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【政治】

<ここが変だよ安保法制>戸惑う自衛隊員 任務・派遣先明示なく

 Q 安全保障法制をめぐり「自衛隊のリスク」が議論されています。自衛隊員はどう受けとめているの?

 A 折に触れて自衛隊幹部から話を聞いていますが、「どのような場面で活動するのだろうか」「何が起こるのか分からない」と疑問や不安を口にする人が目立ちます。どのような活動が命じられるのか分からないので戸惑っているのではないでしょうか。

 Q 集団的自衛権は海外で武力行使することだし、後方支援は他国軍の戦闘に必要な物を提供することでしょう? 任務ははっきりしています。

 A いやいや、過去の海外派遣は具体的なニーズがあったから備えることができたのです。例えば一九九二年の国連平和維持活動(PKO)協力法。日本人が代表となるカンボジアPKOに参加するため、気候、風土、現地情勢、憲法上の制約などを踏まえて派遣地域や活動が決まりました。

 Q 一九九九年の周辺事態法は? 周辺というだけでは場所が分かりません。

 A 周辺事態法は九三、九四年にあった北朝鮮による核開発問題をめぐる朝鮮半島危機を下敷きにしています。当時、核開発施設の空爆を計画した米国からの支援要請を日本政府は断りました。すると日米関係が極端に悪化したので、日本周辺で戦う米軍の後方支援を憲法の枠内でできるようにしたのです。

 Q イラク派遣は期間と目的を特定した特別措置法で対応しましたね。

 A 二〇〇三年、当時の小泉純一郎首相は世界に先駆けてイラク戦争を支持しました。すると米国から「ブーツ・オン・ザ・グラウンド(陸上自衛隊を派遣せよ)」との要請があり、イラク特措法を制定して陸上自衛隊六百人をイラクに送り込んだのです。

 Q 今回は特措法ではなく、いずれも恒久法です。

 A いつ、いかなる場所へも時の政権の判断で自衛隊を派遣できるケースが広がります。当然、「自衛隊のリスク」は高まるはずですが、法案からはどこへ派遣され、何が任務となるのかさっぱり分かりません。自衛隊の活動を軍隊並みにするという理念先行の法案だからです。 (半田滋編集委員)

 

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