【コラム】「徳を以て怨みに報ゆ」対日外交

論語マニア習主席の誤読と日本問題

【コラム】「徳を以て怨みに報ゆ」対日外交

 中国の習近平国家主席は論語マニアとして知られる。過去に何度も論語を引用したが、今月23日に北京の人民大会堂を訪れた日本の代表団3000人を迎えた際、またも論語の一節を引用した。

 「朋あり遠方より来る、また楽しからずや(有朋自遠方来、不亦楽乎」、「徳は孤ならず、必ず隣有り(徳不孤、必有隣)と述べたのか、「徳を以て怨(うら)みに報ゆ(以徳報怨)」という言葉も使ったという。

 ところで、「徳を以て怨みに報ゆ」は孔子自身の言葉ではない。論語の憲問篇に出てくる言葉だ。ある人が「徳を以て怨みに報いば何如(いかん)」と問うと、孔子は「子曰く、何を以てか徳に報いん」と問い返し、「直(なお)きを以て怨みに報い、徳を以て徳に報ゆ(公平無私の判断で怨みに報い、徳には徳を以てするべきだ)」と反論した。我々が論語を引用する際には、孔子の真意を引用するものだが、習主席の引用は焦点から外れたものだ。習主席は中日戦争後、中国が数千人の日本人戦争孤児の面倒を見たり、日本人の帰国を助けたりした点を挙げ、「徳を以て怨みに報ゆ」という言葉を用いたが、正しい引用とは言い難い。

 とはいえ、孔子は怨みに怨みで報いろとは言わず、「直」で報いろと説いた。朱熹はこの一節について、「怨みがある相手に対し、愛憎や取捨を公平無私であることが直だ」と説いた。私的感情を捨て、公平な気持ちを保つべきとの教えだ。

 孔子の言う「直」は習主席の誤読とは別に、現在の複雑な韓日関係をどう打開していくかを考える上で示唆するところが大きい。20世紀前半の韓日関係史は我々が日本に怨みを持つのに十分なほど悪辣(あくらつ)で残忍で非人間的だった。だからといって、我々が今怨みを怨みで晴らすことはできない。ならば我々はどうすべきか。

 まず、日本を警戒する一方で、日本に悪い感情を抱くことは行き過ぎだ。もちろん今の日本の嫌韓運動や極右勢力の横暴を見て腹が立つのも事実だが、むしろ韓国社会にそういう勢力が現れないことは幸いで、それは一種の「直」と言える。

 第二に、人も国も完全無欠ではない。長所があれば短所もあるのは当然だ。大事なことは、相手の長所を正確にとらえると同時に、自分の短所を直視する勇気を持つことだ。少しでも日本のプラスの貢献を認めれば、集中砲火を浴びる学界の風土の中で学び育った若者が直の精神を持つことなど不可能だ。日本はまだ我々にとって学ぶところが大きい国だ。

 第三に韓国の水準を日本に劣らず、さらには日本に先んじるところまで高めるため、遠くを見据え、固い決意で進むことこそ直だ。そういう面で現在、韓国の政治、経済は日本との善意の競争という重要な枠組みを無視している感がある。今は誰が見ても今は日本と協力し、同時に競争する生産的な関係へと進むべき時だ。

李翰雨(イ・ハンウ)文化部長
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