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[Ⅵ-8]<家族問題。親殺傷・ひきこもり。性同一性障害>新聞事件簿。どう向合う
<産経新聞>名門校に通う 15歳が落ちた闇・・大阪・池田の放火死傷事件
2010/11/06 09:55更新
大阪府池田市で10月2日早朝、木造2階建てのアパートが全焼し、住人3人が死傷した。自室に火を付けたとして現住建造物等放火と殺人の疑いで逮捕されたのは当時、府内の名門私立高校に在籍し、このアパートに1人で住んでいた15歳の少年だった。少年は動機について、一貫して「親への恨み」を供述。大阪地検は現住建造物等放火の非行事実で大阪家裁へ送致し、殺人容疑については不起訴(嫌疑不十分)とした。とはいえ、1人の尊い命が奪われた事件。いったい何が少年を暴発させたのだろうか。
現場は阪急宝塚線石橋駅から北へ約500メートル。新旧のアパート、民家が混在する静かな住宅街だ。
「消火器を持ってこい!」
事件現場となったアパートで管理人の声が響き渡ったのは、土曜日の午前7時ごろ。2階に住むアルバイト男性(34)は「寝ていたら煙のにおいに気が付いた。最初はボヤだと思っていたが、管理人さんの叫び声でただ事でないと分かった」と振り返る。
男性が廊下を見ると、突き当たりの部屋に向かって、火柱が床を飛んで伝っていくのが見えた。男性は母を連れ、火が上がっている廊下とは反対側にある非常階段から避難。18戸、延べ約600平方メートルを全焼して鎮火するころには、周囲に白煙と水蒸気がもうもうと立ちこめていたという。
男性が目にした突き当たりの部屋に1人で住んでいた女性=当時(78)=は、焼け跡から遺体で発見された。
別の住人の男性(38)によると、亡くなった女性は温厚で、まさに“昭和のおばあちゃん”という感じの白髪の女性だったという。住人からは「生き字引」とも呼ばれ、男性には「早く結婚しいや」などと、よく声をかけていた。2、3年前に腕を複雑骨折した際も、リハビリに通い続け、事件まではデイサービスも利用。ヘルパーさんが迎えに来たり、弁当を持って来たりしていたという。
焼け出された住人らは事件後、身一つでアパートの別棟に移った。「勝手にアパート暮らしをさせられ、親を困らせたかった」という少年の動機。それを伝え聞いた住人の男性は「ふざけるな、と言いたい。とても腹立たしい」と憤った。
■眠れぬ夜に何が?
消防隊が現場に駆けつけて騒然となるなか、少年は燃え上がるアパートを、路上で静かに見つめていた。
捜査関係者によると、少年は事件前夜、一睡もせずラジオを聴いていたという。午前4時ごろに家を出て、2カ所のコンビニでサラダ油とロウソクを購入。部屋の真ん中に教科書を集めて油をまき、火をつけたろうそくを上に寝かせた。炎の上にさらにふとんをかぶせ、燃え上がるのを確認した後、部屋に鍵をかけて外に出た。
両手には愛用のゲームソフトなどが入ったカバン。声をかけた消防隊員に対し、逃げるそぶりも見せず「僕が火をつけました」と話したという。
少年は逮捕後、取り調べに淡々と応じた。動機について、「学校を辞めさせてくれなかった」「勝手に部屋を契約され、一人暮らしをさせられた」などと、親への恨みを供述。さらに「大きなことをすれば学校に行かなくてすむと思った」とも口にしたという。
少年がこのアパートに住み始めたのは、事件の2週間ほど前だった。周辺に少年はどう映っていたのか。
同じアパートの男性(38)は「1回だけトイレで会ったことがある。あいさつしたら返してきた。メガネをかけていて、落ち着いている感じなので大学生かと思っていた」と証言。近くに住む中国人留学生の女性(26)は「大阪大を受験するので、勉強に集中するため一人暮らしをしている」と聞いたという。
少年が当時在籍していた高校の関係者によると、少年の印象は「成績は中間くらいのごく普通の生徒」。部活には入っていなかったが、友人もおり問題行動もなかったという。
■住居転々の末に
少年は大阪府内の高級住宅街に住んでいたが、数年前に両親が離婚。その後、父や実母、親族の家を転々とさせられていた。動機の一つにもなった、意に沿わない一人暮らしのきっかけは、事件のほぼ1カ月前にあった家族とのトラブルだった。
当時、少年は大阪市内の祖母宅で実母らと暮らしていた。学校は6月ごろから不登校になり、引きこもりのような暮らしを送っていたという。
9月4日午後。少年は3日連続で昼食がそうめんだったことに激怒。「コンビニで何か買ってくるから金をくれ」と口論になり、祖母の肩を突いた。翌朝にはピザをテレビの前で立ったまま食べているところを注意した実母にピザを投げつけ、背中を殴ったという。
いずれも祖母が「孫が興奮している」と警察に通報。少年はすぐに収まり、駆けつけた警察官に対して「もう暴力はしない」と誓約書を書いたが、「家族とは仲良くしたい。でも注意されると怒りのスイッチが入って抑えられない」とこぼしたという。
トラブルの後、少年は再婚していた父親に引き取られたが、ほどなく事件現場となったアパートでの生活が始まった。築約40年の木造で風呂とトイレは共同。父親は一人暮らしをさせた理由について、府警に「継母に暴力を振るう恐れがあった」と説明した。捜査関係者は「(少年は)家からほうり出されたと感じたのでは」と語る。
■発達障害との診断も
関係者によると、少年は今年に入り、心療内科で発達障害との診断を受けていた。近年、重大な少年事件で発達障害と診断されるケースが相次いでいるが、専門家は「障害そのものが問題なのではなく、周囲の無理解が2次的に問題行動を引き起こしていることが多い」と指摘する。
発達障害に詳しい京都大の十一元三(といちもとみ)教授=児童精神医学=はこうした少年について、「コミュニケーションが苦手で、人間関係などの環境の変化に弱い」と説明。今回の事件についても、「両親の離婚と度重なる環境の変化で混乱し、極端な行動に出てしまったのではないか」と分析する。
捜査関係者によると、少年が転居を繰り返さざるを得なかった背景には親への暴力もあったといい、その暴力は両親の離婚後に始まったという。一人暮らしが始まる直前には、父親らが学校に対し「学校を辞めさせたい。精神的に不安定になっている」と伝えたという。
少年は現在、観護措置を受けている。家裁は今後、事件当時の心理状況などを慎重に検討し、処分を決める。
亡くなった女性の親族の男性(57)は「少年といえども人の命を奪っている。公開の裁判を受けて罪を償うべきだ」と話した。
大阪府池田市で10月2日早朝、木造2階建てのアパートが全焼し、住人3人が死傷した。自室に火を付けたとして現住建造物等放火と殺人の疑いで逮捕されたのは当時、府内の名門私立高校に在籍し、このアパートに1人で住んでいた15歳の少年だった。少年は動機について、一貫して「親への恨み」を供述。大阪地検は現住建造物等放火の非行事実で大阪家裁へ送致し、殺人容疑については不起訴(嫌疑不十分)とした。とはいえ、1人の尊い命が奪われた事件。いったい何が少年を暴発させたのだろうか。
現場は阪急宝塚線石橋駅から北へ約500メートル。新旧のアパート、民家が混在する静かな住宅街だ。
「消火器を持ってこい!」
事件現場となったアパートで管理人の声が響き渡ったのは、土曜日の午前7時ごろ。2階に住むアルバイト男性(34)は「寝ていたら煙のにおいに気が付いた。最初はボヤだと思っていたが、管理人さんの叫び声でただ事でないと分かった」と振り返る。
男性が廊下を見ると、突き当たりの部屋に向かって、火柱が床を飛んで伝っていくのが見えた。男性は母を連れ、火が上がっている廊下とは反対側にある非常階段から避難。18戸、延べ約600平方メートルを全焼して鎮火するころには、周囲に白煙と水蒸気がもうもうと立ちこめていたという。
男性が目にした突き当たりの部屋に1人で住んでいた女性=当時(78)=は、焼け跡から遺体で発見された。
別の住人の男性(38)によると、亡くなった女性は温厚で、まさに“昭和のおばあちゃん”という感じの白髪の女性だったという。住人からは「生き字引」とも呼ばれ、男性には「早く結婚しいや」などと、よく声をかけていた。2、3年前に腕を複雑骨折した際も、リハビリに通い続け、事件まではデイサービスも利用。ヘルパーさんが迎えに来たり、弁当を持って来たりしていたという。
焼け出された住人らは事件後、身一つでアパートの別棟に移った。「勝手にアパート暮らしをさせられ、親を困らせたかった」という少年の動機。それを伝え聞いた住人の男性は「ふざけるな、と言いたい。とても腹立たしい」と憤った。
■眠れぬ夜に何が?
消防隊が現場に駆けつけて騒然となるなか、少年は燃え上がるアパートを、路上で静かに見つめていた。
捜査関係者によると、少年は事件前夜、一睡もせずラジオを聴いていたという。午前4時ごろに家を出て、2カ所のコンビニでサラダ油とロウソクを購入。部屋の真ん中に教科書を集めて油をまき、火をつけたろうそくを上に寝かせた。炎の上にさらにふとんをかぶせ、燃え上がるのを確認した後、部屋に鍵をかけて外に出た。
両手には愛用のゲームソフトなどが入ったカバン。声をかけた消防隊員に対し、逃げるそぶりも見せず「僕が火をつけました」と話したという。
少年は逮捕後、取り調べに淡々と応じた。動機について、「学校を辞めさせてくれなかった」「勝手に部屋を契約され、一人暮らしをさせられた」などと、親への恨みを供述。さらに「大きなことをすれば学校に行かなくてすむと思った」とも口にしたという。
少年がこのアパートに住み始めたのは、事件の2週間ほど前だった。周辺に少年はどう映っていたのか。
同じアパートの男性(38)は「1回だけトイレで会ったことがある。あいさつしたら返してきた。メガネをかけていて、落ち着いている感じなので大学生かと思っていた」と証言。近くに住む中国人留学生の女性(26)は「大阪大を受験するので、勉強に集中するため一人暮らしをしている」と聞いたという。
少年が当時在籍していた高校の関係者によると、少年の印象は「成績は中間くらいのごく普通の生徒」。部活には入っていなかったが、友人もおり問題行動もなかったという。
■住居転々の末に
少年は大阪府内の高級住宅街に住んでいたが、数年前に両親が離婚。その後、父や実母、親族の家を転々とさせられていた。動機の一つにもなった、意に沿わない一人暮らしのきっかけは、事件のほぼ1カ月前にあった家族とのトラブルだった。
当時、少年は大阪市内の祖母宅で実母らと暮らしていた。学校は6月ごろから不登校になり、引きこもりのような暮らしを送っていたという。
9月4日午後。少年は3日連続で昼食がそうめんだったことに激怒。「コンビニで何か買ってくるから金をくれ」と口論になり、祖母の肩を突いた。翌朝にはピザをテレビの前で立ったまま食べているところを注意した実母にピザを投げつけ、背中を殴ったという。
いずれも祖母が「孫が興奮している」と警察に通報。少年はすぐに収まり、駆けつけた警察官に対して「もう暴力はしない」と誓約書を書いたが、「家族とは仲良くしたい。でも注意されると怒りのスイッチが入って抑えられない」とこぼしたという。
トラブルの後、少年は再婚していた父親に引き取られたが、ほどなく事件現場となったアパートでの生活が始まった。築約40年の木造で風呂とトイレは共同。父親は一人暮らしをさせた理由について、府警に「継母に暴力を振るう恐れがあった」と説明した。捜査関係者は「(少年は)家からほうり出されたと感じたのでは」と語る。
■発達障害との診断も
関係者によると、少年は今年に入り、心療内科で発達障害との診断を受けていた。近年、重大な少年事件で発達障害と診断されるケースが相次いでいるが、専門家は「障害そのものが問題なのではなく、周囲の無理解が2次的に問題行動を引き起こしていることが多い」と指摘する。
発達障害に詳しい京都大の十一元三(といちもとみ)教授=児童精神医学=はこうした少年について、「コミュニケーションが苦手で、人間関係などの環境の変化に弱い」と説明。今回の事件についても、「両親の離婚と度重なる環境の変化で混乱し、極端な行動に出てしまったのではないか」と分析する。
捜査関係者によると、少年が転居を繰り返さざるを得なかった背景には親への暴力もあったといい、その暴力は両親の離婚後に始まったという。一人暮らしが始まる直前には、父親らが学校に対し「学校を辞めさせたい。精神的に不安定になっている」と伝えたという。
少年は現在、観護措置を受けている。家裁は今後、事件当時の心理状況などを慎重に検討し、処分を決める。
亡くなった女性の親族の男性(57)は「少年といえども人の命を奪っている。公開の裁判を受けて罪を償うべきだ」と話した。
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