イカだ。 イカである。 世界を塗り替える時が来たのである。
というわけで今日はスプラトゥーンのご紹介です。
イカに至るまでの悲しいお話
CoD4以降、あのバトルフィールドですらCoD化から逃げられず、ギアーズオブウォーはヘタレてTDMなどというルールをメインに据え、HALOはインフィニティスレイヤーなんてものを作って自ら不評を買いに行きました。
チームデスマッチルールがお遊びとして成立するためには、狭く細長い数本の通路の押し合いが必要でした。それを考えずにチームデスマッチルールでだだっ広いマップを遊ばせたところ、悲しい悲しいかくれんぼと押し込みのゲームが出来上がってしまいました。
嫌が応にも敵と遭遇する。索敵すら必要ない。だからこそあのゲームのチームデスマッチはそこそこ面白かったのです。そこを真似られなかったゲームは、どこまでも悲しい対戦を生み出していきました。
地点を奪い合う。旗を奪い合う。爆弾を設置する。
さて広いマップに、目的地が、奪うべき場所が、守るべき場所が生まれました。そうなると、プレイヤーはどう動かねばならなくなるでしょう?この場所を守るならこの道を押さえたい。この道を抑えるにはこのオブジェクトが重要だ。あの場所を奪うにはその前にあの地点を奪って敵を叩きやすくしなければならない。「マップの攻略」と「その時々の戦術」が求められるようになります。
これはチームデスマッチと全く別の筋肉を必要とします。殺すだけでは勝てません。
だからこそ深みが生まれ、だからこそヒリつくほど面白くなるのですが、それ故に味方との連携や、現状の把握能力が必要とされます。一言で言えばチームデスマッチと比べ、オブジェクティブルール(目標のあるルール)は難しいのです。
オブジェクティブルールには単純化が必要でした。
四角いマップをぐるぐると回るのは難しい。だから一本道にしたほうが楽です。バトルフィールドシリーズの傑作「バッドカンパニー」の「ラッシュ」ルールは「デモリション(爆破)」という旧くからあるルールの素晴らしいアレンジルールでした。両サイドから試合を開始し、2つある箱が破壊されれば事態が進行して仕切り直し。誰でも行くべき場所が分かりやすく、誰もが嬉々として殺し殺されました。
一本道を突き進む爆弾に付き添い、それを巡る戦いを繰り広げるのが「チームフォートレス2」の大人気ルール「ペイロード」です。これも素人目に見ても「どこに行かなければならないのか」「何をやったら相手が嫌がりそうか」が一目でわかる作りでした。互いのサイドからじゃないと最短アクセス出来ない一方通行が「抑えるべきポイント」を強く意識させ、そこを打開する事が状況の変化に繋がると遊んでいるだけで自然にわかるのです。
しかし、新作の「タイタンフォール」ですらオブジェクティブルールをメインに据える事ができませんでした。タイタンフォールを遊ぶプレイヤーたちの多くは未だチームデスマッチから抜け出せず、オブジェクティブルールのために作られたマップを巨大なジャングルジムとして駆け回るだけのゲームを選びました。
今一度、オブジェクティブルールには革命が必要でした。 それをやり遂げたのが、スプラトゥーンであったと言えます。
あ、ここまで前置きです。
世界を「塗り替える」という事
スプラトゥーンの勝負は「塗った面積」で決まります。まずこれにより、チケット制度やスコア制度のような「消化試合」感が無くなり、最後まで緊張感を持って望む事が出来ます。特に地点制圧ルール及び爆破ルールで問題であった「完遂出来なかった時の徒労感」が無いのはモチベーションの維持に大いに貢献していると言えるでしょう。そしてもう一つ。スプラトゥーンのマップの床面積は思ったよりも広くありません。「狭いマップ」で争うから当然なのですが、それによって「競る」ことが簡単になっています。
「塗った面積」ということは、従来の「目標」以外もマップが意味を持ち始めます。なにせ「広間」を押さえていても「通路」が塗られていては最終的な勝利もそうですし、イカ移動によるアクセスの速度も変わります。ですから、プレイヤーは「どの通路を押さえておくとどうなるのか」をじっと通路を見ながら学ぶことになります。
「相手に塗られた場所」を歩くと動きが遅くなり、ダメージを受けます。なので原則として飛び飛びに塗られることはなく、厳密には「裏取り」というのが実は存在しません。従来のシューターの嫌われ者の「サプレッサー使い」の動きがシステム側から殺されているのです。塗るという行為は「塗り面積を増やす」だけでなく、目的とする場所へ移動するためにも行われます。そうするとマップで「何者かがここを塗り始めた」というのが一発で分かりますから、UAVやspotのようなものがなくても誰かがそこにいることがプレイヤーにも伝わるのです。
ジャンプもイカしています。緊急脱出からリスポン直後の戦線復帰まで使えるのでどんでん返しが起きやすいのです。「膠着状態」というのは拮抗しているのではなく「攻めあぐねている側が一方的にやられている状態」でありますから、それが起きないようにシステム側からのサポートがされています。ビーコンによるジャンプ地点追加も使いこなせば、「塗り替え」は難しいことではないでしょう。
「塗る」というシステムは、実によくできています。 だからと言って、スプラトゥーンが全く新しく、また殺しが重要でないかと言われれば違う所があると思います。
縄張り争いの末に、殺す。
スプラトゥーンの偉いところは「一方通行の道がマップ中央まで伸びている」という所です。この手のゲームは一旦押し込まれると巻き返しが難しくなるのですが、少なくともこの「一方通行」があるおかげで攻められすぎないように、また巻き返しが起きやすいように作ってあります。ここら辺は過去のゲームの研究がかなり成されているとみてまず間違いないでしょう。
塗り続けるためには何が重要でしょうか。塗るためにそこに居続けることです。そこに居続けるということは、生き残り続けるということです。生き残るということはどういうことでしょうか。
殺しにくる奴らを殺さねばならないということです。殺せば思う存分塗ることが出来ます。
殺されてしまえばマップ端まで戻され、また待ち時間が発生します。その間にマップの勢力図は文字通り「塗り替えられ」てしまうのです。またこのゲーム、塗れば塗るほどゲージが溜まって必殺技のようなものが使えるので、それを使うためにもやはり死ぬわけには行きません。
そのためには、相手のイカ野郎をゲソ揚げにする必要が有ります。
スプラトゥーンの直接の勝敗は「塗った面積」で決まります。ですがそれを決めるのは「どれだけ人手が足りていたか」であり、それは殺し合いで決まってしまうものです。なのでスプラトゥーンが「殺さなくていいゲームか」と聞かれれば、答えは否です。ナワバリバトルは殺しが全てではありませんが、より「塗り替える」ためには鉄火場でイカを蜂の巣にし、ローラーでイカせんべいにし、チャージャーで的確にイカリングにしていく必要が有ります。
相手のインクの上ではダメージを受け、移動が遅くなり、しかも潜伏=リロードも隠れるのも不可能。しかもこのゲームのリロードは一瞬ではありませんから、生き残り続けるのは簡単ではありません。殺される時は一瞬で殺されてしまうのです。
はっきり言って、上級者同士のガチバトルは墨を墨で洗う仁義なきバトルになるでしょう。
ですが、スプラトゥーンはそこに至るまでの間口の広さが半端ないです。まず誰がやってもそれなりに楽しめるオブジェクティブルールのゲームだなんて、久しぶりではないでしょうか。とりあえず初心者はわかばで撃ち殺すかローラーで轢き殺すかやってりゃいいと思います。
イカは過去に学ぶ
いくらマップがあろうがクソだらけじゃ話になりません。そんなことはコールオブデューティやバトルフィールドが長いシリーズの歴史の中の様々な悲劇で証明しています。システムとルールがよくできてるなら、マップってそんなに数は必要ありません。むしろたった一つのマップをキャラと装備の組み合わせでやり続けるのだってありでしょう。それで一億人のプレイヤーを獲得したゲームだってありますよ。
武器とギア(衣類)のアンロック及びカスタマイズは既存のシューターまんまです。自由に付け替えるのではなく、ある程度かっちり固まってる中から選ぶというのもいいのではないでしょうか。プレイヤーに選択肢を与えすぎると、時に魔物が生まれてしまうことがありますから、与える選択肢をあらかじめ少なくしておくのも開発側のお仕事です。
スプラトゥーンは今までにない全く新しいゲームでも、人殺しをしなくていいゲームというわけではありません。過去の偉大な傑作や迷作たちを研究し、スパッと遊んでスプラっと塗れるように作られた「最新」のゲームです。
この素晴らしい「再発明」を、今食べないのはもったいないでしょう。揚げ物は揚げたてが一番美味しいですし、何より後から来たって「揚げたて」の味は味わえないんですからね!
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