鹿児島県・口永良部島(くちのえらぶじま)の新岳(しんだけ)がきのう、爆発的な噴火を起こした。

 噴煙が高さ9千メートル以上まであがり、空気を巻き込んだ火山灰が斜面を流れ下る火砕流は海まで達した。相当な規模である。

 やけどした人が出たが、島にいた約140人がみな島外に避難できて不幸中の幸いだった。

 今後、噴火が拡大するのか、終息に向かうのか。避難解除までどれぐらいかかるのか――。

 残念ながら、現在の火山学で精度よく予測することはできない。予断や希望的観測を排し、火山活動の動向を見守りたい。

 人的被害が最小限で済んだのは、新岳が昨年8月に34年ぶりに噴火してから、観測が強化され、地元の人たちも十分に警戒していたからだ。

 直前の噴火警戒レベルこそ5段階のうち「レベル3」(入山規制)だったが、気象台は噴石の飛散や海に達する火砕流発生の可能性があると注意を呼びかけていた。

 住民も、昨夏の噴火時に約半数が島外に一時避難するなど、火山島に住むリスクを熟知しており、注意が浸透していた。

 総務省消防庁によると、噴火時に逃げ込むシェルターのない活火山は全国に多いが、新岳には17カ所設けてあった。

 さらに特筆したいのは、火砕流の到達範囲が危険区域を予測するハザードマップと、ほぼ合致したことである。

 もちろん、噴火の規模や火口の位置が事前の想定と近かったからではあるが、物心両面での準備が大事だとわかる。

 昨秋の御嶽山(おんたけさん)噴火、今月に入っての箱根大涌谷の火山性地震多発など、各地で火山活動が活発になっている。日本が世界有数の火山国であると思い起こすには十分だろう。

 折しも政府はきのう、活火山法の改正法案を閣議決定した。

 死者・行方不明63人を出した御嶽山の噴火災害を受けて、国が常時監視する火山について、周辺の自治体や観光事業者らに避難計画づくりを義務づけることなどが柱だ。

 現在47ある常時監視火山の周辺延べ130市町村で、避難計画があるのは20しかないという。関係者がよく話し合って、ハザードマップや警戒避難態勢を早くつくってもらいたい。

 将来にわたって重要なのは人材の育成である。火山は個性豊かで個別の研究も欠かせない。火山研究者が国内に110もある活火山より少ない状況は、着実に改善しなければならない。

 政府も市民も、火山にもっと関心を払うべきだろう。