方、地域振興や防災など全国に共通する事業には地元負担を導入する。

 復興の進展と事業内容に応じて、地方にも段階的に負担を求めていくことは必要だろう。

 復興予算は当初5年間で26兆円を超え、次の5年でも6兆円程度が必要になる見通しだ。当初5年分は所得税などの臨時増税を中心に手当てしたが、次の5年分は毎年度の剰余金や国の資産売却でまかなえそうだという。とはいえ、国民による負担である点は変わらない。

 ただ、自治体によって財政状況はまちまちだ。宮城、岩手両県は税収が回復しているが、被災市町村には国からの特別交付税に頼るところが少なくない。

 どの事業でどの程度の地方負担が適当なのか、国と県、市町村は、正式決定する6月下旬まで協議を尽くしてほしい。

 事業を一つひとつチェックすることは、負担を抑えつつ効果をあげるためにも欠かせない。

 震災が起きた11年、政府が当初10年間の予算枠を決めた際には、阪神・淡路大震災の例などを参考にしながら、ある程度「見込み」で判断するしかなかった。それが被災地以外でのさまざまな事業への「流用」や、被災地での過大な事業につながった面は否めない。

 震災から4年がたち、より確実な見積もりと検証ができるはずだ。状況の変化に合わせて見直しが不可欠な事業もあるだろう。不断のチェックは予算編成と執行の基本である。

 忘れてならないのは、原発事故に直撃され、復興が遅れている福島県への配慮だ。

 政府は今年度限りで終える事業として、福島県での再生可能エネルギー関連の2事業を挙げた。福島県は、原発事故からの復興の象徴として、県内で消費するエネルギーを再エネでまかなう長期目標を掲げている。

 もともと期間限定事業だったことなどが終了の理由で、国は「有効な事業を見極め、地元の方針を支援していく」という。

 原発被災地では、放射能汚染で復旧もままならないなか、復興を目指す困難な取り組みが続く。地元の思いを大切にしてこそ予算の見直しが説得力を持つことを肝に銘じてほしい。