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【外信コラム】
ソウルからヨボセヨ 学者がもてない社会?
韓国が軍事政権だったころ、学者たちによる政府批判の「時局宣言」というのがよくあった。一方、韓国では学者がよく首相や閣僚、秘書官などに起用され政治家になる。以前、日韓歴史共同研究委員会のある歴史学者が突然辞めて国会議員選挙に立候補し日本の学者を驚かせたこともある。
李朝時代の歴史ドラマで儒学者たちの「儒林」が王様に時局を憂えて直訴するシーンをよく見受けるが、そんな伝統のせいか韓国では学者が政治に影響力を持っており、社会的にももてるし威張っている。韓国では政治動向を知るには学者との付き合いが不可欠だ。
しかし日本では尊敬の一方で「学者バカ」とか博士をもじって「バカセ」という言葉まである。学者は狭い分野の専門家で世間知らずとされていて、政治など世事に口を出すことは非学問的で世間からは必ずしも評価されなかった。
最近、日本で歴史学関連の16団体(会員約6900人)が慰安婦問題で安倍政権を非難する声明を出したそうで、韓国では大々的に報じられている。ところが日本の政府やマスコミがそれに大きな関心を示していないと不満で、「日本には言論の自由がない」などと見当違いの批判をしている。いやそんな大げさなことではなく、単に学者を見る目が違うだけの話なんです。(黒田勝弘)