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「官邸ドローン事件」で恥をかき、総監人事も揺れている警察は規制強化に躍起。国交省と対立も

現代ビジネス 5月28日(木)6時46分配信

 小型無人飛行機「ドローン」をめぐる論議がかまびすしい。

 「反原発」をアピール、「安倍(晋三)首相へのドローンによる体当たりテロも考えていました」と、供述した山本泰雄被告(40)が、首相官邸をドローンで襲撃したかと思えば、動画共有サイトにドローンの飛行状況を配信していた15歳の無職少年が、浅草3社祭りで行うとした「飛行予告」が威力業務妨害にあたるとされ、警視庁に逮捕された。

ドローンの危険性と将来性

 こうしたドローンの危険性が伝えられる一方で、5月20日から22日にかけて、千葉の幕張メッセで、「第1回国際ドローン展」が開催され、3日間で1万人を集めて盛況だった。そこでは、各社がドローンの商業利用をアピール、「10兆円の経済効果がある」とされるドローンの将来性が窺われた。

 まさにドローンの「功罪」が問われ、「光と影」が明らかになった。それだけに規制論議が活発になった。

 現在、ドローンは家電量販店やインターネットで誰でも買うことができるし、飛行を直接規制する法律もない。擬似的テロや悪質ないたずらが発生した以上、規制やルール作りが急がれるのは当然だろう。

 だが、一方で過剰な規制は産業の芽を潰す。はじを

 幕張のドローン展で明らかになったのは、商業化はこれからで、パソコンの世界に例えるなら1990年頃の「普及前」の段階であることだ。

 趣味の世界から実用の世界に入ってからのパソコンは、それ抜きにビジネスが成り立たないほど重要なツールとなった。ドローンもやがて、物流・サービス、調査・設計、探知・警備などの分野で欠かせないものになるだろう。

 それだけに、拙速なルール作りは危険だが、相変わらずの「縦割り行政」のなか、ドローン規制に関係する、警察庁、国土交通省、経済産業省、文部科学省、総務省などが主導権争いをしている。

官邸ドローン事件で恥をかいた警察

 指摘したいのは、ドローン論議が活発になるきっかけが、「官邸ドローン男」の山本被告の擬似的テロであったこと。そして、それを許した警察が、2度と同じ過ちを繰り返したくないと、規制強化に向けて突っ走っていることだ。

 山本被告は、中国メーカー・DJI社製の10万円台のドローンを購入、目立たないように黒く塗装、バッテリーに「原発再稼働反対 官邸サンタ」と書いた紙を巻き、放射性物質のセシウム134が検出されたプラスチック容器を取り付け、4月9日未明、赤坂から官邸に向けて飛ばし、落下させた。

 官邸屋上に落下していたドローンを、職員が発見したのは、4月22日の午前10時半だった。発見場所の真下は官房長官秘書官室。結果的に権力中枢を狙った擬似的テロは成功したわけだが、それより官邸職員が、偶然、発見するまで2週間近く放置され、精鋭揃いが“売り”の官邸警備隊が、まったく気付かない事の方が問題だった。

 さらに恥をかいたのは警視庁公安部。反原発活動家を中心に洗い出しを続けるなど、「見立て重視」の公安的手法では山本被告に届くことは出来ず、結局、本人が4月24日午後8時頃、自宅のある福井県小浜警察署に出頭するまでわからなかった。

 しかも、山本被告は自らの存在を隠すどころか、昨年7月から「官邸サンタ」を名乗り、ブログで犯行に至る過程を公開していた。

 失態続きで警察は揺らぐ。高橋清孝・警察庁警備局長の責任問題にまで発展、「次期警視総監の本命は高橋さんだったが、うまく処理できなければ、その座は危うい」(警視庁関係者)という噂まで流れた。

 従って、警察庁としては「まず、規制ありき」である。所有者の登録制度、操縦の資格制度、探知機能強化のための資機材の導入、幅広い飛行禁止領域の制定、違反者への懲役や罰金刑などが検討されている。

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最終更新:5月28日(木)6時46分

現代ビジネス

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