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 中国軍は積極的に海洋進出を図る。おととい発表した中国国防白書のメッセージである。

 白書は2年に1度発表している。だが、それは対外的な軍の情報公開にはなっていない。

 どんな装備をどれだけ持っているのか、予算をどう使っているのかは不明で、核兵器配備の現状も公表していない。

 異様な膨張を続けながら実態を明かさない中国軍が周辺に不安を与えているのは明らかだ。一定水準以上の情報公開がなくては、近隣との最低限の信頼関係が築けない。

 責任ある大国というなら、中国は説明責任を果たし、国防情報の開示を進めるべきだ。

 こうした不透明さと対照的なのは、海洋への軍事展開に重点を置く戦略を打ち出した明確さだ。白書は「陸軍を重んじ海軍を軽んじる伝統的な考え方を打ち破る」と明記している。

 もともと沿岸の守りを主体とした海軍は80年代以降、能力を充実させてきた。その流れを強め、習近平(シーチンピン)政権は海軍重視の姿勢を内外に示している。

 さらに白書は、アジア重視政策をとる米国と、安保政策の転換を進めようとする日本への警戒感をあらわにしている。

 心配されるのは南シナ海での緊張の高まりだ。中国はまるで自国の内海のように南シナ海を見る考えが白書の前提にある。自国権益の防御という名目で攻撃的になるおそれがある。

 スプラトリー(南沙)諸島の岩礁での埋め立てや滑走路建設は、近隣各国の領有権主張を無視した一方的なもので、決して許されない。日米や豪州など地域の関係国は、国際法違反であるとの主張をあらゆる国際舞台で強めなくてはなるまい。

 米国防総省は、中国が工事をしている岩礁の12カイリ内の空と海への米軍機や艦船の派遣がありうるとの姿勢を示している。自衛隊による南シナ海の警戒監視の可能性も取りざたされる。

 中国の動きに、どんな対応が効果的かは熟考を要する。米軍の牽制(けんせい)行動が長く続いて中国軍が過剰反応すれば、情勢は一気に緊張しかねない。

 欧州連合(EU)の首脳会議常任議長(大統領に相当)は先日、日本との会合を前に、中国の南シナ海での行動について「地域の問題解決を困難にするのは確実だ」と懸念を示した。

 こうした国際世論をさらに強めつつ、日米はアジアの関係国と連携を深め、中国に責任ある行動をとるよう促す道筋を探るべきだろう。非難の応酬や力の対抗の果てに紛争に陥ることは、誰の利益にもならない。