【ワシントン=矢沢俊樹】米商務省が29日発表した2015年1~3月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)の改定値は年率換算で前期比0.7%減となった。速報値は同0.2%増だったが、寒波や輸入の上振れなどが響きマイナス成長に沈んだ。米連邦準備理事会(FRB)のイエレン議長は1~3月期の米景気調整は一時的として、年内利上げの意欲を重ねて示したが、ドル高や雇用・物価を含め年後半の回復シナリオ通り進むか懐疑的な見方もある。
GDP改定値を受けて、29日午前の米株式相場は続落して始まった。もっともイエレンFRB議長らが緩やかな成長拡大を裏付ける発言を重ねていることから、市場には先々の景気、雇用に対する安心感も根強い。当面は6月5日発表の5月分雇用統計やFRB高官らの発言、そして来月16~17日のFRBの米連邦公開市場委員会(FOMC)会合で利上げに向けた流れをつかもうとの空気が広がっている。
改定値は事前に市場が予測した水準とほぼ同じで、おおむね織り込みずみではある。下方修正の理由について、米商務省は最新データを反映した結果、「住宅投資が上向いたものの、輸入が上方修正され、製造業や卸売りの在庫投資も減少した」と説明。政府支出のマイナス幅も広がるなどしてよくない材料を相殺しきれなかった。
3月の米貿易統計では西海岸の港湾ストライキが輸出の足かせになる中で輸入が膨らみ、結果として貿易赤字が拡大。海外での生産とみなされる部分がさらに膨らんだため、米GDPにはマイナスに働いた。個人消費の伸びも鈍いままだ。
FOMCは景気減速は「一時的」として、緩やかな拡大が続くとの姿勢を崩していない。急激な原油安が落ち着きエネルギー関連の企業投資も復調の兆しを見せ、企業の景況感や消費者心理も一部で晴れ間が広がりつつあるからだ。
市場の大きな関心もFOMCの読み通りに、米景気がソフトパッチ(一時的な軟化局面)を抜けだして、4~6月期以降に2%台の巡航速度(潜在成長率)を取り戻しているか。さらにFRBが内需主導の持続的成長に自信を深め、早ければ9月の利上げに現実に動けるかという点に集約されつつある。
足元をみる限り4月以降の米景気には強めの指標も出始めている。同月の耐久財受注は非国防の資本財(航空機除く)が2カ月連続でプラスになった。製造業の生産が上向くとの見方も出ている。
ドル高の輸出と企業収益への影響も懸念されるが、米国内の生産拡大に伴って輸出が復調するとの見方は多い。米サンフランシスコ連邦銀行のウィリアムズ総裁は28日、4月以降の米景気が2%程度の成長軌道に戻り、失業率が年内に5%を下回るとの見解を示した。
イエレン氏も22日の講演で家計支出や企業投資減速などが1~3月期の軟調な原因だとしつつも「一時的要因が複合した」「統計のノイズ(雑音)」と説明。インフレ率と雇用の伸びも自身の予想を上回る可能性があるとして「年内のある時点」の利上げを言明した。
一方で米アトランタ連銀が独自の経済計測モデルにもとづき随時改定している米GDPは4~6月に1%を割り込んだままだ。7月末にまず速報値が発表される4~6月期のGDPがふるわなければ、FRBとしては次に7~9月期の景気の浮揚力を見極める必要に迫られる可能性がある。
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