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【芸能・社会】

今井雅之さん 死去 闘病も復帰かなわず

2015年5月29日 紙面から

役者復帰の願いがかなわず、54歳で死去した今井雅之さん。舞台について熱く語っていた=2010年6月、名古屋市で

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 特攻隊を題材にした舞台などで活躍した俳優の今井雅之(いまい・まさゆき)さんが28日午前3時5分、大腸がんのため東京都内の病院で死去した。54歳。兵庫県出身。通夜・葬儀は故人の遺志により近親者のみの密葬で行われる。後日、お別れの会を開く予定。今井さんは4月に大腸がんであることを告白し、舞台降板を発表。それでも「がんと闘う」と語り、復帰に強い意欲を示していたが願いはかなわなかった。

 関係者によると、今井さんはここ数日危篤状態で、28日に容体が急変し帰らぬ人となった。最期は、妻や姉らがみとったという。

 今井さんは、4月21日に所属事務所を通じて大腸がんで治療していることを公表、5月1日が初日だった主演舞台「THE WINDS OF GOD」の降板を発表した。

 4月30日には降板会見を開いた。昨年8月に体の異変を感じ、昨年11月中旬にステージ4の末期の大腸がんと診断され、入院先で抗がん剤治療を受けていることなどを涙ながらに明かした。「余命3日」「半年」とも診断されたといい、20キロ近く痩せたという今井さんは、元気だったころの面影はなく芸能界では大きな衝撃が走った。

 会見では「食べられないし、寝られない。苦しい」と過酷な闘病を告白。それでも秋に映画製作が控えていることを明かし、「自分の運命は受け入れますが、秋までは、なんとか自分の体を持たせたい」と搾り出すように語っていた。

 今月5日、「THE WINDS−」の千秋楽で、やつれた姿でファンの前に登場。「3分も立ってられない」と着席して語りかけ、「自分はこの舞台に病人ではなく、役者で立ちたかった」と本音をもらし、「もっともっと体を良くして役者人生を充実できるよう、がんと闘うつもりです」と最後まで役者人生を貫く覚悟を見せていた。

 今井さんが木曜レギュラーを務め、療養のため出演を休んでいたTOKYO MXの情報番組「バラいろダンディ」(月−金曜午後9時)で、28日から復帰する予定(27日時点で見送り)もあったが、無念にも実現できなかった。7日の出演が最後となった。

◆忘れないで

 今井さんの訃報は28日午前、所属事務所がファクスで発表した。

 ファクスでは「皆さまの心の中に宿る故人との思い出に、心の中で祈りをささげていただきながら、故人の生前を忘れないでいていただけますようお願い申し上げます」と記している。

◆自宅周辺ひっそり

 今井さんの訃報を受け、東京都内の閑静な住宅街にある、今井さんの自宅マンション前には昼すぎから続々と報道陣が集まった。同マンションは今井さんが東京で仕事をする時の住居として借りていたもよう。そのため、弔問客などはなく、周辺はひっそりと静まり返っていた。

◆酒井「強く戦い抜いた姿に拍手を」

 今井さんの訃報を受け、女優で歌手の酒井法子(44)は「最後まで役者として、男として強く戦い抜いた姿に心から拍手を贈らせてください。どうぞ、安らかに」とのコメントを所属事務所を通じて発表した。酒井は、自身の芸能界復帰作となった2012年12月の舞台「碧空の狂詩曲〜お市の方外伝〜」で今井さんと夫婦役で共演。以後、親交を温めていた。

 しかし翌13年12月、今井さんが脚本、演出を手掛けた舞台「手をつないでかえろうよ」の出演をめぐり2人が対立。「酒井さんが突然降板した」とする今井さんに対し、酒井は「出演は承諾していない」と主張。ドタキャン騒動に発展したが、その後、今井さんが謝罪するかたちで終息した。

 酒井は追悼コメントの中で「今井さんとご一緒出来た時を忘れません。唯一、私を褒めてくださる大事な人だったのに…」と悼んだ。

◆舞台「THE WINDS OF GOD」 代役・重松「ラスト沖縄 魂込める」

 今井さんが原作・脚本を務めた主演舞台「THE WINDS OF GOD」の共演者らも訃報にがっくりと肩を落とした。

 お笑いコンビ、スピードワゴンの井戸田潤(42)は同舞台に2013年と今年出演。終戦間際の特攻基地にタイムスリップしたお笑いコンビを今井さんとともに演じた。井戸田は「この舞台を成功させることが今井さんの思いでした。東京、関西、北海道と、ここまでやってきましたが、あと一つ、沖縄公演を残すのみです。今井さんの思いを胸に、最後まで舞台を務めます。『(公演を)最後まで頼むぞ』と託されたときの声が忘れられません」とコメント。

 今井さんの代役を務める重松隆志(41)は自身のブログで「ラスト沖縄公演。LET’S GO FOR IT! やるっきゃない。魂込めて共に舞台に立ちます。今井雅之さん。ありがとう。ありがとう。ありがとう」と感謝の気持ちをつづった。

 「THE WINDS−」に出演経験があるお笑い芸人の陣内智則(41)は「今井雅之さん! あなたの押忍!というパワフルな声が忘れられないです。いかつい顔からのやんちゃな笑顔が忘れられないです」と天国の今井さんに語りかけるようなコメント。さらに「太く短い人生もアニキらしくすてきだと思います。ゆっくりと休んでくださいね」と続けた。

 ▽タレントのアグネス・チャン(59) 「辛すぎます。言葉が見つかりません。私の方が年上ですよ。待っててくれないと。私を長年応援してくれた今井さん…。本当に寂しい。死んでしまうなんて嫌です」(ブログより)

 ▽俳優・タレント川平慈英(52) 「駆け出しのころから、一緒に芝居をつくってきた家族。実の兄を亡くしたような気持ちです」

 ▽女優・田中美奈子(47) 「ドラマで夫婦役で共演しました。温泉旅館の若女将と若旦那。現場ではいつもムードメーカーとしてスタッフ、キャストの皆さんを盛り上げ、人の見ていないところでは本当に努力の方だったのだと頭が下がります。持ち前の負けじ魂で元気に復活してくださると信じておりましたので大変残念です」

◆CSで追悼 出演作放送

 今井さんを追悼し、CS放送のスカパー!は28日、今井さんの関連番組を放送する、と発表した。

 ファミリー劇場HDでドラマ「あしたの、喜多善男〜世界一不運な男の、奇跡の11日間〜」(31日正午)を放送。

 また、映画・チャンネルNECOで主演映画「右向け左! 自衛隊へ行こう!」(7月1日午後5時20分)などを放送する。

 ◆今井雅之(いまい・まさゆき) 1961(昭和36)年4月21日、兵庫県出身。高校卒業後、80年に自衛官の父の勧めで自衛隊に入隊したが俳優を志し81年に除隊。86年、法政大学文学部英文学科卒業。同年、奈良橋陽子さん演出「MONKEY」で演劇デビュー。96年、映画「静かな生活」で日本アカデミー賞優秀助演男優賞などを受賞。舞台「THE WINDS OF GOD」は88年の初演から数十回にわたり再演を重ねた。91年、ロサンゼルスで英語上演しオフ・ブロードウェーにも進出し注目を集める。ほかにNHK連続テレビ小説「ええにょぼ」(93年)や映画「八つ墓村」(96年)、「ストロベリーナイト」(13年)などに出演。

 

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