前回投稿した雑談記事の内容はこっちの方が適切だったんじゃないだろうか。
事件の概要
齢にして15、名(ハンドルネーム)を「ノエル」。それが今回の事件の中心となる人物である。
本件が大きく報じられるようになったのは5月9日、少年が善光寺の境内に「ドローン」を(恐らくは)過失から墜落させた事件からである。少年は、小型無人機(ドローン)を飛ばして善光寺で催されていた行事を撮影した映像を、ネットでリアルタイム配信していたそうだ。(ちなみに、ドローンを誤って落下させる瞬間の映像は現在も動画サイトにて閲覧が可能である。)
その後も少年はドローンを度々各所で飛ばそうとし、そのたびに警察が出動、騒ぎになっていた。その結果というべきか、少年は威力業務妨害容疑で警視庁に逮捕された。ドローン絡みで注意を受けた回数を3度目にしての逮捕である。少年はそれ以前にも、過激な行動を取る様子をネット配信しており、いわゆる「ニコ生の闇」的なキャラクターで人気を集めていたそうだ。
少年は親からのお小遣いを得ておらず、今回の事件で使用した「ドローン」「交通費」「情報端末」のほとんどはネット配信で得た「ファン」から受けた施しであるという実態が明らかになり、問題視されている。
歪んだ「好奇心」が産む「イジメ」の構造
私がこの子の名前を知ったのは確か、コメントでとある方が「こういう少年がいて、正直見ていてメシウマだと感じてしまう」と話題にしてくださったのが最初だったかと思います。その時に私自身、紹介していただいた動画は視聴しましたが、「この手の人は何人も見たことがあるなぁ…」と感じたまででした。コメント返信の際に、私が知る過去のキチ◯イ事例を数件紹介したことを何となく覚えています。
ちょうどその頃からか、ノエルという少年の話題は不定期にまとめサイトなどで取り上げられるようになり、その記事が目についた時にちょくちょく情報は仕入れてこそいたものの、ほぼ右から左に受け流す形だったので情報としてはあまり記憶に残りもせず。グッズか何かだったか、具体的な形態はともかくとして、少年が「知名度とネームブランドを獲得して、配信業で生きていこうとしている」ことだけは理解していました。その生き方について何か否定的な意思を持っていたというわけでもなく、ただ「こういう時代になったのだなぁ…」と、初老の男性が居酒屋で大して深みもなく思い耽るのと同じように、そう感慨深く思うのみでした。
さる理由から、あまり感情移入もなく、かと言って批判的な意見を持つでもなく、「名前だけは知っている」少年が起こした今回の一連の騒動。それをあくまで「外野」的な立場からしか見ることのできなかった私にとっても、少年の行動と、少年に対する周囲(いわゆる「囲い」)の焚き付けは非常に興味深いものでありました。
・ 体にロールケーキを塗りたくる少年に住み着いた悪魔
少年は過去に公衆トイレでブリーフ一丁の姿になり、体にロールケーキを塗りたくりながら奇声を発するという内容の配信を行っていました。この時の配信は現在も閲覧が可能なのですが、これがネタとしてみても「異常」と言わざるをえないくらい狂気に満ちたものでした。動画のコメント欄には「皆さんでこの少年にとり憑いた悪魔を祓いにいきましょう」などと、こちらもまたネタか本気か分からない内容になっていて、全体がとにかく狂っていました。
また、その時の配信時に投稿されているコメントは彼の狂気に満ちた行動を笑うものばかりで、これぞまさに「メシウマ」の具現であるなと私は素直にそう思った。
少年は体にロールケーキを塗りたくる直前、動画のリスナーに対して「お前たちは俺にどこまでさせれば気が済むんだ」「お前らのせいで俺の精神はどんどんおかしくなっていく」と語っていたのも印象深いものだった。少年は自分自身が踊らされていることに半自覚的ではあったようだ。ただ、自覚することと踊りをやめられることが直接的にイコールで結びつかないがために、結局のところ今回のような顛末になってしまったわけだけども。
・ 「高みの見物」的イジメの行動
イジメっ子といじめられっ子の関係性には幾つかのパターンが有る。その内の一つに「高みの見物」型のイジメというものが存在している。私は中学生の頃に、その「高みの見物」型イジメを加害者側(正確には中立)、被害者側の両面で経験している。
「高みの見物」型のイジメっ子は、イジメる対象がリスクの高い行為を試みている様を眺めることに悦楽を感じる性質がある。そして、その行為をさせるためであればイジメっ子本人が自発的に行動する。
私(と他1,2名)のさせられた例で言うと、ドロで汚したボールを投げるから避けろ(当たるまでやらされる)とか逆立ちしたまま水を飲めとか、そういうものがあった。イジメっ子は、私がそれをするためならば自腹を切ってでも必要なものを用意した。自分が苦しまず、嫌な思いをせず、他人が苦しんだり、嫌な思いをするのを見るためであれば努力も労力も惜しまない。それが「高みの見物」型の陰湿な部分でありました。
そうして用意されたもので、私は惨めな思いをさせられ、それを見ながらイジメっ子達は高みでケラケラと笑っている。私はそんな彼らに対して精一杯取り繕った笑顔を見せながらも、頭の中では全員を磔にして八つ裂きにしていたのを覚えています。
逆に私がいじめられる側の子たちを傍観している時は、それはもう気楽なものでした。私は積極的にイジメに加担したわけではありませんでしたが、それでも他人が「トレーティングカードを高所からばら撒かされ」たり、「その辺の草を食べさせられ」たりしている姿を見ることに悪い気持ちはしませんでした。
私は一度そちら側を経験していることもあり、「高みの見物」をすることそのものには悦楽を感じなかったけれども、ただただ気楽であったことだけは覚えている。あまり言いたくはないけれども、人間の本質的な部分なのか「面白い(メシウマ)」だと感じるところがあったのも間違いない。
・ ネット配信というイジメの構造
私が過去に経験した「高みの見物」型のイジメの構造と、今回の事件やそれに類する事例のようなネット配信者と視聴者の構造はどこか似通った部分があるように思えてならない。視聴者は、配信者がリスクを背負って何かするためならばたとえ十数万円のドローンであっても提供する。そういう、労力を惜しまない姿勢の視聴者達の存在が、私には過去のイジメっ子達とほとんど同じもののように映った。
少年はいい大人達の陰湿なイジメにあっているに過ぎない。これを「人気」というにはあまりにも歪んでいる。「大規模な現代型イジメ」。それが今回の事件の実態なのだ。
――――――だと思っていたのだけれど、配信コメントを見る限り本当に彼に心酔していた者も少なからず存在している。彼を高所から見下ろすために、惜しげも無く資金やアイテムを提供していた人間がいたことは確かだけれど、中にはそんな彼を応援する者もいたようなのだ。
私自身も、ある動画を見て彼に少し同情してしまったところがあり、正直な話、擁護派に立っているところがある。動画配信で食っていくにしても、そうでないにしても彼には自ら進んで踊ることのできる阿呆になってほしいと心からそう思う。
アフリカTVの話
AfreecaTVなるサイトは、そんなノエル氏の一件を通じて初めて知ったものである。まずはこのアフリカTVがどのようなものであるかを解説するためにも、ノエル氏の逮捕について議論が行われていたとあるスレッドの書き込みの幾つかを引用しよう。
509
名無しさん@1周年[sage] 投稿日:2015/05/22 08:33:30 ID:mIV0z6830.n
支援者から自宅へプレゼントが届いてたね
ノエルが配信で欲しいと言ったものや
Amazonのギフト券など
その開封動画も配信してたわ
698
名無しさん@1周年[sage] 投稿日:2015/05/22 09:06:47 ID:Xa+hpWFn0.n(4)
記事にある換金形式から配信サイトが特定できる。
ちなみに韓国初のこの配信サイト知らない人の為に書いておくと
視聴者が配信サイトのポイントを課金して購入
↓
お気に入りの配信者に貢ぐ(視聴者側にも色々特典あり)
↓
配信者はもらったポイントをアマゾンギフト券、ituneカードなどに交換可能。
という流れな。
これを利用して稼げないはずの少年が
機材やらドローンやらを買ったのではという話。
どうやらアフリカTVというのは、配信者に比較的簡単に「貢ぐ」ことが出来るサイトであるらしい。投げ銭として「星風船」と呼ばれるシステムが存在し、これを視聴者が購入し、配信者に送ることで「金銭的な取引」を気軽な流れで実現しているようだ。
・ 百聞は一件に如かず。ということで、少しだけアフリカTVをチェックしてきた。
さっそく、若々しい少年が動画を配信しているのを発見。これが今の小学生… 時代は変わったなぁ…と、これまたおっさんの繰り言を漏らしていたところ、少年の配信にコメントが(画像参照)。少年が本名で配信をしていることについて注意をする方がいる。当然のことではあるかもしれないが、アフリカTVそのものは別段、悪質なものではないように思える。このサイトを活用して数千万円を儲けている者もいるらしく、宝くじよりはチャンスを掴みやすいギャンブルとして動画稼業に精を出してみるのも悪くないかもなと、そんなことを考えてしまった。
ニコ生然り、アフリカTV然り、その他多くのネットサービス然り。悪い面は「使い方が悪い」人がいることで初めて生じる側面のであって、良い使い方だって幾らでもあるのだ。配信者だけでなく、視聴者の行いが悪ければそれだけで「悪用」となる。自己責任であったことは絶対だから言い訳は効かないが、ノエル氏はある意味被害者でもあるのだ。スマートフォンの普及によって急激に一般化が広がったSNSの輪。配信する身にせよ、視聴する身にせよ、被害に合わないよう最新の注意が求められる。
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