「世界禁煙デー」のきょう、禁煙週間が始まった。

 日本も批准しているたばこ規制枠組み条約が発効して10年がたった。加盟国は受動喫煙を法律で防止するよう求められているのに、日本の動きは鈍い。

 13年の厚生労働省の調査では屋内を全面禁煙にした職場は4割強で、4割弱は場所や時間を限って喫煙を認める「分煙」にとどまる。働く人の47%が「受動喫煙がある」と答えた。

 政府は速やかに法律での受動喫煙対策を強化すべきだ。

 11年に政府は全面禁煙か喫煙室を設ける空間分煙を事業者に義務づける労働安全衛生法の改正案を、国会に提出した。だが、たばこ関係業界の反発を背景に一部の国会議員が強く抵抗し、廃案になった。あす施行される改正法には努力義務が盛り込まれただけだ。

 これでは実効性ある法規制とは到底いえない。

 「20年、スモークフリーの国を目指して」。厚労省は東京五輪を意識し、今年の禁煙週間でこんなテーマを掲げた。

 五輪は対策の遅れを取り戻すチャンスととらえたい。スポーツの祭典を機に、健康に害を及ぼす受動喫煙を抑え込むのは世界の潮流だ。近年の開催決定国は、飲食店など公共の場での喫煙を法令で厳しく規制した。

 ところが東京都の舛添要一知事は今月、「国の法律でやってもらいたい」と、一時前向きだった受動喫煙防止条例の制定を見送る考えを示した。飲食店やホテルなどの業界が反対しており、配慮したようだ。

 生活習慣病予防のためにも、たばこ対策がいかに重要か、厚労相だった舛添氏は熟知していよう。首都が先導して国の尻をたたく勢いで取り組んでほしい。全国への波及効果は大きいはずだ。再考を求めたい。

 業界側も喫煙客が離れるのを心配する前に、煙を吸わされる客や従業員への配慮を優先してほしい。非喫煙者の多くが受動喫煙対策の強化を望んでいることも真剣に受け止めるべきだ。

 分煙を実施した企業や店も、それで終わりではない。

 分煙は日本で支持が根強いが、専門家は「時代遅れ」と批判している。世界保健機関(WHO)は「分煙で煙を完全には防げない」とし、屋内全面禁煙を求める。施設の種類や規模に応じて徐々に禁煙化を進め、最終的には全面禁煙にすべきだ。

 全面禁煙にした国や地域では、心臓や呼吸器の疾患が減少したとの研究報告もある。

 東京五輪を迎えた時、「禁煙後進国」では恥ずかしい。