NPT最終文書案:中国大使「歴史の歪曲が日本の目的」
毎日新聞 2015年05月13日 21時26分(最終更新 05月13日 21時42分)
【北京・石原聖】核拡散防止条約(NPT)再検討会議の最終文書案を巡り、日本が提案した世界の指導者に広島・長崎の被爆地訪問を求める文言の削除を中国が求めていたことが12日明らかになった。傅聡・中国軍縮大使は「第二次大戦の被害者であるかのように歴史をゆがめることが日本の目的」と述べ、「歴史の歪曲(わいきょく)」という文脈から日本の提案を批判しており、安倍晋三首相の戦後70年談話を念頭に置いた日本へのけん制といえそうだ。
中国外務省の華春瑩(かしゅんえい)副報道局長は13日、最終文章案について「理性的で実務的で協力的な態度で臨むべきであり、複雑で敏感な問題を入れるべきではないからだ」と削除を要請した理由を説明。「機会があれば中国の指導者が広島と長崎を訪れるのか」と問われると、華副報道局長は南京大虐殺記念館を挙げて「日本の指導者がいつ訪れるのか聞いてみたい」とも反問した。
中国は2009年に習近平国家主席(当時は国家副主席)が訪日した際には日本の国民に平和、友好のメッセージを伝えるため、広島、長崎の訪問を一時検討したとされている。だが昨年7月には重慶市の週刊の地方紙「重慶青年報」が「日本は再び戦争をしたがっている」との表題で、日本地図の広島と長崎の場所に原爆のきのこ雲とみられるイラストを描いた記事を掲載した。
今年は中国にとり「抗日戦争と反ファシズム戦争勝利70周年」であり、9月3日の「抗日戦争勝利記念日」には習指導部初の軍事パレードが北京で行われる。昨秋から2度、日中首脳会談が開かれたが、習主席は歴史問題に繰り返し言及。安倍首相の米議会での演説にも、中国外務省は直接的な評価を避け、植民地支配を謝罪した「村山談話」にあえて触れている。
◇菅官房長官「歴史問題とは関係なく、理解に苦しむ」
一方、菅義偉官房長官は13日の記者会見で、「核兵器のない世界に向けた思いを共有することは、核不拡散の推進に資する」と文言の意義を強調。中国側の「日本が第二次大戦の被害者であるかのように歴史をゆがめている」との指摘に対し「そもそも歴史問題とは関係なく、理解に苦しむ」と強く批判した。【高本耕太】