北朝鮮:数百人が見守るなか高射機関銃で 国防相処刑 

毎日新聞 2015年05月13日 19時56分(最終更新 05月13日 23時24分)

 【北京・西岡省二】北朝鮮の玄永哲(ヒョン・ヨンチョル)人民武力相(66)が4月末に反逆罪で処刑されたと、韓国・国家情報院(国情院)が13日報告した。北朝鮮では金正恩(キム・ジョンウン)第1書記による「1人指導体制」が強化されており、度重なる幹部粛清や人事異動に対する幹部の不満が募っている。金第1書記も幹部の動向に神経質になっているとされ、指導部内で不協和音が広がっている模様だ。ただ、国営報道機関は同日夕現在、事実関係を伝えていない。

 韓国の聯合ニュースによると、国情院は13日、玄永哲氏が4月30日に反逆罪で粛清されたと明らかにした。玄氏が金第1書記に不満を抱き、数回にわたって指示に従わなかった▽4月24〜25日に開かれた朝鮮人民軍の行事で居眠りした−−と問題視された。平壌の姜健総合軍官学校の射撃場で、数百人が見守る中、高射機関銃で銃殺されたという。

 人民武力相は国防相に当たり、軍では総政治局長、総参謀長に次ぐ要職。玄氏は2012年7月に総参謀長に就任するとともに次帥に昇格。その後、大将に降格され、13年5月には総参謀長を解任された。ところが14年6月には人民武力相就任が判明、同年9月の最高人民会議(国会)で国防委員に選ばれた。

 朝鮮中央通信によると、玄氏は今年4月27〜28日に平壌で開かれたモランボン楽団の公演に出席。その後、動静が途絶え、同月30日の金第1書記と軍行事参加者による記念撮影にも姿を見せていなかった。

 北朝鮮指導部に近い関係者は「反逆罪が適用されているなら『玄氏がクーデターを企てた』と疑われる行動を取った可能性がある」と指摘。張成沢(チャン・ソンテク)国防副委員長の処刑時と同様に、数カ月かけて調査した結果、処刑されたとの見解を示した。

 玄氏は、金第1書記が計画していたロシア訪問を前にした4月中旬、モスクワを訪問し、事前交渉に当たっていた。玄氏は、金第1書記訪露の「見返り」として、ロシアに最新鋭ミサイル「S300」などの軍事物資支援を要求したが拒否されており、これが粛清の決定的な要因になったとの見方もある。

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