第13回 「ライブは出勤」と福田花音(アンジュルム)は言った。

【アイドル現場日記#5】2015年5月26日「アンジュルム STARTING LIVE TOUR SPECIAL@日本武道館『大器晩成』」(ファンクラブ特別価格6800円)

 アンジュルム? なにそれ? 聞いたことない----という人も多いでしょうが、昨年12月までのグループ名はスマイレージ (しばらく説明が続くので、知ってる人は飛ばしてください) 。つんく♂がプロデュースするハロー!プロジェクトのユニットで、2009年4月にハロプロエッグのメンバー4人を集めて結成。今からちょうど5年前の2010年5月26日に「夢見る 15歳」でメジャー・デビューを飾り、日本レコード大賞最優秀新人賞受賞。〝日本一スカートの短いアイドルグループ〟がキャッチフレーズだった。

 当初は順風満帆でスタートしたわけですが、翌年2011年には、サブメンバー5人が仮加入、初期メンバー1人が卒業、サブメンバー4人が2期メンバーに昇格、初期メンバーがまた1人卒業して6人体制に......と激動。3年近くその6人で活動したあと、昨年10月にハロプロ研修生から3期メンバー3人が加入して9人体制となり、同時にアンジュルムと改名した。

 スマイレージ時代は、〝心に女子中学生が住んでいる〟と評される作詞家つんくの少女力が炸裂。たとえば、インディーズ・デビュー曲「ぁまのじゃく」は、主人公が好きな同級生に対して「君なんかに興味ない、髪切ったのも自転車変えたのも知らない」(大意)とひたすら強がりを言いつづけるだけの曲だったし、メジャー3枚目の「同じ時給で働く友達の美人ママ」(アイドル歌謡史に残るタイトルだと思います)は、バイト先の店長のことがひそかに気になってたのに、友だちのお母さんがあとからバイトに入ってきたと思ったら、平日昼間のシフト入れて、あたしが学校行ってるあいだに店長と仲良くしてて(邪推)許せない! みたいな内容。よくこんなストーリー考えるなあ......。


スマイレージ 「同じ時給で働く友達の美人ママ」 (MV)

 という具合に、数々の名曲を歌い踊ってきたスマイレージですが、グループとしては、ホールで単独コンサートが開けず、苛酷な日程で全国各地のライブハウスをまわるなど、(ハロプロ比では)艱難辛苦の日々がつづき、なぜかいつも貧乏くじを引かされる〝(ハロプロ内の)苦労人〟的なイメージがつきまとうことに。メンバーの1人が吐いた名言、「スマイレージはいつもこうだ」が定着し、アンジュルムへの改名騒動も、最初のうちはそういう文脈で語られることが多かった(「スマイレージで唯一問題がなかったのはグループ名だったのに、それを変えるなんて!」などなど)。

 その不遇とか恵まれなさ(ハロプロ比)を逆手にとって、改名と同時にイメージを一新したのが、アンジュルム名義の最初のシングル「大器晩成」。同じアップフロントグループに属する中島卓偉の(当時まだ制作中だった)アルバム収録作から選ばれた曲ですが、「腐らずに気長にがんばれとか、しばらく我慢しろとか言われたくない。大器晩成なんて知ったことか、こっちはいますぐ成功したいんだよ!」(大意)という詞の内容は、これまでとぜんぜん違う方向性なのに、まるで最初からスマイレージ/アンジュルムのために書かれたかのようなハマりっぷり。つんく♂プロデュースから初めて離れた曲だったにもかかわらず、ハロヲタにも大歓迎され、一般にも受け入れられて、アンジュルムの代名詞となった(フジテレビ系「めちゃ×2イケてるッ!」のエンディングで流れる曲です)。


アンジュルム『大器晩成』 (Promotion edit(New Ver.))

 というわけで、最高のスタートを切ったアンジュルムですが、今度は、2人しか残っていない初期メンバーのひとり、福田花音が、今年の秋でグループ(およびハロプロ)を卒業すると5月20日に発表し、激震が走った。
 福田花音(愛称は「かにょん」「まろ」)は、2004年にハロプロエッグ(現・ハロプロ研修生)に加入した1期生。エッグ時代のブログで見せた卓抜な文章センス、好きなものにとことんハマる(アイドルとは思えないほどの)オタクっぷり、適度な毒と自虐とぶっちゃけを絶妙にブレンドする圧倒的なトーク力、独自のアイドル哲学(ライブ中もつねに顔をつくり、気を抜かない)などで熱狂的に支持されてきた。年齢とキャリアから、卒業が近いのではないかと予想されていたとはいえ、Berryz工房の活動停止後、いまやハロプロ内でももっとも個性的(というかハロプロ的)なアイドルだっただけに、たいへん残念です。

 ......と、ここまでが長い前置きで、ようやく話は本題に入る。前述した「大器晩成」をタイトルに冠したアンジュルム初の武道館ライブは、スマイレージのメジャー・デビューからちょうど5周年の記念日。
 この1年半の間にハロプロのライブでたぶん10回くらい武道館に来てますが、この日は、ファンクラブ先行予約でアリーナ席が初当選。公演の2週間ほど前に届いたチケットの座席番号を思わず二度見しましたね。マジか! 武道館のアリーナって、当たらないもんだと思ってたよ。すまん......。
 というわけで、開演30分前の午後6時に武道館に到着すると、まず物販コーナーで福田花音ソロTシャツ(税込3000円)を購入、すばやく着替えて入場。
 チケットを見せてアリーナに降りていくときから高まる興奮。しかも、ステージ中央部分は迫り出しになってるので、その最前から3列目という好位置。おまけに前の2列はほぼ女性ばかり(最前はかにょん推しの3人組+家族連れ、すぐ前は、揃いのニットパーカーを着込んだタケちゃん[竹内朱莉]推しの女子高生4人組)なので、身長的にたいへん見晴らしがよく、いやまさか、武道館でこんな良席が当たるとは----と、みずからの日頃の行いに感謝しつつ着席。連番(隣席)は今日も(漁夫の利を得た)香山二三郎氏、59歳です。

 開演20分前ですが、待つ間もなく、ハロプロのホール・コンサート恒例の、後輩ユニットによるオープニングアクト(前座ステージ)が始まる。結成されたばかりの研修生ユニット、つばきファクトリーの「17歳」(南沙織の原曲をアップフロントの先輩、森高千里がカバーしたもののさらにカバー)と、こぶしファクトリーの「念には念」、そして(AKB48選抜メンバーによる「妖怪ウォッチ」ED曲がコケてくれたおかげで)まさかのオリコン・ウィークリー1位を獲得したJuice=Juiceの「Wonderful World」。

 3組が矢継ぎ早に新曲を披露したあと、いよいよアンジュルムのステージが開幕。オープニングの「大器晩成」から、輝く純白の衣装に身を包んだ9人が目の前の迫り出しに出てきて、テンションはいきなりマックスに。「たいきばーせいたいきばーんせいたいきばんせーい」のヲタ大合唱で武道館全体が一気に盛り上がる。

 ちなみにヲタの歌割(客の合唱パート)が多いのがスマイレージ/アンジュルム曲の特徴で、2期メンバーの勝田里奈が、ライブハウスのステージからファンに向かって、「人のこと言えないんですけど、音程が合ってない。 それぞれボイトレとかしてください」と厳しく指導したこともあるほど。

 ......という話はともかく、ツアータイトル曲に続く2曲目は、それと両A面の「乙女の逆襲」。さらに6人時代の「ミステリーナイト! 」、4人時代のメジャーデビュー曲「夢見る15歳」、6人時代ラストの「地球は今日も愛を育む」と5曲連続で新旧のシングルを披露。デビュー当初から追いかけてるファンの脳裏には、5年間のさまざまなドラマが去来したことでしょう。

 つづいて最初のトークタイム。初の武道館ということでマイクを振られた3期メンバーの相川茉穂が感極まって泣き出し、次の佐々木莉佳子(気仙沼のローカルアイドルグループ、SCK GIRLSのセンターとして活躍していた2001年生まれの中学生)も途中から言葉につまって右手をふりまわし、他のメンバーからいっせいに「赤ちゃんみたい」「むっちゃ子ども!」「どんな泣き方?」と突っ込まれ、「あいあいが泣くから!」と隣の相川を指さして泣きながら怒るひと幕も(客席は爆笑)。

 そのあと、卒業を発表した福田花音がひとりでステージに残り、すでにブログでも発表しているとおり、卒業後は作詞家をめざしますと宣言。つづいて、次の曲を紹介するタイミングでステージにほうきが投げ込まれ、ちょっとしたひとり芝居のあと、ほうきにまたがった花音が空を飛ぶ映像がスクリーンに映っている間にメンバーカラーの衣装にチェンジしたメンバーが登場、9人で「魔法使いサリー」を歌って踊る。

 これは、アイドルによる国民的アニメソングカバーコンテスト「愛踊祭〜あいどるまつり〜」でアンバサダーを務めるアンジュルムが、コンテストの課題曲になっている「魔法使いサリー」を、お手本としてカバーしたもの。企画の性質上、思い切ったこともできなかったのか、あんまりインパクトのないアレンジですが、「大器晩成」からの振り幅としてはなかなか。おじさんおばさん誰でも知ってる曲を歌うことで、知名度に広がりが出ればなによりです。

 コンサート中盤のMCでは、「これからスタートしたいこと」というトークテーマに、福田花音が「運動をはじめたい」と回答。「ライブは運動じゃないんですか? いまやってるじゃないですか?」とたずねる2期メンバーの中西香菜に、
「ライブは運動じゃないですね。ライブは......出勤?」と言い放つ花音。
 武道館を埋めつくすファンはこれに大ウケ。プロ意識の高さとぶっちゃけキャラが一体となって初めて生まれた名言でしょう。

 ライブ終盤は、福田花音の定番の煽り(客に「ちょいカワ!」と叫ばせる)が入る名曲「私、ちょいとカワイイ裏番長」から、「好きよ、純情反抗期。」「有頂天LOVE」「同じ時給で働く友達の美人ママ」とシングルの代表曲をつるべ打ち。
 最後は、7/22発売のトリプルA面シングルから、「臥薪嘗胆」「七転び八起き」を披露したあと、また「大器晩成」で締める完璧な構成。9人のアンジュルムを堪能しました。

 スマイレージ時代の昨年7月15日にも武道館に立ってますが、そのときは「チケットが売れてない」とつんく♂にさんざんネジを巻かれ、なんとか完売したものの、応援ゲストとして、後輩グループのJuice=Juiceのほかに、Berryz工房、℃-ute、モーニング娘。'14の先輩グループまで出演。ハロコンかひなフェスか......みたいなステージだったので、今回ようやく名実ともに武道館単独公演を実現し、人気と実力を証明した感じ。

 客席には中年男性も多いんですが、アリーナ含め、10代〜20代の女性客がけっこう目立ち、まだまだアンジュルムは盛り上がりそうな気配。今年11月29日には、ふたたび武道館で、福田花音卒業ライブを行うことも発表。その日は日曜なので、10年来のかにょん推しおっさんヲタが集結してチケット争奪戦になりそうな気が。今から心配です。


アンジュルム福田花音、11・29武道館公演で卒業 アンジュルム STARTING LIVE TOUR SPECIAL@日本武道館「大器晩成」(オリコン芸能ニュース)


福田花音「アンジュルムに人生すべてを捧げる」(JIJIPRESS)

 終演後は、同行の香山二三郎氏(59歳)と、あとから合流した東大ハロプロ同好会OG編集者某嬢(24歳)と3人で軽く飲もうと、九段下駅前のさくら水産に向かってぶらぶら歩いてたら、知り合いのアンジュヲタから、このあとここで100人集まって宴会なんですと聞かされて茫然。
 結局、飯田橋までてくてく歩き、カラオケボックスに入って、スマイレージを中心にハロプロ曲を2時間歌いまくることに。その翌日はモーニング娘。'15の武道館公演、翌々日はディファ有明で鞘師里保バースデーイベント......といろいろ忙しいハロヲタの5月は過ぎてゆく。