富田倫生のページにようこそ。
略歴といくつかの文書を、置きます。
めったなことでは、更新しない覚悟です。
略歴
やってきた仕事
近代デジタルライブラリーの検索:
青空文庫で、書籍のテキスト化に取り組みました。
同様の作業に図書館が取り組み始める中で、「全文テキスト化」の特集を組んだ雑誌に、原稿を書きました。(「現代の図書館 第49巻第2号」日本図書館協会、2011年6月25日。「冊子からテキストへ――文字コードがもたらすものと強いるもの」)
その際、近代デジタルライブラリーの目次の電子化で、検索に穴が生じていることに気づきました。原稿で触れたこの問題について、Twitterでも連続投稿しました。
「近デジのテキスト化について」:
pomz99さんによるまとめページにリンクしています。
2012年5月、「近代デジタルライブラリー」が「国立国会図書館デジタル化資料」に統合されたタイミングで、先に同サービスに生じているとした検索の穴の大半が、ふさがれていることを知りました。この問題をみつけ、解決の道筋を付けてくださった同館の皆さんに感謝しつつ、今回も、Twitterに投降したものを、まとめました。
「大半がふさがれた「近代デジタルライブラリーの検索の穴」」
青空文庫の歩み:
1997年7月に生まれた青空文庫の著作権切れファイルは、14年後の2011年6月8日に、1万を超えました。
この節目に、青空文庫の歩みについてTwitterに連続投稿し、与えられた講演の場で話しました。
「青空文庫創世記」:
Twitterへの投稿は、二パターン、まとめていただきました。ここでは、ether2001さんによる「青空文庫創世記」にリンクします。
「青空文庫 800人のボランティアと一万冊の電子書籍」:
2011年7月9日、国際電子出版EXPO2011のボイジャーブースで、同じテーマについて話しました。(ボイジャー提供のこの映像には、図版、字幕が加えてあります。演出の大塚浩平さん、編集の蔡金宏さん、ありがとう。こちらは、六つに分割されていますが、ひとまとめで、編集なしのものも、こちらで確認できます。)
青空文庫の作業の中で:
文書を電子化する手法は、いくつもあります。テキスト化にしぼっても、作業方針はさまざまに想定できます。
個々の作業者に判断の多くをゆだねた開設当初から始まって、青空文庫はしだいに、マニュアルを整備し、新しく出合った問題への対処方針をまとめ、「統一的な作業ルールにもとづいたテキストアーカイブ」へと進んでいきました。
その過程で、方針をめぐる論議の場として機能してきた青空文庫メーリングリストに主に向けて、私は文書をまとめてきました。
これまで、ほとんど表には出してこなかったそれらに、ここからリンクします。
「「ケ」のように見える文字の入力について」:
青空文庫は、5-86(ヶ)と5-17(ケ)の使い分けについて、作業指針を立てています。
「ケ」のような形をした問題の文字は、紙の上では大きくも小さくも、あるいはどちらとも言い難いサイズでもつくられてきました。今も、大小どちらかであるべきといった、正書法の類は存在しません。
ただ、それをテキストに移す際には、利用する文字コードが、この字についてどう定めているかを参考にせざるを得ません。
そしてもし、「文字コードのルールに従って作業する」という立場を選ぶのであれば、その決めごとを理解し、それにそうしかないというのが、作業方針の姿勢です。
この文書は、この方針を支持する立場からまとめました。
メーリングリストの仲間向けという気持ちから、ゆるく書いていますが、ここに組み込んだ「JIS漢字字典」と「増補改訂JIS漢字字典」のページ画像からは、規格が問題の字についてどう定めているか、一目で読みとれると思います。
この作業方針には、異論も示されてきました。
論議が長引き、「ケヶ問題」といった言葉まで生まれる中で、青空文庫が使っているJIS X 0208という文字コードの原案委員会委員長をつとめられた芝野耕司先生を招いて、この問題に深く関わる「電子翻刻における「読み」と「見たまま」」と題した講演会を開きました。
お話の内容は、ビデオと音声で公開しています。
私は、この講演の問題の字に関する部分を、次のように聞きました。
・青空文庫の作業方針は、規格の定めにそっている。
・ただし規格の定めに反して、片仮名の「ケ」を使う用例も、世間には広く見受けられるように思う。
・であれば、「規格遵守」の規範的な立場にこだわるだけで良いか。テキスト作成において、事実、「ケ」が広く使われているのなら、青空文庫にもそれを受け入れる姿勢が求められるのではないか。
・そして規格もまた、現実に広く行われている用法にそって規定をあらため直す必要があるのではないか。
・そのように考え、統計データを取った。
・結果は、事前の予想に反して、規格の定め通りの用例が、あきらかに優位だった。
・であるなら、青空文庫は規格にそった現在の作業方針をあらためる必要はない。
・規格もまた、片仮名の「ケ」に、そのような用例を認める変更を加える必要はない。
「改行行頭の括弧の組み版処理について」:
書籍を見比べると、あらたまった行の冒頭にくる括弧は、いろいろなかたちで字下げされたり、されなかったりしています。
作業マニュアルはこれらを、一つの方針で処理するように求めています。
この文書は、その方針を支持する立場からまとめました。
「「底本のできるだけ忠実な再現」が目指すもの」:
作業マニュアルには、「青空文庫は原則として、「底本のできるだけ忠実な再現」を目標に置き、「勝手な編集はしない。」」と記載されています。
どのような大きさに作ってあろうとも、「こ」「か」「が」と読み分ける文字は、5-86で入力する。さまざまに組まれている改行行頭の括弧も、一つの方針で処理するという現在の方針に対して異論が示される際、しばしば論拠とされてきたのが、この「忠実な再現」に反するという点でした。
ただ、マニュアルは、底本の組み版にそわない処理を、さまざまに求めてもいます。この文書には、「再現」の目指すところに対する私なりの理解をまとめました。
著作権保護期間延長問題の中間整理について:
著作権保護期間の延長問題を審議してきた、文化庁長官の諮問機関(文化審議会、著作権分科会、過去の著作物等の保護と利用に関する小委員会)は、2008年9月18日、延長には「十分な合意が得られた状況ではない」とする「中間整理」をまとめました。
今後も、「保護と利用のバランスについて、調和の取れた結論が得られるよう、検討を続けることが適当」とも述べる整理のメッセージは、論議の継続にあるのか、延長の見送りにあるのか。
対照的な二つの報道から、中間整理の読み方を探ったメモです。
2008年9月20日、このページに掲載。
「著作権、著作隣接権の保護期間延長に反対」:
社団法人日本音楽著作権協会 JASRACは、著作権の保護期間を50年から70年に延長するよう求めています。
著作権法の改正を検討している文化庁では、2004年8月、関連団体に、制度のどこをどう変えて欲しいか、意見を求めました。音楽関係を中心に、21の団体から、保護期間を70年に延長せよとの要望が寄せられました。(「関係団体からの著作権法改正要望について(概要)」の「5.保護期間 (106)〜(108)」を参照。)
文化庁は「更に幅広く国民」の声を聞くとして、同年10月、著作権法の改正点に関する、意見募集を行いました。保護期間の延長について触れた、もしくは触れたと見られる意見72のうち、延長を求めている諸団体に、その資格があるかの検討材料を提出するコメントが1、保護期間の50年、70年併用を支持する意見が1あった他はすべて、明確に反対、もしくは慎重であるべきとして、延長を支持しない意見でした。
これは、この意見募集に際して、「保護期間の70年延長に反対する」立場から提出した、コメントです。
2004年10月20日、「著作権法改正要望事項について【5.関連】」の表題で、文化庁長官官房著作権課法規係宛、電子メール送信。
「永久機関の夢を見る青空文庫」:
試みを提案した「設立呼びかけ人」がそのまま活動の世話役となって、青空文庫ははじまりました。入力と校正を担おうという申し入れが数多く寄せられる中で、世話役は、活動の円滑な維持にとって「必要最小限の組織化」を想定し、資金を確保して、事務局体制を用意しました。
専従者1名と数人の世話役からなるこの事務局を「協力の手のつなぎ目」として、多くの作品が電子化され、青空文庫はまた、電子翻刻に関するいくつかの課題にも取り組んでいきました。けれどこの間、作業規模の拡大は、「必要最小限の組織」の手にはあまりがちの負担を、かけ続けました。
成り行きに任せれば、事務局に集中しがちな作業をどうこなすべきなのか? 青空文庫には、「事務局の解体」によって問題を解消できるのではないかという、新しいアイディアが芽生えはじめています。
初出:「アート・リサーチ」Vol1.2、立命館大学アート・リサーチセンター、2002年3月15日発行
「青空文庫と外字」:
青空文庫では、電子化の過程で突き当たったJIS X 0208で表せない外字の情報をまとめ、JIS漢字コードの拡張計画を担っていたチームに文字選定の参考資料として提出しました。この作業の実態に関する報告です。
初出:「人文学と情報処理」第26号「特集 文字コード論から文字論へ」、勉誠出版、2000年4月15日発行
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最終更新日:2012年5月21日