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ホメオパシー、デトックス、千島学説、血液型ダイエット、ワクチン有害論、酵素栄養学、オーリングテストなどなど、「ニセ医学」についての本を書きました。あらかじめニセ医学の手口を知ることで被害防止を。 |
2015-05-30 アメリカ国立癌研究所所長は抗がん剤の効果を高く評価した
■[医学]アメリカ国立癌研究所所長は抗がん剤の効果を高く評価した
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ネットでは真偽不明の医学情報がたくさん流れています。その中の一つに「1985年に、アメリカ国立癌研究所のデヴィタ所長が、抗がん剤は無力だと議会で証言した」というものがあります。議会で証言したのが事実であるなら議事録がありそうですが、きちんとソースが提示されたものは見つかりません。現在はもちろん、1985年の時点でも、抗がん剤治療は癌治療の柱の一つです。「アメリカ国立癌研究所所長が抗がん剤を否定した」という話は捏造されたものだと私は思います。
「デヴィタ所長(Dr. Vincent T. DeVita, Jr.)」が、1980年から1988年までアメリカ国立癌研究所(NCI:National Cancer Institute)の所長を務めていたのは確かなようです*1。デヴィタ医師とその同僚は1965年に、悪性リンパ腫に対して複数の抗がん剤を組み合わせる治療法を提唱しました。それまで悪性リンパ腫の一種であるホジキン病が治癒する確率はほとんど0%でしたが、デヴィタ医師たちの提唱する抗がん剤組み合わせ療法によって70%まで上昇したのです。現在では組み合わせる抗がん剤の種類が改良され、治癒する確率は90%まで改善されました。こうした「複数の抗がん剤を組み合わせる」治療法の基礎を築いたのはデヴィタ医師たちです。
デヴィタ医師は、乳がんについても抗がん剤を組み合わせる治療法を開発しました。乳がんの手術後に、再発を抑制する目的で、シクロホスファミド、メトトレキサート、フルオロウラシルの3種類の抗がん剤を組み合わせて使い、3つの抗がん剤の頭文字をとってCMF療法と呼ばれます。1976年には、CMF療法が乳房切除術後の乳がん患者さんの再発を24%から5.9%に減らしたと報告されています*2。CMF療法は現在でも使用されることがあるといいます。
1980年にNCIの所長に就任してからは、デヴィタ医師はがんの治療や予防についての情報の提供を行いました。また、アメリカ合衆国におけるがんの死亡率の減少を目標に定め、計画を作成しました。がんの死亡率を減少させることができるかどうか疑う意見もありましたが、結局のところ、2000年までにがんの死亡率は減少したのです。
がんの死亡率の減少について、デヴィタ医師本人がこう述べています。
■A History of Cancer Chemotherapy*3
Whereas half of this decline is due to prevention and early diagnosis , the other half is largely due to advances in cancer treatment , much of it due to the inclusion of chemotherapy in most treatment programs .
(意訳)がんの死亡率の低下の半分が予防や早期発見によるものであるが、もう半分は主に抗がん剤治療を含むがんの治療法の進歩によるものである。
デヴィタ医師は自身が化学療法について功績を持つ専門家であり、抗がん剤の効果を高く評価しています。抗がん剤は悪性リンパ腫や白血病を治し、がんの手術後の再発の可能性を下げ、生存期間を延長させることができるとデヴィタ医師は述べています。いったいどこから「デヴィタ医師は抗がん剤は無力だと議会で証言した」なんて話が出てきたのでしょうか。
間違った医学情報を拡散させる動機はさまざまでしょう。純粋に善意からという人もいるでしょう。あるいは、標準医療を否定することで代わりの医療(代替医療)を売りたいという目的で、意図的に捏造する人もいるでしょう。いずれにせよ、間違った医学情報は、それを信じた他の人の健康を損ない、場合によっては命に関わることもあります。真偽の疑わしい医学情報を拡散する前に、もしその情報が嘘だった場合のことも考えてみてください。
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*1:アメリカ臨床腫瘍学会の関連ウェブサイト http://cancerprogress.net/node/2661 による。他のデヴィタ医師の経歴の記述も、特に断りがない限りは同ページによる
*2:http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/1246307
*3:DeVita VT Jr and Chu E., A history of cancer chemotherapy., Cancer Res. 2008 Nov 1;68(21):8643-53