社説:FIFA汚職 ウミを出し切るときだ

毎日新聞 2015年05月29日 02時30分

 長年の疑惑に捜査のメスが入った。サッカー・ワールドカップ(W杯)の放映権などを巡り、不正に巨額の利益を得ていたとして、国際サッカー連盟(FIFA)の現職副会長を含む幹部とスポーツマーケティング会社の関係者らが贈収賄などの罪で逮捕、起訴された。

 世界最大のスポーツイベントと言われるW杯に関しては2018年と22年大会の開催地選定に際し、投票権を持つ理事の買収や票の取引疑惑が報じられ、FIFAの倫理委員会が昨秋、調査報告書をまとめた。だが、全文の公表を拒んだうえで「重大な違法行為はなかった」として幕引きを図った。今回の捜査対象には両大会の招致疑惑も含まれており、FIFAの信用は損なわれた。

 この事態をFIFAは重く受け止め、事実の解明に向けて捜査に協力しなければならない。

 1904年、欧州のわずか数カ国によって設立されたFIFAは今や国連をしのぐ209カ国・地域が加盟する巨大組織となっている。最も大きな任務が4年に1度のW杯開催で、放映権料やスポンサー料をはじめ巨額の資金が動く。FIFAの報告書によれば、2011〜14年の4年間の収入は約57億ドル(約6800億円)に上る。

 一方で、汚職などの不正も表面化している。最近ではブラッター会長(79)が4選を果たした11年のFIFA会長選で対立候補だった理事が買収行為をしたとして永久活動停止処分を受けた。

 買収疑惑などが生まれやすい一因は非公開で重要案件を決める理事会にある。理事会は会長、副会長を含めわずか25人前後で構成され、5年前まではW杯開催地も決めていた。贈賄側は標的を絞りやすい。

 国際オリンピック委員会(IOC)が近年、約100人の委員による投票でオリンピックの開催都市を決定する総会の場を世界中のメディアに公開し、透明性と公平性を確保しているのとは対照的だ。

 逮捕、起訴を受け、FIFAからは「FIFAは被害者だ」「FIFAにとっては素晴らしい日ではないが、良い日だ」などと当事者意識に欠け、責任回避とも受け取れる発言が聞かれた。理解に苦しむ。

 米司法省によれば、ブラッター会長は捜査対象には入っていないが、組織の腐敗は90年代初頭から20年以上続く。幹部から複数の逮捕者が出たことで、98年からトップの座にある会長の責任は免れない。

 FIFAは起訴された幹部らに活動停止処分を下したが、これは個人の問題ではなく、組織の問題として認識すべきだ。ウミを出し切り、組織改革に取り組んでほしい。

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