2020年1月1日水曜日

キャンペーンの趣旨


 

避妊は女性の最も基本的な権利の一つです


予期しない妊娠は、女性の人生に大きな影響を及ぼすことがあります。
学業や仕事の中断を余儀なくされる女性がいます。
中絶により心身にダメージを受ける女性がいます。
産む性である女性だけが不利益を被る社会は不公正です。
誰でもいつでも避妊にアクセスできることは、
女性の権利(リプロダクティブ ライツ)です。

予期しない妊娠を1/4に減らせます


 緊急避妊薬の服用で妊娠確率は2%まで低下します。
 緊急避妊薬は産婦人科などの病院で処方されます。
 緊急避妊薬は服用時間が避妊失敗から早ければ早いほど避妊効果が高く、
120時間後には効果がなくなります。

避妊失敗は誰もが経験します


コンドームの避妊では一定確率で破損などの事故が生じます。
ピルによる避妊では飲み忘れることがあります。
レイプ被害に遭わないとは言えません。
誰もが机の上にお茶をこぼした経験があるのと同じです。
日本で1年間に緊急避妊を必要とするケースは、
少なくとも400万件起きています。


緊急避妊薬の服用は時間が決め手!

緊急避妊薬の服用は時間が決め手です。
3連休前の金曜日にも避妊失敗は起こります。
お盆や正月などの長期休暇にも避妊失敗は起こります。
病院が開くまで待てません。
だから、ほとんどの国で緊急避妊薬は、ドラッグストアで買える薬です。


ノルレボ砂漠をなくす

産婦人科病院は都市に集中しています。
ノルレボを処方してもらうのに1日がかりになるところもあります。
島嶼部では、ノルレボを処方する病院さえありません。
ドラッグストアで買える薬なら、事前購入しておくこともできます。

貧乏女性は諦めろ?

ノルレボの価格は、ほとんどの先進国で1500円程度です。
学生や生徒、低所得の女性には無償で提供される国も少なくありません。
開発途上国では数百円です。
日本の価格は約1万5千円程度です。
1万5千円を持ち合わせていない女性は、躊躇するでしょう。
金銭的負担で緊急避妊を躊躇する女性がいる日本は、
リプロダクティブライツのない国です。
市販薬化して他国並みの価格にすべきです。


高価格政策が女性の健康を害している

多くの病院では高価格のノルレボに手が出ない女性のために、
ノルレボの代替として中用量ピルを処方しています。
中用量ピルを通常の4倍量服用すれば、
当然に強い副作用が現れることがあります。
ノルレボの高価格政策が女性の健康を害しています。

緊急避妊を知らない女性をゼロに

緊急避妊薬を選択するかしないかの選択は自由です。
しかし、緊急避妊薬の存在自体を知らなければ、
選択することもできません。
全ての女性に緊急避妊薬の存在を知らせていく必要があります。
緊急避妊薬が、コンドームや妊娠検査薬と並んで販売されれば、
緊急避妊薬は身近な存在になります。


ノルレボは安全性の高い薬です

ノルレボは黄体ホルモンだけの薬です。
中用量ピルを用いる緊急避妊のような激しい副作用はありません。
血栓症リスクを高めることもありません。
妊娠阻止に失敗して妊娠した場合、胎児に影響はありません。

ノルレボが乱用されることはありません

ノルレボ服用後の妊娠率は2%です。
単純に年率換算すると、26%です。
通常の避妊の代わりに緊急避妊が多用されることはありません。
実際に、ほとんどの国で緊急避妊薬は廉価な市販薬品ですが、
緊急避妊を通常の避妊に使用する女性はいません。

性感染症が蔓延することはありません


コンドームの破損など緊急避妊薬を必要とする事態は、
すでに性感染症感染リスクの生じた状況です。
緊急避妊薬が普及するとそのために、
性感染症の感染が広がるわけではありません。
緊急避妊薬を必要とする事態は性感染症リスクの高い状況と知らせ、
性感染症の検査を奨める方が性感染症の拡大阻止効果は高いと思われます。

日本もドラッグストアで買える国に


避妊へのアクセスはリプロダクティブライツの核心です。
わが国は避妊ピルの認可がなされない特種な国でした。
今また、緊急避妊へのアクセス障壁を高くする政策が取られています。
日本は依然として女性のリプロダクティブライツ状況が最悪の国です。
日本の女性のリプロダクティブライツの前進のために、
ノルレボが他国と同様な価格でドラックストアで買えるように、
いっしょに声を上げていきましょう。      2014.10.18

拡散用ツイートです。RTをよろしくお願いします。
https://twitter.com/ruriko_pillton/status/525933188057534464

呼びかけ人一覧(ページが切り替わります)

専用twitterアカウントを作成しました。(2012.5)
https://twitter.com/ec_otcノルレボを市販薬に!
フォローをよろしくお願いします。
 
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【私たちにノルレボを! ドラッグストアで買える緊急避妊薬を実現させよう】キャンペーンに賛同して頂けると幸いです。




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2015年5月28日木曜日

韓国の緊急避妊薬事情

韓国で緊急避妊薬が認可されたのは、日本より10年も前の2001年でした。
2001年当時は、多くの国で緊急避妊薬はまだ処方箋薬でした。
韓国でも処方箋薬として認可されました。
その後、各国は次々と市販薬化していきますが、
韓国は処方箋薬のままでした。
韓国当局は緊急避妊薬を市販薬化する方針を打ち出しました。
その直後の韓国の女性向けインターネット新聞"イルダ"の記事を紹介します。
なお、本稿執筆時点で、韓国はまだ緊急避妊薬の市販化が実現していません。
(通常ピルは処方箋なしの市販薬となっています。)

元記事=韓国の女性向けインターネット新聞"イルダ"の記事

**以下翻訳*********************************

緊急避妊薬【服薬時期】逃さないことがカギ

緊急避妊薬の市販一般医薬品転換、副作用論議


食品医薬品安全庁が緊急避妊薬(事後避妊薬)を市販一般用医薬品に転換するという方針を発表し(※訳註1)、これに対する賛否論争が起きている。

女性団体は「望まない妊娠」を避けるために、緊急避妊薬を病院ではなく薬局で購入できるという点について、歓迎の声を上げている。
しかし、利権がらみの医師会とならんで、一部の宗教団体と中絶反対運動団体などでは、「実質的に中絶」、「性の乱れ」などの理由を挙げて反対している。


“避妊の失敗”よりもっと大きい副作用はない


食品医薬品安全庁は、緊急避妊薬の市販一般医薬品転換理由について、「1回服用」であり、「通常避妊剤(事前避妊薬)で問題になる血栓症などの副作用がほとんど現れない医薬品」という点を勘案したと説明した。
また「アメリカ、英国、フランス、スイス、カナダで市販一般医薬品に採用」されているという事実も考慮したと説明した。
緊急避妊薬が「中絶薬」であるという主張については、「2001年の許可当時提出された医療·法律の専門家の医学·法律的判断によると、中絶薬ではない」と一蹴した。


医師会は緊急避妊薬が市販一般医薬品に分類される場合に乱用が発生する懸念と、副作用の不正出血を生理と誤認して、望まない妊娠をする可能性、それによる堕胎率の増加、避妊に対する安易な対処などの影響を強調している。
FDAの臨床試験結果によれば、緊急避妊薬の副作用としては、主に月経過多が30.9%で最も多く、悪心/嘔吐、腹痛、疲労などの順で発見されている。

しかし緊急避妊薬の市販一般医薬品転換を主張する側では、緊急避妊薬の最も大きい副作用は“避妊の失敗”という点を強調する。

事後避妊薬は高濃度のホルモンを利用して子宮壁を脱落させて受精卵が着床するのを防止するようにすることであり(※訳註2)、性交後72時間にできるだけ早く、また、月経周期にきっちり1回だけ服用することが原則だ。 この原則にしたがって服用しない場合、効果は急激に低下する(※訳註3)。
避妊成功率をより高めるためには、性交後12時間内の服用が推奨されている。
したがって服薬時期を逃さないことがカギで、このために市販一般医薬品に切り替えて、購入を簡単にすることが正しいという主張だ。


不正乱用問題…安全装置で解決する問題


大韓薬剤師会は、性交渉時には排卵の有無を診察を通じて確認できないので、事後避妊薬に対する医師の診療は必ずしも必要ないという立場だ。
また、消化器障害(吐き気・嘔吐など)、頭痛、めまい、不正出血などの副作用も、通常48時間以内に消えるので、大きな問題になることはないと見ている(※訳註4)。

暮らし・医療生協の家庭医学科の医師チュ・ヘインさんは、「肝臓や腎臓機能が著しく低下した状態など健康上異常がある場合を除き、一般成人女性ならば服薬方法などに対して十分に教育の上、一般医薬品に切り替えることは大きな問題にならない」という意見を明らかにした。

不正乱用の問題も、(処方箋薬であっても) 基本的な対処が不可能な状況だ。
チュ・ヘインさんは、「緊急避妊薬が非給与薬であっても、それぞれ他の医院いろいろな所で何度も処方を受けたとしても、これを把握できる方法がない。」と指摘した(※訳註5)。
また、薬剤師会の報告によれば、現在の緊急避妊薬が医師処方を経なければならないにも関わらず、女性でない男性が代わりに処方受けたり、住民番号が不明な処方をするなどの便法が行われているという。


海外事例を見れば、多くの国では緊急避妊薬を処方箋なしで購入できるように規定している。
OECD加盟国のうち数ヶ国を除いては、ほとんどのヨーロッパ諸国と北米諸国で緊急避妊薬を市販一般医薬品に分類している。

これらの国は緊急避妊薬についての情報を提供して、不正乱用を防止できる安全装置を置いている。
薬剤師との相談後に購入できるように薬剤師の薬棚に配置しなければならない医薬品に指定したり、カナダのいくつかの州の場合、薬剤師が購買者に緊急避妊薬に関する質問用紙を必ず受けるように記録を義務化するようにした(※訳註6)。

そして、関連情報が不足した十代女性の健康を保護するために、
一部の国では16歳未満、あるいは18歳未満は、両親の同意を受けたり、医師の処方があって購入できるように制度的装置を用意した(※訳註7)。 医師との相談を通して、性教育を提供できるようにしたものである。


**以上翻訳*********************************

訳註1、2012年6月7日。
訳註2、排卵の抑制が主たる機序と考えられている。
訳註3、参照服用が24時間遅れる毎に妊娠確率は3倍(市販薬化が必要な理由その1)
訳註4、ノルレボタイプの緊急避妊薬では、吐き気・嘔吐などの副作用も大幅に経験されている。参照 副作用が心配(反対論/慎重論について)
訳註5、日本では診察室で服用させるなど徹底した管理策が採られている。
訳註6、制限は撤廃されつつある。
訳註7、産婦人科学会、小児科学会、女性団体の撤廃運動で、制限は解消されている。

韓国で緊急避妊薬が市販薬化されるのは時間の問題か


韓国ではまだ緊急避妊薬の市販薬化は実現していません。
しかし、その実現は時間の問題でしょう。
政府当局は、明確に緊急避妊薬の市販薬化に舵を切っています。
薬剤師会も歓迎しています。
医師の中にも市販薬化を支持する意見が数多く存在します。
そして、女性達もそれを支持しています。
上に見たように、市販薬化を支持する言説が多くの人々の目につくようになっています。
医師会の反対も、強硬とは言えません。
通常ピルに対する助成を求めるなど、「条件闘争」に傾いています。
韓国と比べると、日本の状況はまだまだです。
政府当局は、緊急避妊の普及さえ妨害する姿勢です。
当局の意を受けて、産婦人科学会は「適正使用」指針を作成しています。
平気でデマも流します。
もう一つのノルレボ物語(8)乱用幻想のプロパガンダで指摘したように、
デマを真に受けている善良な医師もいます。
この日本の状況を変えることができるのは、
私達の声だと思います。

2015年5月13日水曜日

ある看護学生さんとのメールの往復

ある看護学生さんとのメール往復を紹介します。
ほぼ原文のままですが、句読点など一部改変しています。
(掲載許可を戴いています)
***************************************************
【前略】
私は看護学生で今、助産師になる勉強をしています。
リプロダクティブ・ヘルス/ライツに興味があり、
ruriko_pillton さんのツイートを見て、
ピルやノルレボについて考えるようになりました。
今回メッセージを送ったのは、
今日【注:日曜日】あった出来事をどうしてもruriko_pilltonさんに伝えたかったからです。
【中略】
今日の夕方ごろ、大学生になったばかりのいとこから、
「金曜の夜に、彼氏の友達にレイプされた。
ゴムはつけたと相手は言うけれど、
もしかしたらと思い心配で電話をした。
親には相談できないし、どうしよう。」
と泣きながら電話がありました。
すぐに緊急避妊が必要だと思い、
医療ネットに連絡し二次救当の病院を紹介してもらおうと思いました。
しかし、その病院には産婦人科はなく対応は難しいということで、
日曜の午後もあいている産婦人科クリニックを探してもらいました。
そのクリニックもあと30分ほどで閉まってしまうということで、
いとこを急いで連れて行きました。
無事に薬を処方してもらい、本人も少しだけ安心した様子でした。
今回のことがあってノルレボを市販薬にすることが、
女性にとってとても重要であると気付きました。
もし、どこの病院もやっていなかったら、
もし電話が来たのが夜中だったら、
と考えると恐ろしいです。
日曜や夜間に対応できる病院は少ないです。
そういった場合にすぐに緊急避妊薬が手に入るようにしなければ、
女性は自分を守れません。
値段が高すぎること、副作用や他の薬との飲み合わせなどをどう指導していくかなど、
まだまだ課題はたくさんありますが、
望まない妊娠を避け女性が心身ともに健康に生活していくには、
避妊に対してのアクセスがもっと簡単になされることが必須だと思い知りました。
文章が読みにくい上に、長文になってしまい申し訳ありません。
しかももう夜中なのにm(__)m
私も助産師のたまごとして、
女性がもっと健康に生きられるように少しでも力になれたらと思います。
これからもツイート楽しみにしています。
ここまで読んでいただいて、本当にありがとうございました!

***************************************************
【返信】
【※※】さん、こんばんは。
メッセージ読ませていただきました。
いとこさん、妊娠を避けれるといいですね。
現在、中絶は公式統計で約20万件です。
(実際はその倍程度あるでしょう。)
20万件の女性達のほとんどは、
「やばい」と思いながら放置してしまったのです。
実は「やばい」と思いながら放置する女性は、
数百万人いるんですよ。
(私の試算では400万人。1回の性交渉による妊娠率は5%なので。)
400万件の必要に対して、ノルレボの処方数は10万強です。
これでは、中絶数削減効果は焼け石に水程度です。
ノルレボへの理想的アクセスが実現すると、
年間中絶数は5万件以下に減少します。
市販薬化が必要と考える理由です。
市販薬化されている国では、 病院等での処方がなくなっているわけではありません。
病院等の「等」ですが、 重要なのは若者向けのリプロセンターです。
以前ブログに町の女性保健室のことを書いたことがあります。【注:こちら
こういう施設が必要だと思っています。
ちなみに、リプロセンターでピルや緊急避妊薬を処方しているのは、
資格を持った看護師が普通です。
400万件の需要に産婦人科医だけで対応できませんものね。
資格を持った看護師に日本で相当するのは、
助産師さんや保健師さんです。
【※※】さんがノルレボを処方する時代が必ず来ますよ。
以上です。 ===================================================================

以下、感想です。
いとこさんの事件は金曜日でした。
もし彼女に緊急避妊の知識があれば、
病院の開いている土曜日に受診することが可能だったでしょう。
彼女には緊急避妊の知識がなかったのかもしれません。
学校教育の中で緊急避妊について教えていることは稀です。
生理の始まった全ての女性に緊急避妊の知識を広めていく必要があります。

彼女が緊急避妊について知っていたかどうかは不明ですが、
知っていることと行動は必ずしも一致しません。
高い値段や産婦人科の敷居が、
受診を躊躇させてしまうことは少なくありません。
この事例では幸いなことに背中を押してくれるいとこさんがいました。
身近な女性の後押しは、躊躇している女性を励ます大きな力になります。

望まない妊娠を減らしていくことは、
一般に考えられているほど容易ではありません。
自分の身体を守るという意識が女性の間に育たなくては、
望まない妊娠を減らしていくことはできないからです。
知識だけでなく、意識を変えていく必要があります。
避妊への高いアクセス障壁のもとでは、
自分の身体を守るという意識は育ちません。
だれでも必要な避妊にアクセスできる環境があってはじめて、
自分の身体を守るという意識は育つものです。

2014年12月8日月曜日

図説 緊急避妊薬の早い服用が必要な理由

主要作用機序としての排卵遅延


緊急避妊薬は無防備な性交渉後、早い時間に服用すればするほど効果的です。
服用が24時間遅れる毎に妊娠確率は3倍にもなります(参照)。
服用時間が遅れると何故妊娠率が高くなるのか、
緊急避妊の仕組みから説明してみましょう。
緊急避妊の作用機序には諸説があります。
1つだけの作用ではなく複数の作用が関係している考える方が合理的です。
しかし、排卵の遅延(排卵時期を遅らせる)が、大きな作用機序であることに異論はありません。
排卵遅延の作用機序が服用時間とどのように関係しているのか、
見てみることにします。

緊急避妊をしなかった場合


緊急避妊をしない場合、妊娠率は約8%です。
しかし、排卵前の数日に限れば妊娠率はとても高くなります。
下の図はWilcoxの研究(Wilcox AJ, WEINBERG CR ET AL.,  Timing of sexual intercourse in relation to ovulation. Effects on the probability of conception, survival of the pregnancy, and sex of the baby. NEW ENGL J MED.333. 1517-21,1995)を基に作成したものです。
便宜上時間単位の図としましたが、元の論文では日単位なので排卵は図の0hから24hまでのどこかとなります(原著論文データ)。
この図から分かるように排卵日を含む排卵前3日間の性交渉では、
妊娠確率は30%程度となっています。
図からは精子は少なくとも6日間受精能力を保持することが示されています。
この研究では、排卵日を含む6日間に1度だけの性交渉のあった事例について調べています。
6日間でなく7日間に1度だけ性交渉のあったケースを調べると、
低い確率ながら妊娠例があるかもしれません。
(「ピルとのつきあい方」が旧版から一貫して精子の受精能力は最大7日としてきた所以です)
排卵前の期間に性交渉があれば生じる妊娠の可能性を排除するのが緊急避妊です。

(ケース1)性交渉が排卵120時間前のケース


図は排卵120時間前に性交渉のあったケースを示しています。
この時期の妊娠リスクは最も高い時期の半分程度です。
図の緑色で示したどの時点で緊急避妊薬を服用しても、妊娠は回避できます。
つまり、このケースでいえば性交渉の10時間後に服用しようが、110時間後に服用しようが、
避妊効果に影響がありません。
時間に関係なく服用することで、妊娠リスクは低下します。

 

(ケース2)性交渉が排卵後のケース


下の図は性交渉が排卵後のケースを示しています。
排卵後の性交渉では、もともと妊娠リスクがありません。
したがって、性交渉の10時間後に服用しようが、110時間後に服用しようが、
避妊効果に影響がありません。
以上2つのケースは元々妊娠リスクが比較的低いか妊娠リスクがないケースです。
このようなケースでは、早い時間の服用は必要ありません。

(ケース3)性交渉が排卵72時間前のケース


下の図は排卵72時間前の性交渉のケースを示しています。
このタイミングでの性交渉では、妊娠確率が30%にも達します。
図に緑色で示した範囲が72時間あります。
この72時間のどこかの時点で緊急避妊薬を服用すれば、
妊娠回避の可能性が高くなります。
このケースでは72時間を過ぎると排卵遅延作用は期待できません。
もし緊急避妊薬の作用機序が排卵遅延だけだとすると、
72時間を越えての服用は無効です。

(ケース4)性交渉が排卵48時間前のケース


下の図は排卵48時間前の性交渉のケースを示しています。
このタイミングでの性交渉では、妊娠確率が30%にも達します。
図に緑色で示した範囲は48時間になっています。
この48時間のどこかの時点で緊急避妊薬を服用すれば、
妊娠回避の可能性が高くなります。
このケースでは48時間を過ぎると排卵遅延作用は期待できません。
もし緊急避妊薬の作用機序が排卵遅延だけだとすると、
48時間を越えての服用は無効です。
このケースでは緊急避妊薬は72時間以内の服用で有効とは言えません。
確実に有効なのは48時間以内です。

(ケース5)性交渉が排卵24時間前のケース


下の図は排卵24時間前の性交渉のケースを示しています。
このタイミングでの性交渉では、妊娠確率が30%にも達します。
図に緑色で示した範囲は24時間になっています。
この24時間のどこかの時点で緊急避妊薬を服用すれば、
妊娠回避の可能性が高くなります。
このケースでは24時間を過ぎると排卵遅延作用は期待できません。
もし緊急避妊薬の作用機序が排卵遅延だけだとすると、
24時間を越えての服用は無効です。
このケースでは緊急避妊薬は72時間以内の服用で有効とは言えません。
確実に有効なのは24時間以内です。

以上、妊娠リスクが30%程度と高くなる3つのケースについてみてみました。
妊娠リスクが高い時期の性交渉では、許容される時間は最大で72時間です。
最大72時間であって、実際は72時間より短い時間の猶予しかありません。

 

排卵までの時間は予測できない


上で5つのケースについて検討しました。
猶予時間が120時間あるケースもあるし、72時間のケースもあるし、10時間のケースもあります。
無防備な性交渉があった時点で、何時間の猶予があるのかはだれにも分かりません。
一律に72時間の猶予があるかのような言説が流布していますが、
間違いです。
猶予時間はケースバイケースですが、個々のケースがどのケースなのか判断することはできません。
どのケースにも対応するためには、できるだけ早く服用するしかありません。
早い服用の効果は明白です。


12時間以内の服用なら、妊娠率はわずか0.5%です。
望まない妊娠を1人でも少なくしようと思うなら、
1時間でも早くアクセスできるようにしなくてはなりません。
そのためには、「緊急避妊薬ノルレボを市販薬に! 」する必要があるのです。

2014年12月6日土曜日

銅付加IUDによる緊急避妊

緊急避妊についての第一人者であるJ.Trussellらによる緊急避妊レビュー2014年8月版から、銅付加IUDによる緊急避妊についての記述を翻訳してみました。

銅付加IUD

着床は排卵の6-12日後に生じます。それゆえ、妊娠を防ぐために排卵の5日後まで銅付加IUDは挿入可能です。すなわち、排卵日の3日前に無防備な性交渉がなされたのなら、性交渉の8日後までに挿入されれば、IUDは妊娠を防止するでしょう。しかしながら、排卵日の決定は困難なので、プロトコルの多くは無防備な性交渉後5日までの挿入を推奨しています。最新のWHOガイドラインは(訳註1)、月経周期の12日目までは何の制約もなしに、そして妊娠していないことが確実であればいつの時点でも、IUDの挿入を許容しています。挿入されたIUDは、通常の避妊法として12年間まで効力を発揮させることができます(訳註2)。しかし、IUDは必ずしも全ての女性に理想的ではありません。未治療の性感染症を有している女性は、IUDが適していません。なぜなら、IUDの挿入は骨盤内感染症を引き起こす可能性があり、治療しなければ不妊の原因となります。性感染症の可能性のない女性は、IUD挿入後の骨盤内感染症リスクはほとんどありませんし、未経産女性の銅付加IUDの使用は卵管不妊リスクの増加と関係しません(クラミジア感染があるとしても)。

効果

1976年にこの方法が紹介されて以来、文献上、性交後に銅付加IUD挿入を行った7000例以上が報告されています。失敗はわずか10例が知られているだけであり、この方法の妊娠率は0.1%です。レボノルゲストレル放出IUD(訳註3)を緊急避妊に使用する効果については研究されておらず、推奨されません。

(訳註1)特に緊急避妊としての銅付加IUDについてのガイドラインではない。
(訳註2)日本で認可されているノバT380の有効期限は5年。
(訳註3)日本ではミレーナが認可されている。

http://ec.princeton.edu/questions/ec-review.pdf
 

銅付加IUDによる緊急避妊のメリット


銅付加IUDによる緊急避妊は、緊急避妊薬ノルレボによる緊急避妊より明らかに効果が高いといえます。
ほぼ100%に近い避妊率と言ってもよいでしょう。
しかも、5日までの挿入であれば、挿入までの時間と失敗率の間に関係はありません。
最近は7日まで挿入可とする外国文献も多くなっています。
挿入時に出費は多くなりますが、5年間の避妊コストとして考えれば、
むしろ割安な避妊法です。
未経産婦では挿入に困難はありますが、挿入できないわけではありません。

銅付加IUDによる緊急避妊が主流とならない理由


上に書いたように、銅付加IUDによる緊急避妊にはメリットがあります。
ほぼ完璧に近い避妊効果が得られます。
しかし、銅付加IUDによる緊急避妊が、緊急避妊の主流となっている国はありません。
それには大きな理由があります。
通常の銅付加IUD挿入に際してはあらかじめSTI検査を行い、
また予防的に抗生物質の投与を行います。
銅付加IUDによる緊急避妊では万全の態勢が取りにくいという難点があります。
特にパートナー男性のHIV検査は必須です。
HIVウイルスは抗生物質で予防できません。
男性がキャリアの場合、緊急避妊を受ける女性の検査は無意味です。
しかも、HIVウイルスは感染力の弱いウイルスですが、
IUD挿入時の傷は感染を容易にしてしまいます。
STI検査が普及している欧米でも、
感染リスクを考慮し銅付加IUDによる緊急避妊は普及していません。

日本の危うい状況


避妊ピルは本来安全性の非常に高い薬です。
しかし、避妊ピルの普及を抑える政策が取られたために、
避妊ピルは本来の用途ではないライフデザインドラッグとして宣伝されました。
そのため避妊ピルは諸外国では若年者の避妊法であるのに、
日本では年齢の高い多くの女性がピルを服用しました。
その結果、ピル史上最悪の血栓症副作用被害が生じました。

今また、緊急避妊薬ノルレボの普及を抑える政策が取られています。
ノルレボが銅付加IUDに匹敵する避妊効果を発揮するのは、
より早い時間に服用した場合のみです。
ところが現在の日本では、無防備な性交渉後の早い時間にノルレボを服用するのが困難です。
これではノルレボが銅付加IUDに対抗するのは無理です。
見方によれば、銅付加IUDによる緊急避妊を誘導しているようなものです。
ノルレボの市販薬化を揶揄する産婦人科医の中には、
銅付加IUDという手もあるから市販薬化は必要ないとの意見もあるようです。
それはとても危うい状況を示唆しています。
日本は欧米と比べてSTI検査が格段に普及していない国です。
その日本で、銅付加IUDによる緊急避妊が安易に行われると、
感染症(特にHIV)を引き起こしかねません。
歪んだピルや緊急避妊薬政策は、かえって重大な問題を生じさせます。
だから、一刻も早いノルレボのアクセス改善が必要なのです。

2014年12月5日金曜日

産婦人科医Cap.TAKA氏のご意見

産婦人科医S.Takahashi(Cap.TAKA)氏のホームページ「ウソつきはドクターの始まり」は、1998年に開設されました。サイトはこちらです。
その後、2007年には「ウソつきはドクターのはじまりonブログ」が始まります。
Cap.TAKAは緊急避妊薬の市販薬化を早くから提唱していました。
傾聴に値するご意見なので紹介させて戴くことにしました。


(前略)
緊急避妊ピルなどは欧米ではOTCとして売られています。そういった生活改善薬をもっとOTCとして売っていただければ、我々開業医も、必要なことに時間をかけられるようになると思います。正直な話、現在のところ、大した儲けもない緊急避妊ピルなどに多大な説明を要するうえ、病気ではない状態で投薬するだけに、クレームのもとになりやすいため、大きな負担となっています。ぜひ、こういった薬は、薬剤師の指導のもとでOTCとして売っていただくように認可していただくことを切望しております。(中略)

本当の医療からは少し外れたところにある自費で出すような生活改善薬を医師の処方でしか出せないとする一方で、まともな医療に対する保険点数を減らされるなど本末転倒なことです。(中略)


お願いですから、このような自費の生活改善薬をOTCにしていただいて、まともな医者にまともな医療をさせて欲しいというのが本音です。そして、こういった、本当の医療とは言えないような医療に医療費削減の活路を見出すのではなくて、きちんと医師の技量を保険点数として汲み取っていただくことによって、本当の医療をさせて欲しいというのが最終的な願いなのです。(後略)

混合診療について、厚労省に宛てたメール

(前略)
そんで、TPP。グッドでないの?混合診療を可能にして、厚労省の医療に対する権限を剥奪するべきだよ!そうすると製薬会社が薬剤の値段を好き放題に高く設定するみたいなこと言ってるけど、それは、ウソ!例えば、緊急避妊薬のノルレボ。もっと原価は安いはずなのに、厚労省と医師会が「そんなに簡単に避妊できると、モラルが下がる」とか言って、値段を高く設定しました。で、納入価が1万円以上。くそったれだと思わないですか?アメリカじゃぁ、数千円で手に入れられる薬ですぜ。それから、また、ジェネリックの低容量ピル。先発のピルが十分に売れてないからという理由で、先発品とほぼ同じ値段。じゃぁ、ジェネリックの意味がねぇじゃねぇか!!(中略)

以前から言っているように、例えば、ピルの健診のときにオリモノが多いので検査してもらった。ってのも混合診療だわ。普通なら保険診療で出来るものが、その日に行った診療のすべて…す・べ・て・ですよ!すべて自費診療になるんだわ。こんなバカなことがありますか?ピル使っている人が具合悪くなった。そうだ、今度ピルをもらいに行くときに、一緒に診てもらおう!なんて考えてる人、厚生労働省のクソ役人どもは「それはいかん!そういうことをする奴は、全部自費で払え!」と、言っているんですよ。ホント、日本の保険制度は、そういう意味ではクソです。(後略)


Cap.TAKAが2012の医療を予言する!!

(前略)
例えば、最近発売された月経困難症用の低用量ピル。本当は、自費のピルと同じ程度の値段なんですよ。でも、月経困難症に対する既存の治療に合わせて、本体価格を3倍にした。つまり、本来なら保険診療の3割負担で1000円程度になるはずだった値段が、厚生労働省が製薬会社に便宜を図って値段を釣り上げさせたんです。そして、3割負担の値段が自費のピルと同等の値段の3000円。原価は自費用のピルと大して変わらないんだから、製薬会社は大儲けです。笑いが止まらないよね。そりゃぁ、11億だか何だかの政治献金するはずだわ。(中略)

さらにピルがらみでいうと、某社で出したジェネリックの経口避妊薬。当然ジェネリックなんだから、従来の薬の6~7割の値段設定になるはずですよね。ところが、他の経口避妊薬が十分に利益を出していないという理由で、値段を下げさせてもらえなかったんです。ふざけてますねぇ。ファ**-とか持*とか化*とかあ*かとかがさんざん文句言ったんだろうなぁ。値下げしたら、政治献金してやんねぇぞ!って。
。(後略)

厚労省!俺はお前らが大っ嫌いだっ!!

(前略)
しかし、先に書いたように、アメリカの薬剤費と日本の薬剤費とはかなり違うのですよ。例えば、緊急避妊ピル。政治家と官僚が「簡単に避妊しようとは言語道断!」と文句をつけて、アメリカじゃぁ数千円で買えるのを日本では一万数千円に設定した。なんだ、そりゃ?メーカーに儲けさせてどうすんだよ!!さらに、月経困難症の治療用ピル。アメリカでは避妊用ピルとして使われている薬なんだけど、「日本では、避妊用のピルが思ったように普及していない。」と言う理由で、保険の3割負担で避妊用ピルと同じ値段になるように設定された。つまり、自費で使おうとすると3倍の値段。はぁ、どういうこと?さらに、子宮内膜症の薬。これもアメリカではミニピルとして販売されていて数千円の薬だが、「他の内膜症用の薬と値段を合わせなくてはいけない。」と言う理由で、保険適応になった代わりに値段は一月あたり一万円近く。ホント、日本人て国民皆保険おかげでいい思いしているように思ってるけど、国民皆保険制度のせいで厚労省のいいなりに無茶苦茶やられちまっているというのもあるんですわ。(後略)
 
TPPだからなんじゃい!(後半)


Cap.TAKA氏の提起している観点は3つです。

1.医療資源の観点


Cap.TAKA氏は、緊急避妊薬を市販薬化すれば、「我々開業医も、必要なことに時間をかけられるようになる」と述べています。
緊急避妊薬について、本当に服用の必要があるか医師が判断する必要があるという人がいます。
しかし、それはわざわざ日本で作った日本ルールです。
ほんとうは、すでに妊娠しているかどうか、
月経周期や卵胞とかに関係なく無防備な性交渉があったかどうか、
だけが主なチェック項目です。
それをわざわざ医師が行う必要はないだろうというのが、
諸外国の考えです。
また、医師処方のメリットとして医師による避妊指導ができることを上げる人がいます。
もちろん医師が避妊指導を行ってもよいのですが、
それは医師でなくてはできないことではありません。
諸外国では医師以外の避妊指導専門のスタッフがきめ細かな指導を行っています。
そもそも、ノルレボの処方数は現在10万個強ですが、
潜在需要は年400万個です。
限りある医療資源の有効利用という観点から見ても、ノルレボの処方を産婦人科医に限定するメリットはないように思われます。
Cap.TAKA氏は、「まともな医者にまともな医療をさせて欲しいというのが本音です」と述べています。
婦人科医療の改善という観点からも、重要な指摘です。

2.混合診療の問題


ピルやノルレボは要処方薬であるけれども自由診療の薬です。
日本では、保険診療と自由診療を同時に行う混合診療は、
原則禁止されています。
この原則を弾力的に運用すべきだというのが、
Cap.TAKA氏のお考えのようです。
10数年前、低用量ピルを保険適用にする運動をした患者団体があります。
保険適用要求の主要な理由の1つが混合診療の問題でした。
ピルは混合診療禁止というシステムと相性の悪い薬です。
ピルを混合診療禁止というシステムに合わせるのではなく、
混合診療禁止というシステムをピルに合わせていくべきだと私は考えました。
今もその考えは変わりません。
ノルレボについてだけ言えば、話はもっと単純です。
緊急避妊としてのノルレボを処方薬としてではなく市販薬として利用し、
婦人科の診療は保険診療の適用を受ければよいのです。
ノルレボを要処方薬のままにしておくと、
本来保険で見てもらえる疾病まで保険適用が受けれません。
緊急避妊薬を病院処方限定にすれば婦人科が身近になると考える人がいます。
そうでしょうか?
ノルレボ処方に伴う婦人科診療は全て保険適用外です。
混合診療禁止ですから、本来保険が使える診療内容まで全額自費となります。
普通か普通以下の所得の女性にとって、婦人科の敷居はいよいよ高くなります。


3.政治介入の問題


性に関する問題には、どの国でも程度の差はあれ宗教や政治の介入が見られます。
それに対して医療者は科学的エビデンスを示して対抗してきました。
各国で緊急避妊薬の市販薬化が実現しているのは、科学の勝利と見ることができます。
Cap.TAKA氏は、日本のピルや緊急避妊薬が官僚や政治家の恣意に翻弄されていることを指摘しています。
「政治家と官僚が『簡単に避妊しようとは言語道断!』と文句をつけて」高い価格になっていると指摘されています。
ノルレボのバカ高な価格は政治価格以外の何者でもありません。
緊急避妊薬のアクセスを容易にしても、性が乱れたり乱用されたりすることはありません。
それは諸外国で実証済みの科学的エビデンスです。
ノルレボへのアクセスを制限する必要があるというのは妄想に基づくものであり、
一種の偽科学です。


Cap.TAKA氏は医療の現場で働く一医療人として本音を語ってきた産婦人科医です。
バイアスを排し、現実を直視すれば、ノルレボの市販薬化は自然に導かれる結論であるように思えます。